リーフレット [憲法座談会]みんなで考える自民党改憲草案の危険
1.自民党憲法改正草案」は憲法ではない

司会:2012年に「自民党憲法改正草案」というとんでもないものが出ました。安倍政権はこれをベースに改憲議論を進めていこうとしています。まず現行憲法とどう違うのかを伺いたいと思います。

憲法学者:違いも何も、憲法のとらえ方が根本的に違います。一言で言って自民党案は憲法ではありません。憲法とは国家権力を持った者が好き勝手なことをしないように作られる最高法規=「国家権力を縛る規範」です。これは、歴史が形成した揺るがすことのできない近代国家の原則です。改憲案はこの原則に背き、国民に遵守義務を負わせていますが、世界中どこを捜しても、国民を縛る憲法などありません

二児の母:元大阪市長の橋下さんや安倍首相は「選挙で選ばれたら何をやってもいい」みたいなことを言ってますよね。
憲法学者:独裁者の常套句です。選挙で圧倒的多数で選ばれようと、どれだけ人気があろうと憲法には従わなければならない。国家権力を縛る法規がなくなったら権力が暴走してしまいます

社会科教員:それだけではありません。国会に与党側参考人として出席して「集団的自衛権は違憲」と証言した小林節氏は『憲法改正の真実』の中で、自民党憲法会議に出席した時「憲法は国を縛る規範」といったところ、ある自民党議員に「私はそういう憲法観をとりません」と反論され驚愕したというのです。子どもが「僕はそんなこと聞いてないぞ」と駄々をこねているならいざ知らず、国政を担う議員たちが憲法のイロハを知らずに憲法草案を作ったというのが信じがたいことなのです。

司会:自民党改憲案ってどういう人がつくっているのですか。

社会科教員:自民党憲法改正推進本部起草委員会の事務局長が礒崎陽輔氏です。この人は内閣総理大臣補佐官でもありましたが、国会答弁で「法的安定性は関係ない」と言って大問題になった人です。この発言は「時の政権が憲法や法律を勝ってに解釈してもいい」という意味で、立憲主義を否定するものです。また、委員長の中谷元氏は防衛大臣当時、「憲法を法律に従わせる」と発言して大問題になりました。いずれも発言を撤回しましたが、そういう人たちがこの憲法草案の起草者のトップにいるのです。

憲法学者:国家──天皇・政府・議会・裁判所などすべての国家機関が守るべき法規が憲法です(第99条)。逸脱することは許されません。

  手引き1

2016年9月1日
リブ・イン・ピース☆9+25


発行に当たって
1. 「自民党憲法改正草案」は憲法ではない
2. 憲法は古いから変えなければならないか
3. 「押しつけ憲法」でなぜ悪い?
4. 押しつけだから無効だとすればどうなる?
5. 憲法は私たちの生活とどうかかわっているの?
6. 憲法があれば足りるか
7. 自民党改憲草案の4つのポイント
8. 人権の根幹──天賦人権説を覆すことはできない
9. 「公共の福祉」から「公益と公の秩序」へ
10. 国民は国のやることに反対してはいけないのか
11.「憲法は国家権力を縛る規範」とは
12.「新しい人権」条文化の危険
13. 家族は助け合わなければならないか
14.「天皇の元首化」はどう問題か?
15. 攻められたら防衛しなければならないので国防軍は必要?
16. 憲法9条を変え「自衛隊」を規定すべきか
17. 沖縄米軍基地は日本を守るためにあるのか
18.「緊急事態条項」は必要か
19. 戒厳令になるとどんなことが起こるか
20.「護憲」運動は保守か、改憲は「改革」か
(補)改憲を目指す人たち