司会:これまで「護憲」と称されてきた人たちからも「左折の改憲」というものが出てきています。つまり、政権の暴走をとめるためにも、9条第2項を変え国防に特化した「自衛隊」を憲法で明記して政府を規制すべきという考えです。 憲法学者:まず、これまであらゆる侵略戦争が「自衛のため」と称して行われてきたことをおさえる必要があります。 従来の政府の見解は「軍隊は認められていないが、自衛権は認められており、自衛のための必要最小限の実力組織が自衛隊だから合憲」という見解です。でもその自衛隊で、米ソ冷戦時代は対ソ対決の最前線にあり、現在は対中挑発の最前線、そしてPKOやイラク、アフガンで米軍の侵略戦争に加担しました。戦争法成立でさらに危険な存在になろうとしています。 社会科教員:私が教員になった80年代初めは、学校教育の現場では、「自衛隊は軍隊であり違憲である」という考えがまだ根強くありました。自衛隊を認めるという発想には、日本の軍隊が侵略と植民地支配でアジア諸国に耐え難い被害を与え、今も恐怖を与えているという反省と自覚がないと思います。9条はアジア諸国への非武装・非戦の誓いです。9条を変え自衛隊を合憲化するということはこの誓いを破棄するに等しい。私は今も自衛隊は違憲と考えています。「災害救助のために必要」というのなら、一切の武器を廃棄しレスキュー隊に衣替えすべきなのです。 話はそれますが、最近自衛隊勧誘が学校現場に入り込み、「体験学習」などもやられています。私も残念ながら自衛隊に入隊した教え子もいます。でも戦争法ができて意味が違ってきました。実際に海外で戦闘に巻き込まれて相手を殺したり、本人が戦死したりする可能性が出てきたのです。 私が生まれたのは戦争が終わってわずか10数年後でしたから戦争で手足を失った人や精神を病んだ人などが近所にいました。そのころ教職員は、戦争に協力した反省から「教え子を再び戦場に送るな、若者よ銃をとるな」をスローガンに二度と戦争を許さないという教育を決意をしたのです。 二児の母:「子どもを戦争に行かせたくない」と言ったら「平和ボケ」とか「自己チュー」みたいに言う人がいます。でも「平和ボケ」って、71年間戦争がないことに慣れてきてずっとこのままでいたいっていうこと。私は「「平和ボケ」で結構、「戦争中毒」よりよっぽどましだと言いたいです。 手引き16(工事中) 2016年9月1日 発行に当たって 1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない 2. 憲法は古いから変えなければならないか 3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い? 4. 押しつけだから無効だとすればどうなる? 5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの? 6. 憲法があれば足りるか 7. 自民党改憲草案の4つのポイント 8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない 9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ 10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか 11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは 12.「新しい人権」条文化の危険 13. 家族は助け合わなければならないか 14.「天皇の元首化」はどう問題か? 15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要? 16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか 17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか 18.「緊急事態条項」は必要か 19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか 20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か (補)改憲を目指す人たち |
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