司会:そもそも私たちの暮らしは憲法とどのように関わっていますか。 憲法学者:憲法は日々の生活から遠い話、憲法どころでないという話はよく聞きますが、私たちの暮らしは憲法なしには考えられません。 まず日本が軍隊をもったり戦争をしかけたり戦争に協力したりできない。これは9条があるからです。国民が戦争に協力させられることもない。少なからぬ国に徴兵制がありますが日本にはありません。 二児の母:私が憲法を守りたいと思うのは、息子や子どもたちが戦争にかり出されるなんて絶対にイヤだからです。息子は野球に夢中ですが、戦中は高校野球も中断され多くの球児が戦死しました。繰り返してほしくない。 憲法学者:息子さんの話がでましたが、子どもが学齢期になると市町村から入学のための案内が届きます。小中学校の教科書は無償です。当たり前のようですが、憲法で教育の義務が書かれているからなんですね。 会社員:アニメの作成や本の出版など自由にできます。僕もアニメの同人誌つくってます。 社会科教員:ところが安倍政権は、政府の政策に批判的なメディアに報道規制をかけてきている。憲法上大問題です。 会社員:過激な猥褻・暴力・差別など人権を侵害するような内容は規制されて当然だと思うけど、政治についての報道規制はあり得ないと思う。僕の後輩で戦争法反対のデモを申請してやった子がいます。いろいろ面倒だったみたいたけど、デモやっただけで逮捕されたりすることはない。 社会科教員:そうですね。昔は大逆罪などがありました。大日本帝国憲法の下では、表現の自由など基本的人権は存在せず、「天皇が与えた」臣民の権利だけが恩恵的に認められていたにすぎません。今政府を批判したり天皇を批判したりしても出版できないということはありません。労働者は組合を結成し会社と対等に交渉する権利が認められています。 二児の母:働けず生活が困難になれば、十分とは言えませんが生活保護を受給できます。結婚は二人の気持ちがあれば自由に結婚できます。 憲法学者:万人に裁判を受ける権利があり、それなしに刑罰を課せられることはありません。 今話にでたことは空気のように「あるのが当たり前」のように思えるかも知れませんが、憲法で守られた結果なのです。 手引き5 2016年9月1日 発行に当たって 1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない 2. 憲法は古いから変えなければならないか 3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い? 4. 押しつけだから無効だとすればどうなる? 5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの? 6. 憲法があれば足りるか 7. 自民党改憲草案の4つのポイント 8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない 9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ 10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか 11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは 12.「新しい人権」条文化の危険 13. 家族は助け合わなければならないか 14.「天皇の元首化」はどう問題か? 15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要? 16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか 17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか 18.「緊急事態条項」は必要か 19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか 20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か (補)改憲を目指す人たち |
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