リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
8.人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない

司会:自民党改憲案は「天賦人権説」を否定していると言われています。

憲法学者:憲法は12条で「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利」とし13条で「個人として尊重」され、あらゆる人が「生命、自由及び幸福追求」の権利をもつと規定されています。
 ここには人間が生きていく価値が示されています。「天賦人権説」とは難しいことではありません。人が生まれながら、つまり人が生まれたからには、その人の生命を奪うことは許されない、自由に生きていい、幸せになる権利がある、という極めて単純な真理です。生命、自由、幸福追求は一体のものです。社会の役に立っているかとか、どこの国、地方、家の出身とか、そういうことで命の重みが違うということはない、みんな幸せになることを我慢しなくていいというのがこの意味なのです。(幸福追求権の憲法学的解釈については[11]を参照のこと)

社会科教員:この原理は日本国憲法だけでなく、「人類の多年にわたる努力の成果」(憲法第97条)、つまり17〜20世紀にかけて世界中で闘いとられた、人類の歩みの中に位置づけられる歴史的権利なのです。

会社員:でも実際人は生まれながらに平等じゃありません。「貧困連鎖」というように、生まれによってその人の人生が変わってくる。僕はたまたま正社員だけど、非正規で年収150万円で健康保険も年金も入ってない奴とか、有利子の奨学金の残高が500万円もあって必死で返している。結婚して子どもをつくるなんて夢のまた夢。贅沢どころか「普通の生活」ができなくなっているんです。「一億総活躍」なんてウソじゃないですか。

二児の母:生きる権利というとき真っ先に浮かぶのが、病気になったらすぐに病院に行けるかということです。病気になっても我慢したり、お金の関係で治療を途中で止めてしまう人が最近増えています。風邪でちょっと検査して薬をもらうだけで何千円かかるので、私でも病院行くの我慢しようかなと思います。でも取り返しが付かないことになるかもしれない。
会社員:それはおかしい。だれもが生きる権利をもっている、安心して暮らしたい、幸せになる権利をもっている、もしそうなっていないならそれはその人のせいではなく、国と社会のほうがおかしい

憲法学者:今の憲法には、おかしい政治や社会は変えていかなければならないと思えるようなすぐれた条文がちりばめられています。

  手引き8(工事中)

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち