司会:改憲を目指しているのは、どういう人たちですか。 社会科教員:決して一般の人たちではありません。「日本会議」という右翼団体で、安倍首相ら、多くの国会議員もこの団体に所属しています。 日本会議のホームページを見てみると、「日本会議とは、美しい日本の再建と誇りある国づくりのために、」「政策提言」と「国民運動を推進する民間団体」であり、「全国に草の根ネットワークをもつ国民運動団体」。これまで「元号法制化の実現」、「奉祝運動」、「教育の正常化や歴史教科書の編纂事業」、「終戦50年の戦没者追悼行事」、「自衛隊PKO活動への支援」、「新憲法の提唱」などの「国民運動を全国において展開」してきた。「国民運動に呼応して、国会においては超党派による『日本会議国会議員懇談会』が設立してきた」とあります。 「日本会議」は、1930年に設立された宗教法人「成長の家」を源流とし、「成長の家」が政治運動から手を引いたのちは、その分派が「国民会議」の前身団体の「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」を創設し、現在「美しい日本の再建と誇りある国づくり」のための運動推進団体として存在しています。(菅野完『日本会議の研究』(2016年扶桑社)などを参照) 日本会議のいう「新憲法への提唱」は、(1)現憲法を容認しないことを前提に (2)天皇元首化 (3)家族条項の追加 (4)国防軍創設〜集団的自衛権の行使を容認し、自衛隊法の改正など有事法制を整備して、軍備強化で世界平和に貢献する (5)「緊急事態条項の創設」を主張しています。 国民会議の「新憲法への提唱」は、まさに自民党の憲法草案とほぼ同じだということに、驚きを隠せません。なぜそんなことが起こるのでしょうか。「国民会議」は、「美しい日本の再建と誇りある国づくり」のために、ここ40年間、地方議会の決議や国会請願署名等の草の根国民運動をバックに、(自民党)政権に積極的に「政策提言」しているからです。そもそも安倍首相は「国民会議」の大きな後押しがあったため政権の座につくことができたとも言われていますし、「国民会議」が安倍氏を首相に担ぎ出したともいわれています。現に第3次安倍内閣の19閣僚のうち16人も「日本会議国会議員懇談会」に所属しています。 つまり安倍政権は特殊な極右団体に牛耳られ、国民の中ではほとんど議論にさえなっていない改憲を強行しようとしている異質な政権なのです。 2016年9月1日 発行に当たって 1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない 2. 憲法は古いから変えなければならないか 3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い? 4. 押しつけだから無効だとすればどうなる? 5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの? 6. 憲法があれば足りるか 7. 自民党改憲草案の4つのポイント 8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない 9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ 10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか 11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは 12.「新しい人権」条文化の危険 13. 家族は助け合わなければならないか 14.「天皇の元首化」はどう問題か? 15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要? 16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか 17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか 18.「緊急事態条項」は必要か 19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか 20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か (補)改憲を目指す人たち |
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