シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.21) 中国海警法を口実にした海上保安庁の「第二自衛隊化」をやめよ

なぜ今ごろ騒ぐのか?
 1月に中国全人代で中華人民共和国海警法が成立し、2月1日に施行されて以降、日本政府・自民党・自衛隊・メディアは中国海警法脅威論で大騒ぎです。日米安保協議委員会も危惧を表明しました。野党も同調しています。日本共産党も国際法違反を主張し、日本政府の弱腰を批判して中国に法律撤回を要求すべきだとしています。他国に法律撤回を求めるなど内政干渉も甚だしいと言わざるをえません。これら一連のキャンペーンは反中国感情をあおるとともに、海上保安庁の「第二自衛隊化」を真の目的にしています。極めて危険な動きなのです。
 脅威論の論点は次のようなものです。(1)海警局は人民軍に組み込まれ、中国共産党の指揮下に入った。(2)海警局の巡視船は軍艦を上回る大きさで武装が強大だ。(3)対象地域=「管轄海域」は曖昧で中国が恣意的に適応できる。(4)他国の軍艦、公船に強制措置をとれ、武器使用ができる。このうち、(3)「管轄権」と(4)が国際法違反だという主張です。
 海警法で海警が武力行使する危険性を増した、いつ尖閣諸島に攻めてくるか分からない、中国共産党と軍の指揮下で侵略的で攻撃的だ、増大する脅威への対応が必要だ、というのが政府と防衛族、自衛隊の主張です。しかし、海警が中央軍事委員会の指揮下に入ったのは2018年です。2013年に海警、海監、魚政、海関の4つの海上法執行機関が統合され国務院の下に置かれました。それが2018年に海警局として武装警察の下部組織となり、中央軍事委員会の指揮の下に置かれたのです。これら一連の改革は並立する海上法執行機関を整理・統合し、更に国務院の下で海警が国家海洋局に属しながら、公安部の指導を受けるという複雑な組織・指導体制を改め、海上法執行機関を強化するために行われたと思われます。その背景には海洋を背景に周辺国、何よりも米国の軍事挑発活動や自由航行作戦、日本との領土を巡る緊張などに統一的な対応する必要があると考えられます。いずれにせよ今回は組織改編に伴う法整備、任務の成文化であって実態の変化ではありません。それを今ごろ突然危険だ、脅威だと騒ぎ始めるのは何か別の何の政治的意図を持っていると考えなければなりません。

海上警察などが有事に軍隊の指揮下に入るのは他国も同じ
 中国海警は中央軍事委員会の下にある武装警察に属し、その指揮下にあります。武装警察は、人民軍の指揮下ではなく、中央軍事委員会の下で人民軍と並列の組織です。中国では歴史的経過から人民軍は政府の指導下ではなく中国共産党の指導下に置かれており、中国海警が武装警察を通じて党の組織である中央軍事委員会の指揮下にあることとは確かです。そして海警は海上法執行機関(犯罪の取り締まりや秩序維持)としての任務とならんで、平時でも一部に国防・領域防衛を任務としています。しかし、そのことでもって海警が軍や党の指揮下だから侵略的だとか、尖閣に上陸したり攻撃したりしてくる等ということにはなりません。
 まず、海上警察、沿岸警備隊等が有事に軍隊の指揮下に入るのは特異なことではありません。国により成り立ちは異なりますが、アジア諸国の大半がその形を取っています。さらに多くの国がこれらの組織に平時でも一部の軍事的活動を任務として付与しています。そのことだけで異常だ危険だと主張するのは詭弁で、人々に中国海警をことさら脅威と思いこませる詐術です。
 典型は米国の沿岸警備隊です。中国政府は海警は沿岸警備隊を手本にしたと言っていますが、沿岸警備隊は陸・海・空・海兵隊に次ぐ第5の軍種と憲法に規定され、連邦政府の警察機関であると同時に、正式なアメリカ軍の一部門であり、隊員は軍人です。沿岸警備隊それ自体と軍の2つの武力行使マニュアルを持っています。平時では国土安全保障省に属し海上法執行を主任務としていますが、平時でも軍の常設組織として防衛準備態勢を義務つけられています。戦時には軍の指揮下に入るだけでなく、これまでベトナム戦争など米が参戦した全ての戦争に護衛や臨検などで出動しました。最近は米政府の対中国での海軍力強化=「海洋での優位戦略advantege at sea」に基づき海兵隊と並んで海軍部隊の増強のため協力しており、沿岸警備や海上法執行とは何の関係もない中国沿岸の南シナ海、東シナ海に出動しています。
 また、英国では海軍そのものが平時の洋上法執行活動を行い沿岸警備などの活動に当たっています。フランスでも軍事的組織である洋上憲兵隊が沿岸警備などを担っています。これらの現実に口を閉ざしたまま、中国海警だけが中央軍事委員会の指揮下にある、国防を任務にしていると非難することは根拠がないことです。

