リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
10.国民は国のやることに反対してはいけないのか

憲法学者:「公共の福祉」から「公益と公の秩序」に転換する危険について、「国策」=公益と住民の意見が対立し反対運動が起こっている場合など、現行憲法で当然のものとして認められている「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」も認められないとなっています。

社会科教員:これは大変な内容ですね。結局、基地建設や原発推進や公共事業などの国策が「公益」とされてしまいます。戦争が「お国のため」ということで強制的に協力させられます。例えば「基地建設に反対する会」などの結社、その趣旨のビラ、本の出版なども認められなくなります。
 沖縄県・高江米軍ヘリパッド建設のため全国から機動隊が導入されて住民が排除されていますが、あの弾圧が公益なんでしょうか。
 国策に反対する、協力を拒否する権利を国民はもっているはずです。国策に反対するのは非国民なのでしょうか。

憲法学者:公益論でもっと恐ろしいことは、戦前の治安維持法と同様の弾圧法が予定されていることです。自民党案の第21条には「公益および公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることみとめられない」とあります。これは、実際に「公益」「公の秩序」が害されなくても、それを「目的とした活動」や「結社」を作れば罰するというものです。この論理は、治安維持法が、「国体を変革し又は私有財産を否認することを目的とする結社」を組織すること又はこれに加入すること、これらについて協議することを犯罪としたのとまったく同じです。つまり、実際に国体を変革せずとも、私有財産を否認する行為を行わなくても、協議するだけでも犯罪になるのです。改憲案がQ&Aで言い訳がましく、「反国家的行動の取り締り目的ではない」と言っていところに、ことの本質があります。現に、今準備されているテロ等準備罪(共謀罪法)こそ、まさしく新版治安維持法にほかなりません。

二児の母:私も以前は政治に無関心でした。しかし3.11の東日本大震災と原発事故から変わりました。国は被災者を救ってくれない、切り捨てるものだということを知ったのです。でも「ひどいめに遭ったら国とは何かがわかる」というのでは遅すぎます。命を奪われてしまいます。国は人権を踏みにじるものです。自民党憲法草案で、そのことをみんなに気づいてほしいと思います。

  手引き10(工事中)

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち