司会:「護憲」とは、象徴天皇制も含めて憲法の全条項を守るという意味ですか。というのも「護憲」というと守旧派・保守派のように思われ、「改憲」の方が進歩的と捉えられがちです。 憲法学者:私は、憲法の「平和的民主的諸条項」を守ると主張しています。日本国憲法は独特の成立過程から、近代憲法としていくつもの矛盾をかかえています。■国民主権を謳いながら、封建制の遺物である象徴天皇制が入っています。■私有財産を認めていますが、「公共の福祉」(基本的人権の尊重)に反してはならないとされています。つまり人権を侵害するような私的資本は違憲なのです。■9条で武力と戦争を放棄していますが、日米安保下で再武装が進められ自衛隊が作られました。そのため内閣法制局は苦し紛れに自衛隊合憲の憲法解釈をしてきましたが、これは憲法解釈と憲法との矛盾です。私は、象徴天皇制や、資本の暴走に道を開く「私有財産」の無制限な承認、解釈改憲としての自衛隊容認などは支持できません。 ですから日本国憲法の近代憲法としての先進的な条項、すなわち国民主権、基本的人権の尊重、9条と戦争放棄にかかわる諸条項を支持し、それを徹底して守り従うよう要求したいと思います。 社会科教員:改憲が反動であることは4ですでに言いました。「護憲」=保守ではないかという点ですが、5、6や8で述べたように、先進的な憲法にまだ日本社会が追いついておらず、逆に権利が剥奪されていく過程が進んでいます。グローバルな資本主義が進み、世界で底辺への競争、飢餓と貧困への競争が起こっていて、日本社会も飲み込まれていっているのです。 二児の母:私は憲法前文「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」という言葉が好きです。改憲草案はその言葉を完全に削除しています。凶暴なグローバル資本主義の弱肉強食の世界を賛美したいのでしょうか。 会社員:日本国憲法がある今でも、権利が次々と切り縮められていっている状況なのに、権利を制限する改憲が通ってしまったら、僕たちの未来はない。改憲は改革ではなく戦前の日本に逆戻りです。憲法を守らせて、権利を保障させることこそが前進だと思います。 手引き20(工事中) 2016年9月1日 発行に当たって 1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない 2. 憲法は古いから変えなければならないか 3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い? 4. 押しつけだから無効だとすればどうなる? 5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの? 6. 憲法があれば足りるか 7. 自民党改憲草案の4つのポイント 8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない 9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ 10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか 11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは 12.「新しい人権」条文化の危険 13. 家族は助け合わなければならないか 14.「天皇の元首化」はどう問題か? 15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要? 16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか 17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか 18.「緊急事態条項」は必要か 19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか 20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か (補)改憲を目指す人たち |
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