ニカラグアが中国との国交回復 (上)に記した多国間協力だけでなく、中国と革命的進歩的反米諸国との直接の外交的結びつきも世界的規模で強まっています。その象徴が、12月のニカラグアと中国の国交回復です。当然台湾との断交を伴っています。1990年にFSLNが大統領選で敗北・下野し、新自由主義政権ができた直後に、中国と断交し台湾を国家承認する反動政策がとられたのですが、再び中国との国交回復へと至りました。中国はこの国交回復と軌を一にして、ニカラグアへのコロナワクチンの供与や低所得者層向け住宅建設プロジェクトへの援助を開始しています。 ニカラグアと中国の国交回復=台湾との断交は、経済的理由からではなく、政治的理由からでした。というのは、ニカラグアの貿易相手としては、後述するような世界の趨勢とはかけ離れて、台湾の方が中国よりも比重が高いのです。その上台湾はニカラグアへの主要投資相手で、それにより約10万人の直接雇用者を生み出しています。このように経済的結びつきは台湾とのほうが強いのですが、11月に行われたニカラグアの大統領選挙を「公平で民主的に行われていない」と一方的に米ババイデン政権が難癖をつけ、理不尽にもニカラグアへの経済制裁を強めてきたのです。このことで、ニカラグアのオルテガ政権の堪忍袋の緒が切れて、中国との国交回復に踏み切ったのです。 これと同じことは世界中で相次いでいます。実は中国と断交し台湾を不当にも国家承認している国が全世界には2016年時点で22カ国ありました。その内12カ国が中南米カリブ海地域に集中していました。ところが、次々に中国との国交正常化へと雪崩を打っています。この流れは、実は台湾の政治指導者に蔡英文氏が就任した2016年から加速しているのです。今回のニカラグアで8カ国に上り、ラ米カリブでは17年にパナマが、18年にエルサルバドルとドミニカ共和国が台湾との断交=中国との国交正常化を行っています。西側メディアは、蔡英文氏やその政権内の人物を時代の寵児としてもてはやしますが、実際世界では、まったくその逆の存在として見られており、上記のような断交の嵐がそのことを雄弁に物語っています。 もう一つ忘れてならないのは、先述した3カ国は、決して社会主義国でも、社会主義指向国でもありません。ところが、米国がこれらの国に対し、少しでも意に沿わなければ、そして自国の勝手な都合で、傍若無人に制裁を連発することに反発したのが、この中国との国交正常化という流れの大きな要因となっています。ニカラグアに対するのとほぼ同じことを仕掛けたためです。すなわち、米国は、ことあるごとに、今でもラ米カリブを自分の裏庭とし、そこに住む人民を自分の従僕か奴隷として扱っていることへの、強烈な反発なのです。実際、先日バイデン大統領は、中南米を「米国の前庭」と堂々と演説しているのです。 ※ニカラグア、台湾と断交 中国と国交を締結(日本経済新聞 21年12月10日) ※台湾・蔡総統「民主主義と自由への意思は不変」 ニカラグアの断交で(朝日新聞デジタル 21年12月10日) ※ニカラグア―中国:中南米における新たなシルクロード(INTERNATIONLIST 360° 21年12月11日)) ※中国とニカラグアの国交再開は帝国主義への打撃(社会主義中国の友 21年12月12日) ※中国、ニカラグアのインフラ・病院・再生可能エネルギー開発支援に合意(社会主義中国の友 22年2月14日) ※シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して(No.29) 「台湾有事」プロパガンダと日本軍国主義の新段階(2) なぜ米国は台湾に対する介入と中国への国家分裂策動を続けるのか(リブ・イン・ピース☆9+25) 中国外交攻勢の基礎にある経済協力の強化 ラ米カリブで、そして全世界で、中国が力強く外交攻勢をかけている基礎となっているのは、中国の貿易・投資等を通じた経済に占める大きな比重です。 まず、貿易。全世界の3分の2以上の国で最大の貿易相手先が中国となっています。ラ米カリブも例外ではありません。2021年1月から9月までの中国とラ米カリブ諸国との貿易額は、前年同期比45.5%増の3318億8000万ドルとコロナ禍でも急増しています。これに対し、2002年通年では、180億ドルを超えませんでした。わずか20年弱で約25倍まで膨れ上がっています。また投資においてもラ米カリブの対内直接投資ストックの約3分の1を中国が占め、米を抜いてトップに立っています。インフラ分野に限れば、中国はラ米カリブで138のインフラプロジェクトを持ち、約940億ドルを投資し、60万の直接雇用を生んでいます。 ※ラテンアメリカは米国から距離を置き続ける(MRオンライン) ALBA等を通じた協力・連帯の強化 ラ米カリブの社会主義・社会主義指向・革命的進歩的諸国間の連帯も引き続き強化されています。昨年12月には20回目となるALBA(米州ボリバル同盟)の首脳会議がキューバの首都ハバナで開催されました。ベネズエラのマドゥーロ大統領、ボリビアのアルセ大統領等首脳自らがキューバの国際空港に降り立ち、キューバの国際観光解禁を世界にアピールしました。会議では、「国連憲章を尊重し、主権と独立の防衛及び経済協力の強化」を声明し、米国の経済制裁を強く糾弾しました。 ※ALBAが最終宣言を承認し、2022年戦略アジェンダを発表(teleSUR 21年12月14日) 現在ラ米カリブでは、進歩的革命的勢力の前進と表裏一体の形で、中国の平和と平和共存・人民優先外交が着実に地歩を固めながら、1歩1歩確実に前進しています。 2021年2月27日 関連記事 (No.55)中国の「債務の罠」プロパガンダのデタラメ (No.43)米の経済的・政治的支配からの脱却を目指すGDIフレンズグループ(上) (No.36)「一帯一路」は覇権主義なのか(その5) 植民地支配・収奪からの脱却を目指す世界史的事業 (No.35)「一帯一路」は覇権主義なのか(その4) 執拗な「一帯一路」敵視キャンペーンに反論する (No.34)「一帯一路」は覇権主義なのか(その3) 「債務の罠」は米国とメディアが作り出した虚像(2)――スリランカの例 (No.33)「一帯一路」は覇権主義なのか(その2) 「中国による債務の罠」は米国とメディアが作り出した虚像(1)――ザンビアの例 (No.32)「一帯一路」は覇権主義なのか(その1) コロナのもとで真価を発揮した「一帯一路」 |
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