日本は平和憲法によって制約
 しかし、日本の海上保安庁は大半の国とは事情が異なります。何よりも日本の天皇制軍隊による侵略戦争と敗北、それへの反省の結果としての日本国憲法の成立と平和主義が根本にあるのです。新憲法下で1949年にできた海上保安庁法では「海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」(25条)と明確に規定し、軍隊ではない、軍隊の行動とは区別することが強調されています。これは戦争放棄と平和主義を明記した日本国憲法を反映したものです。ところが5年後にできた自衛隊法80条では、「・・・自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があった場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる」と「有事」には自衛隊の指揮下(防衛大臣の指揮下)に入れることができるとしました。軍事的機能を持たせたのです。しかし、現実には政治的状況がそれを許さず、海上保安庁は警察・法執行機能だけを果たしてきました。国防や領土防衛など一切の軍隊的任務を引き受けず、洋上法執行任務だけに特化した組織である事が日本国憲法下での海上保安庁の特徴なのです。
米沿岸警備隊(Wikipedia)
Global Times 「Baseless hype over China’s coast guard dual role reveals double standards」 は米沿岸警備隊の性格、及びアジア各国の沿岸警備隊の性格について触れている。
海上保安庁法(昭和23年4月27日法律第28号)は日本国憲法の平和主義に立脚し海上保安庁に軍隊としての性格を持たせることを否定している。
 第2条 海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における船舶の航行の秩序の維持、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。
 第25条 この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない

自衛隊法(昭和29年6月9日法律第165号)は防衛出動時に海上保安庁を防衛大臣の統制下に組み込むことを規定した。 
第80条 内閣総理大臣は、第76条第1項(第1号に係る部分に限る。)又は第78条第1項の規定による自衛隊の全部又は一部に対する出動命令があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる。
2 内閣総理大臣は、前項の規定により海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れた場合には、政令で定めるところにより、防衛大臣にこれを指揮させるものとする。


武装も強大とは言えない
 海警は武装が強大だという非難もでたらめで誇大な宣伝です。確かに1万2千トンの超大型巡視船など3隻は3インチ砲(76ミリ砲)を積んでいますが、それ以外の巡視船の武装は日本の海上保安庁の巡視船の武装と大差がありません。20~40ミリ機関砲装備ががほとんどです。船の大きさも超大型3隻を除けば6千トンから千トン級で日本側と大差がありません。しかも日本の場合、ほとんどの巡視船が武装し複数の機関砲を装備しているのに対して、中国側は放水銃だけの非武装タイプも多いのです。火力では日本側の方が強力である可能性が大きいと言えます。
例えば、この海上保安庁の資料は平成28年8・9月に尖閣(魚釣)付近に現れた中国海警の巡視船23隻を紹介しているが武装しているのはそのうち8隻に過ぎない。

「管轄水域」の問題はすり替え
 国際法違反の問題はどうでしょうか。まず「管轄水域」について。日本の右翼、一部のメディアは中国が「管轄水域」をどこにでも勝手に設定できるとし、「中国が管轄海域を尖閣に宣言し、そこに上陸し、あるいは尖閣周辺の領海内で行動中の海上保安庁や漁船に武力行使する可能性」がある、だから危険だと言います。これは2重のウソとすり替えです。
 第1に、確かに「管轄水域」は一定の曖昧さを持っています。中国人民法院は管轄水域を「内水、領海、接続水域、排他的経済水域(EEZ)、大陸棚、及び中国が管轄するその他の海域」とします。領海までは「主権」が存在し、EEZ及び大陸棚には制限された「主権的権利」が存在します。しかし、最後の「その他」に何が含まれるかは明確ではありません。けれどもこれが具体的な権利として現れたことはないのです。もちろん、勝手に宣言できるものではありません。
 第2に、もっと重要なことはこの「その他の管轄水域」が問題ではないということです。日本側が真っ先に取り上げるのは尖閣(釣魚)諸島です。しかし全く問題が違います。中国側は尖閣を「その他の海域」とは考えていません。明確に中国の領土、周辺は中国の領海と考えています。従って、日本の漁船を領海に不法に侵入したものと扱い、海上保安庁の巡視船に対しても退去を要求し、強制退去させる可能性はあります。問題は海警法と「管轄水域」の問題ではないのです。日中双方の領有権を巡る争いなのです。領有権問題を解決するか、棚上げにして共同の漁業権、資源開発権などで政治的に解決するしかないのです。「日本固有の領土」などと日本国内にしか通用しない概念を振りかざしても、同盟国である米国さえ日本の領土と認めない現実を直視すべきでしょう。尖閣(釣魚)における対立激化を抑え安定化するには、日本政府が日中国交回復時の「棚上げ合意」に立ち返ることです。2012年に一方的に同合意を破棄し、突如尖閣(釣魚)を国有化したことを撤回すべきです。この行動が尖閣(釣魚)をめぐる緊張と対立を引き起こしたのですから。解決法は、海警法に対抗することでも、管轄権を非難することでもありません。
ここでは管轄水域について中国人民法院の規定に基づいて一定の曖昧さがあることを指摘しました。同様の規定は2003年の「無人島保護及び利用管理規定」などでも行われています。今回の海警法の素案にも同様の記述がありましたが、最終決定では削除されました。一方、中国政府の公式の発言で、この曖昧な「その他の管轄海域」を事実上無視する動向が前に出ています。下の浅井基文氏のコラムは2020年9月に王毅外相の発言からもはや中国政府が「その他の管轄海域」の認識を改めたようだと指摘しています。事実上そうなっているなら、右派系メディアの指摘する「管轄権を自由に設定できる」という「国際法違反」も全く意味を失います。
「南海(南シナ海)主権問題(九段線)に関する王毅外交部長発言」(浅井基文コラム)
 第一、中国の南海諸島に対する主権及び主権的権利は歴史的及び法理的に十分に依拠するところがある。(まず)国連海洋法条約を含む国際法に基づき、各国の歴史的権利は尊重されるべきである。(次に)中国政府は1948年に正式に南海断続線を公布し、南海諸島が中国の領土であることを明確にした。(さらに)中国は2016年7月に政府声明(浅井注:上記「中国政府声明」)を発表し、南海における中国の領土主権と海洋権益を明确に闡明した。中国の主張は一貫しており、変化はなく、また変化はあり得ない。拡大したことはなく、また、縮小することもあり得ない。中国は断続線内の海域を自国の内水及び領海としている、と言い立てる者がいるが、これは下心を持って概念を曖昧にするものであり、中国の立場に対するわい曲である。(王毅外相発言)
 王毅発言は、"九段線はその中に所在する東沙、西沙、中沙及び南沙群島は中国の領土であることを示す境界線に過ぎず、中国が九段線で囲まれるすべての水域を中国に属する内水・領海と主張しているわけではない"という点をはじめて明確にしたものと言えます。(浅井基文)

同様の傾向は最近のGlobal Timesの記事にも見ることができます。例えば、「China’s law enforcement in S.China Sea totally legal」( Zong Haihe Mar 15, 2021)では、「中国の海警法が2月1日に施行されて以来、中国のこの国内法は、多くの西側メディアや中国の近隣諸国の一部によって根拠のない疑問視を受けてきました。彼らは、中国の海警法は、主張が重複している南シナ海での法執行活動のためのあいまいな範囲を設定すると主張しています。彼らはさらに、中国が国際法に反する法執行活動を他国に強制していると主張します。そのような非難は欺瞞的です。悪意のある論理によって、正しいことが分からなければ、簡単に誤解される可能性があります。」とした上で、南シナ海で中国の管轄の属する部分について「南シナ海の島々に対する領土主権に基づいて、中国は海洋地域に歴史的権利を持っています。これらには、内海および領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚が含まれます。」と上の王毅発言と同様、九段線はその内側にある島嶼に対する主権を主張しているだけで、全域を領海と主張しているわけではないとの立場を取っています。

