[リーフレット] 憲法って、とっても大事!
Q4 権利と義務とはワンセット?
A4 基本的人権は、義務とは関係なく人が生まれながらに持っている権利です

 「権利を行使するなら、まず義務を果たせ」ということがよく言われます。また、日本国憲法は権利ばかりで義務が少ないと非難をする声もあります。

 しかし人権とは、人として生まれてきた瞬間から認められる権利のことです。これを行使するためになんらかの義務が必要だというのならたいへんなことになります。生まれたばかりの赤ん坊は泣く以外に何もできませんから、人権がないことになってしまいます。この「侵すことのできない永久の権利」が天賦人権説といわれるものです。

 憲法第97条にはこう書かれています。
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」

日本国憲法で定められた基本的人権を分類してみると次の5種類があります。
1)包括的基本権 2)自由権 3)社会権 4)受益権 5)参政権
包括的基本権というのは、Q2で示した憲法13条の幸福追求権に加えて14条の「法の下の平等」もこれに分類されます。
自由権は、「国家からの自由」つまり国家による個人への干渉を排除することができる権利で、人身の自由、精神的自由、経済的自由の3つに分類されます。
社会権は「国家による自由」という性格を持っています。個人の自由と幸福を追求するために、国家に何かをさせる権利です。これには、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」である生存権、教育を受ける権利、労働基本権などが含まれます。
そして裁判を受ける権利などの受益権、選挙権と請願権からなる参政権があります。
これらすべてが97条にあるように、人類の過去幾多の試練を経て形成されてきたのです。

自民党草案では
 自民党草案では、この97条がまるまる説明も一切なく削除されています。基本的人権は人々の努力の成果であり、過去幾多の試練に耐え、未来永劫与えられる永久の権利という考えが抹消されているのです。
 自民党草案のQ&Aでは、「人権規定も我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要だと考えます。現行憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました」とあります。
 天賦人権説は、人は生まれながらにして人権を持っているのだという考えで、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言など、植民地支配や君主制に反対して人権を獲得してきた歴史の中で生まれました。これは米国やフランスにとどまらず、全世界の人々に影響を与えました。
 天賦人権説を改める必要があると述べたその具体例が11条について述べられています。
 現行憲法11条では、「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」とありますが、自民党草案では下線部が削除されてしまい、単に「…侵すことのできない永久の権利である」となってしまっています。


はじめに
Q1 憲法と法律とはどう違うか?
Q2 日本国憲法の根本にあるものは?
Q3 「公共の福祉に反しない」とは何に反しないこと?
Q4 権利と義務とはワンセット?
Q5 人権が認められるのは「国民」だけ?
Q6 国民主権と象徴天皇制は矛盾では?
Q7 憲法第9条が放棄したのは?
Q8 日本国憲法は押しつけ?
日本の自由民権運動と世界的な人権思想の流れの中で生み出された日本国憲法
日本国憲法と自民党改憲草案の比較

[参考]
自民党日本国憲法改正草案 Q&A(pdf)
大日本国憲法・日本国憲法・自民党憲法改正草案比較表(pdf)
自民党憲法草案の批判のために(リブ・イン・ピース☆9+25)