シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.31) 日中の「4項目合意」(14年11月)以降、尖閣周辺は緊張していない

 尖閣諸島を巡っては、中国「海警法」の施行、中国公船の領海侵入などが、連日報道されています。しかし、「尖閣水域の緊張は局地的、限定的なもので、実態は緊張には程遠い」「日中関係も正常化以来最悪との報道は事実ではない」とする記事が、「日刊ゲンダイ」に掲載されました。非常に重要な内容なので、ここでその記事を紹介します。尖閣を巡る日中の実際の状況について目から鱗が落ちる鮮やかな内容です。
 これまでも論じてきたように、日中、米中の対立を巡る問題は、事実をねじ曲げたり、事実に反することが政治的意図を持って報道されています。尖閣問題も中国側がどんどん押し寄せて、今にも力ずくで奪いにやってくるかのような報道の洪水状態です。しかし、中国側は、実際には日本側の一方的な領有権の主張に対抗して、領有権の主張をするための行動に限定し、必要以上の対立激化を引き起こさないように節度ある冷静な対応をめざしていることがわかります。反対に日本政府の側、与党の側が対立の政治的外交的解決を目指すのではなく、対立を煽って火をつけて回っているわけです。それは周辺国に対する憎しみを国民に植え付け、戦争に近づけようという姿勢であり、かつて天皇制軍国主義が臣民に対して煽ったプロパガンダと同じものです。
尖閣諸島をめぐる日中関係は「緊張していない」と断言 専門家が喝破する現状と未来(日刊ゲンダイ)

 記事は、泉川友樹・琉球経済戦略研究会事務局長のインタビューです。泉川氏の発言の要点は以下です。

・尖閣水域は緊張していない。だいぶ沈静化している。

・中国の公船が尖閣諸島の(日本が主張する)領海に入る回数が月平均で一番多かったのは2012年(日本政府が尖閣を国有化した年)。この年は9月以降は5日/月、翌13年は4.5日/月。最近は18年が1.58日/月、19年が2.6日/月、20年が2.4日/月。

・沈静化したきっかけは、14年11月7日の日中両政府による「4項目合意」。その中でも重要なのは3番目の「双方は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年、緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識する」。これにより、中国側は「日本は中国が自分たちと違う認識を持っているということを認識した」すなわち「日本が領土問題の存在を認めた」と解釈できる。日本側は「中国が領土問題の存在を主張しているという認識は持った。しかし日本は領土問題が存在していると認識していない」と解釈できる。「玉虫色」の合意だが、3番目の後段では「対話と協議を通じて情勢の悪化を防ぐとともに危機管理メカニズムを構築し不測の事態の発生を回避することで意見の一致を見た」と書かれている。非常にしっかりと合意している。
「4項目合意」の内容は外務省ウェブサイトで読むことができる。
 日中関係の改善に向けた話合い(外務省)


・「4項目合意」以降、中国は尖閣周辺への進入は、ほぼ同じ時間にほぼ同じ隻数であり、定例化・儀式化している。一応領有権主張を続けていることを示すための行動で、もちろん上陸や占有騒ぎを起こすためではない。これは日本政府にも予測可能な動きなので、脅威ではない。

・領海の外側の広大な排他的経済水域(EEZ)では、日中漁業協定があり、日本の船が中国公船に追いかけられるリスクはゼロ。領海では、考えの違いもあるから静かにしていて欲しいということ。

・「4項目合意」の存在があまり世の中に知られず、日中漁業協定があるため領海の外側で魚を捕っても何ら問題がないことが世の中に知れ渡っていない。「中国はどんどん強硬になって、まだ領海に入ってきている」というようなことを言う。「中国をあの海域から排除するためには、我々が尖閣に行って漁をしないといけない」と思っている人たちがいる。日本の漁船が尖閣領海に入って漁をすると、中国側から見ると違法操業で取り締まらざるをえなくなる。彼らが変な行動をとらないように、中国公船も領海に入って見ている。

・(麻生の「台湾の次は沖縄」発言について)台湾が攻められたら次は沖縄だというような根拠のないことを現役の副総理が言うのは不適切。そういうことが起きないような外交環境をつくることこそ、政治家に求められていること。

 「4項目合意」については私たちも初めて知りました。泉川氏の言うとおり、事実が十分知らされず、報道や右翼的論者にあおられる形で、緊張した雰囲気が作られることが、大きな問題だと思います。まず、事実を知ることが重要です。

この日刊ゲンダイのインタビューはyoutubeでも見ることができます
 さらに、「泉川友樹」でyoutubeを検索すると彼のいくつかのインタビューを見ることができます。

2020年7月27日
リブ・イン・ピース☆9+25

参考 シリーズ「尖閣諸島問題」をどう見るか ──歴史的経緯を中心に(リブ・イン・ピース☆9+25)

シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して 「はじめに」と記事一覧

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