国連海洋法条約違反とは言えない
 最後の問題は、海警法の「中国の法令に違反した外国軍艦、外国政府船を停止させ、直ちに当該水域から退去させる権利を有し、退去を拒否して重大な危害または脅威を与えた場合、強制撤去、強制曳航等の権利を有する」(一部省略)、という21条と、「国家の主権、主権および管轄権が不法に侵害されるときは、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講ずる権利を有する」(同)という22条が、国連海洋法条約に違反するかどうかです。
 確かに国連海洋法条約は、「軍艦が領海の通航に係る沿岸国の法令を遵守せず、・・当該法令の遵守の要請を無視した場合には、・・・その軍艦に対し当該領海から直ちに退去することを要求することができる」(30条)と規定し、武器の使用も強制措置も認めていません。
 だから海警法は国際法に違反するというのは乱暴な決めつけです。まずは中国海警局の性格と任務を問題にしなければなりません。海警局は(1)法律の執行機関(犯罪取締-警察機関)であるだけでなく、(2)領土、領海の防衛も任務としています。従って主権防衛のための行動も任務の一部になります。海警法第1条に、法律の目的として「主権と安全保障」、「国民の適法な権利保障」とある通りです。第83条にも「防衛活動等の業務を行う」と規定されています。海警法17条は領海への不法進入(犯罪行為)に対しての措置を規定していますが、23条は「国家主権の侵害」まで問題にしており、主権防衛のための任務まで射程に入れているのです。国連海洋法条約は各国の洋上法執行に関する規定で、主権侵害や戦争などの主権同士の衝突は対象にしていません。海警法はその中に主権侵害などへの対応を任務としているために、国連海洋法の枠をはみ出た規定が含まれます。例えば自衛隊法に規定される武力行使に関する事項は国連海洋法に制約されませんが、海警法は武力行使を規定する自衛隊法と同じ性格を一部に含むのです。
 同時に、法執行機関としての武器使用については海警法自体が厳格な制限を規定しています。日本の海上保安庁及び海上警備行動時の自衛隊は「警察官職務執行法第7条」に基づいて武器の使用を認められています。同法は正当防衛と緊急避難以外に、①三年以上の懲役等の兇悪な罪を犯した者が警察官の職務執行に抵抗し、逃亡しようとするとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないとき、②逮捕状での逮捕の際、警察官の職務執行に抵抗し、逃亡しようとするときこれを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないときに武器使用を認めています。法執行時における同様の制限規定は海警法の中でもさらに詳細に規定されています。海警法では同様に、第6章「警察の武器、および兵器の使用」の項で、警察用の武器、携帯する武器、船舶に搭載する武器の使用を規定し、さらに50条では危険の性質、程度、緊急性に照らし必要な限度を合理的に判断すべきとしています。警察行動の中で必要最小限の武器使用が認められているに過ぎないのです。法執行における武器使用は一般に認められているものであって国際海洋法に違反するものではありません。
 逆に、この問題では海警法をめぐる議論で日本政府の異様な姿勢が問題になっています。日本政府は2月下旬に「軍艦・外国公船が上陸を目的に領海に侵入すれば危害射撃も可能である」との法解釈の変更を公表しました。海上保安庁の任務には国土・主権防衛は含まれません。日本では主権侵害に対する防衛、武力行使は自衛隊に限定されているからです。ところが警察・法執行活動に限られる海上保安庁が外国軍艦や公船に危害射撃を行ってもいいとすれば、それこそ国内法(海上保安庁法)に全面的に違反して領土防衛、主権防衛を海上保安庁が遂行することになり、もちろん法執行機関に軍艦・公船への退去命令以上を認めない国連海洋条約にも違反することになります。この解釈変更は海上保安庁が勝手に戦争の火ぶたを切ることを認めることを意味します。繰り返しますが、それこそ戦後の日本国憲法の平和主義に制約された規定なのです。
 付言すれば、国連海洋法30条の領海における有害航行の外国の軍艦、政府船に対する対応の限界については論争があります。最も制限的な場合でも沿岸国の安全保障に重大な危険が差し迫った場合には、その回避に必要な措置を、必要性と均衡性のもとに、武力不行使原則に違反しない形で取ることができると考えられています(注1)。尖閣(釣魚)周辺では日中の巡視船が航路を交差し、衝突寸前の状態で相手をけん制しあっている現状があります。これは国連海洋法条約30条に合致しているとは言えませんが、その解決は先に述べたように領有権をめぐる政治解決と対立・緊張の緩和しかないことはいうまでもありません。
「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)
第30条 軍艦による沿岸国の法令の違反
 軍艦が領海の通航に係る沿岸国の法令を遵守せず、かつ、その軍艦に対して行われた当該法令の遵守の要請を無視した場合には、当該沿岸国は、その軍艦に対し当該領海から直ちに退去することを要求することができる。

中国海警法
第17条
 海上警察機関は、中国の領海及びその範囲内の水域に不法に進入した外国船に対して、直ちに退去を命じ、または拘留、強制撤去、強制曳航等の措置をとる権利を有する。
第20条
 外国の団体及び個人が中国の管轄水域及び島嶼・礁に、中国の主務官庁の承認を得ずに建築物もしくは工作物を建設し、または各種の固定装置若しくは浮遊装置を配備した場合、海警機関は、一定期間内に上記の違法行為の停止または撤去を命じる権利を有し、一定期間経過しても違法行為の停止を拒み、または撤去しないときは、海警機関は、これを停止し、または撤去を強制する権利を有している。
第21条
 海上警察機関は、中国の法令に違反した場合、中国の管轄水域内で非商業目的で使用する外国軍艦および外国政府船を停止させ、直ちに当該水域から退去させるために必要な警戒管理措置を講じる権利を有し、退去を拒否して重大な危害または脅威を与えた場合、海上警察機関は、強制撤去、強制曳航等の措置を講じる権利を有する。
第22条
 海上において外国の団体および個人により国家の主権、主権および管轄権が不法に侵害され、または不法に侵害される危険が差し迫っているときは、海上警察機関は、この法律その他の関係法令の定めるところにより、その侵害を停止し、危険を除去するために、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講ずる権利を有する。
(注1)「軍艦その他の政府公船に対し保護権の行使として執りうる措置」坂巻静佳;日本海洋政策学会誌5号(2015年11月)


目的は海上保安庁の第二自衛隊化
 結局、海警法非難とは何なのか、何のために行われているのでしょうか。中国は2年前の制度改変に伴う法整備をしただけで何も変わっていません。ところが日本政府は、あたかも脅威が増大したかのように騒ぎ立て、国際法違反の法解釈をして海警法への「対抗」を強化したのです。初めからこれが目的で意図的に騒いだかのようです。自民党議連はこの現状を「グレーゾーン」と勝手に決めつけ、もっと本格的な対策を要求しています。「国際法が許す範囲で武器使用できるように」海上保安庁法を改正すべきだと。石破元防衛大臣らはもっとあからさまに海上保安庁法の改悪を要求します。同法の第2条に「国土・領海防衛任務」を付与し、第25条の「軍隊との区別」を削除すべきだと。そして海上保安庁と自衛隊の共同行動(すでに共同訓練が実施されている)。海上保安庁の活動への自衛隊の参加、防衛出動(武力行使)要件の引き下げ、つまり海上保安庁を文字通り第二自衛隊にし、自衛隊の指揮下に置いて普段から軍隊的な任務を押し付けようというのです。海上保安庁のあり方を根本的に改悪するものです。自民党国防族議員は石破と同じ立場で法改正を要求しています。ただし、海上保安庁に係わる国交部会は慎重姿勢で対立しています。国防族議員がリードして提言をまとめたのです。
 結局、海警法非難は海上保安庁を第二自衛隊化、対中国軍事力強化の口実なのです。逆に尖閣(釣魚)など領有権を巡る紛争は政治的解決と緊張緩和で解決するしかありません軍事的エスカレーションは事態を一層危険にするだけです。われわれは、国際紛争を拡大させないために、たとえ対立と衝突が起こってもそれを軍事衝突にまで拡大させないために海上保安庁、海警、沿岸警備隊レベルにとどめるという、これまで培われた国際的な歴史的教訓と知恵と精神に反する海上保安庁の自衛隊化に断固反対します。
自民尖閣提言 玉虫色の決着 国防部会・国交部会 意見対立(産経新聞4月5日)
中国海警法 日本の対応は(3月18日日経)

2021年5月8日
リブ・イン・ピース☆9+25

シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して 「はじめに」と記事一覧

関連記事
(No.5)「尖閣諸島への中国の脅威」は本当か?(下)
(No.4)「尖閣諸島への中国の脅威」は本当か?(上)