司会:たしかに憲法は私たちの日常と深く関わっています。 憲法学者:そうです。でも憲法で保障されているというだけで、これで十分というわけではありません。平和に生存する権利、教育を受ける権利、思想信条の自由、表現の自由、労働する権利、生存権などが、本当に全国民に保障されていると言えるでしょうか。 会社員:僕たちには働く権利がないじゃないかといいたいです。働く権利がないと、住む権利、生活する権利も結婚する権利も奪われているに等しいんです。 二児の母:この前、テレビで母娘でネットカフェに1年以上住んでいるという話があって衝撃でした。私には小学6年の息子と高校2年の娘がいますが、大学の入学金と学費がメチャメチャ高く、大学に行こうと思っても簡単にはいけません。国立でも初年度納付金が約80万円、私立では約140万円。息子は来年中学入学ですが、制服代・体操服代、学用品代で10万円はかかります。近頃はサッカーや野球など習い事をすることがあたりまえですが、母子家庭で子どもにあきらめさせている家庭もあります。子どもが熱を出したときの医療費、おばあちゃんの介護費とか負担は大変です。 社会科教員:話は変わりますが、テレビや新聞はスポンサーを配慮して政府批判や天皇批判をおさえる傾向があります。デモに行けば、違憲の公安条例でしばしば規制を弾圧を受けます。拘置所での取り調べて事実上の拷問によるウソの「自白」の強要などが日常的に行われているのです。つまり憲法では原理的な権利は保障されているけれど、これらの原理や最低限度は自動的には実現しません。 二児の母:私も高校の時先生から、国民の世論や運動によって初めて、憲法に規定された権利が実現してきたと習いました。たとえば、男女平等にしても、私が就職したころまでは男女の賃金格差や就職差別が公然と認められていました。もちろん今無くなったわけではありませんが。義務教育の教科書無償化も60年代に実現されました。憲法は権利を実現させる大きな拠り所となってきたけれど、国民が自覚しないと奪われてしまいます。 社会科教員:だから日本国憲法は古くなったどころか、憲法の条項に基づいて今も実現すべき課題がたくさんあると思います。だからこそ、権利の根本を定めている憲法を守って徹底するよう求めなければなりません。 手引き6 2016年9月1日 発行に当たって 1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない 2. 憲法は古いから変えなければならないか 3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い? 4. 押しつけだから無効だとすればどうなる? 5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの? 6. 憲法があれば足りるか 7. 自民党改憲草案の4つのポイント 8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない 9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ 10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか 11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは 12.「新しい人権」条文化の危険 13. 家族は助け合わなければならないか 14.「天皇の元首化」はどう問題か? 15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要? 16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか 17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか 18.「緊急事態条項」は必要か 19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか 20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か (補)改憲を目指す人たち |
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