リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
2.憲法は古いから変えなければならないか

司会:自民党は改憲理由に「71年前に作られた憲法は古い」を挙げます。

会社員:どうしようもない理由ですね。古くてもいいものはいい

憲法学者:全くそのとおりです。ただ「古いから変えたい」というのは、イメージ的に受け入れられ易いので、基本的な反論をしておきましょう。
 たしかに諸外国でも改憲が行われていますが、憲法の根本原則を覆すような改憲は行われていません。たとえばドイツでは59回、米国では6回改憲が行われていますが、いずれも現行憲法を補強する修正など、憲法の原則を変える修正は一度も行われていません。つまり古い骨格は残している。それどころか、フランス現行憲法は200年以上も前の「フランス人権宣言」を人権規定として維持しています。まさに「古くてもいいものはいい」「古いからこそいい」です。しかし自民党がやろうとしているのは、「国が憲法に従うべき」という性格を根本的に転換してしまうものです。

会社員:僕も改憲案を読みましたが、前文では、日本がやった戦争への反省がすっぽり抜けて、日本人は経済成長してエライ、日本人は日本を愛し伝統を受け継いで行かなければならない、国民は国家を守る責務があるなどと書いてあります。日本独善主義のこんな憲法絶対に認められないです。いまのような日本を愛せるはずがない。愛してほしかったら愛せるような政治をしろといいたい。

憲法学者:自民党改憲案では「民主国家」である日本を「天皇を元首として頂く」天皇制国家にし、国民主権や基本的人権の尊重を単なる名目上のものとし、戦争放棄を全く否定する内容になっています。

二児の母:学校で習った「憲法3原則」の否定ですよね。

高校教員:こんな改憲はいわば「合法的」クーデタともいえるもので、憲法の根本精神に反する改憲です。正確には「改憲」ではなく新憲法制定です。いやそもそも憲法とは呼べないものだ。

二児の母:「古くてもいいものはいい」に戻ると、私は、71年間改憲されなかったのは、憲法が先進的だったからだと思います。「国民の不断の努力によって」(憲法第12条)守られてきたんですよ。

社会科教員:そのとおりです。憲法の諸規定を骨抜きにしようとした歴代保守政府に抗して、国民が平和的・民主的条項を守りそれを実現させるよう闘ってきたんです。

  手引き2

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち