司会:外国軍の占領中に作られた憲法は無効であるというのが、世界的常識ではありませんか。 憲法学者:そのような常識はありません。なるほどフランス1946年憲法(現在は1958年憲法)は外国軍の占領中には憲法を改正してはいけない旨を規定しています(第94条)。それは、フランスがナチス・ドイツに占領され、その傀儡政権であるビシー政権が作ったすべての法律は無効であるという意味でした。ドイツでは米英仏の占領下でボン基本法が制定されましたが(1949年)、現在でもボン基本法は憲法の役割を果たしています。 司会:仮に占領下で作られた憲法が無効であるとすればどうなりますか。 憲法学者:憲法発効1947年5月3日以来現在に至るまで憲法に基づいて作られた全法律は無効となるでしょう。もちろん安倍内閣を含め歴代内閣も国会も存在根拠を無くします。 会社員:それは愉快だ。安倍政権は無効だ。 憲法学者:しかしそうなると今も生きている憲法は大日本帝国憲法ということなります。でもそれはあながち外れてもいないんです。「日本会議」など改憲を望む人たちが言っているのは新しい時代にふさわしい憲法を!というのではありません。「戦後民主主義が悪かったから戦前の日本に戻せ」「大日本帝国憲法が理想」というのです。 社会科教員:占領下に作られた憲法を否定するということは、それをもたらした日本の敗戦、ポツダム宣言の受諾、降伏文書の調印、サンフランシスコ講和条約も含め、すべてを否定することになります。つまり、「押しつけ憲法」と批判することは、日本が行った侵略戦争と敗戦の事実全体、戦中・戦後の歴史全体を否定して開き直ることを意味することになります。絶対に認められません。 手引き4 2016年9月1日 発行に当たって 1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない 2. 憲法は古いから変えなければならないか 3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い? 4. 押しつけだから無効だとすればどうなる? 5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの? 6. 憲法があれば足りるか 7. 自民党改憲草案の4つのポイント 8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない 9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ 10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか 11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは 12.「新しい人権」条文化の危険 13. 家族は助け合わなければならないか 14.「天皇の元首化」はどう問題か? 15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要? 16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか 17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか 18.「緊急事態条項」は必要か 19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか 20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か (補)改憲を目指す人たち |
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