リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
2.憲法は古いから変えなければならないか(手引き)

古くてもいいものはいい
 「フランス人権宣言」(Declaration des Droits de l'Homme et du Citoyen de 1789:1789年の人権と市民権の宣言)は、1789年7月14日のバスチーユ牢獄襲撃からわずか6週間後の8月26日に憲法制定国民議会によって採択されたものである。

第1条(自由・権利の平等)
人間は、権利において自由かつ平等なものとして生まれ、生存する。社会的区別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない。

第2条(政治的結合の目的と権利の種類)
すべての政治的結合の目的は、時効によって消滅することのない人間の自然的諸権利の保全にある。これらの諸権利とは、自由、所有、安全、圧制への抵抗である。

第3条(国民主権)
すべての主権の根源は、本質的に国民にある。いかなる団体も、いかなる個人も、国民から明白に由来しない権威を行使することはできない。
(以下17条まで略)

 この宣言で述べられた諸原理は、現行のフランス第五共和政憲法(1958年採択)の前文においても立憲的価値をもっていると確認されている。

 フランス人権宣言は、1776年のバージニア権利章典、アメリカ独立宣言に直接の影響を受けており、それらはまた、17世紀のイギリス革命の過程で1689年に議会が制定した権利章典に由来している。この権利章典は、現在のイギリス憲法を構成する最も重要な文書の一つである。さらに、1215年のマグナ・カルタ(1225年改訂版)も、イギリス憲法に含まれている。

「国が憲法に従うべき」という憲法の性格
 マグナ・カルタは、王の権限を制限するために作られた法であり、これが、マグナカルタが近代憲法の端緒を切り開いたと言われるゆえんである。
 封建制度との闘いを通じ、イギリス革命、アメリカ独立戦争、フランス革命で生まれ世界に広まっていった近代憲法は、すべて人権を保障するために国家を縛るという性格をもっている。「立憲主義」や「法の支配」という言葉で言い表されているこの性格のない憲法は、近代憲法ではありえない。

諸外国での憲法改正でも基本原則は変わっていない
 2001年の参議院憲法調査会の海外視察での「ドイツ連邦共和国、スペイン及び英国の憲法事情につき実情調査」について自民党の派遣団団長野沢太三議員はドイツ基本法の「改正には技術的な事項が多く、基本的な内容、すなわち人間の尊厳の不可侵及び基本的人権の保障という本質は制定時と変わっていません」と報告している。また社民党の福島瑞穂議員の「何回改正をしているのか、何十回改正をしているのかということが重要ではなく、基本的なことは何も改正をしていない、技術的なことであるということが強調された」との報告もある。
第153回国会 参議院憲法調査会 第2号

  本文2

2016年12月22日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち