リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは

司会:国や資本と個人の生き方は対立する、国や資本に役立つ人間と役立たない人間の話がありましたが、ここで改めて「憲法は国家権力を縛る規範」ということについてお聞きしたいと思います。

社会科教員:日本は議会制民主主義で、国民が選挙で議員を選び、内閣を構成して総理大臣を選出します。だから議員は国民を代表していると形式的にはなっていますが、選挙には莫大な資金と組織が必要なので、実際にはお金を持った大資本や巨大宗教団体に応援された党と人物や議員二世らが議員になっているというのが現状です。

会社員:たとえば僕が選挙に出たいと思ってもそう簡単ではない。

憲法学者:労働者や若者が自分達の代表を議会に送り込むのは、政府や資本に対抗する労働組合などを組織するかそのバックアップ受けない限りほぼ不可能といえます。それでも大量に立候補することはできません。だから、被選挙権はあって無きに等しいのです。
社会科教員:したがって、国家の利害=実は大資本・政府与党・官僚等の利害と労働者や若者との利害が対立したり、国=政府と住民の利害を代表した地方自治体とは、むしろ対立する方が多いのです。

二児の母:たしかに。住民は自然や田畑を守りたいと思っても、国土交通省が山を拓いて高速道路を造りたいというような場合。国民の教育や医療にもっと予算をかけて欲しいと思っても、国は軍備を増強したいと思っている場合。地方自治体が米軍基地はいらないと考えているのに、政府が押しつけてくる場合。

憲法学者:これは仮定の話ではなく現に起こっていることです。憲法はこのような対立について、国民の基本的人権を第一と考え、国家権力がそれを侵して暴走することを抑止する歯止めの役割を担う原理をもっている。
 ですから、憲法を守る義務も「天皇、閣僚、議員・・・」(第99条)として国民は入っていません。また、憲法は「大企業」や「独立法人」など国に準じるような権力を持ったものも遵守の対象になるということはもちろんのことです。付け加えて言えば、もともと、憲法に定められた「公共の福祉(public welfare)」という概念は、国家や大資本の横暴を抑えるという意味で、ワイマール憲法によってはじめて創案されたものなのです。
 私たちは国=政府に対して自信を持って「日本国憲法を守れ」と言えるのです。

  手引き11(工事中)

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち