シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.19) 「ウイグル・ジェノサイド」のデマ・ねつ造を批判する(まとめ)

 中国の新疆ウイグル自治区に関して、「ジェノサイド」「強制収容所」「強制労働」が広く宣伝されています。中国政府が非難され、欧米諸国からは制裁も課されています。しかし、私たちの検証では、こうした宣伝がデマであることが分かりました。この連載のNo.16~18でその理由を示しましたが、文章が非常に長いので、時間のない方のために、ここに短いまとめを掲載します。No.16~18の該当箇所へのリンクを張っていますので、必要に応じて参照してください。

「強制収容所」とは、テロに対抗する職業訓練所と教育施設
 まず前提として、新疆ウイグルにおいて中国と中国人民がテロ攻撃を受けてきたという事実が隠されてています。イスラム武装テロ組織=東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)によるテロ・破壊活動が数百件規模で起こっていました。それをそそのかしてきたのは米欧の政府・諜報機関です。
 このテロ活動に対し、中国政府は2つのプログラムで対応しました。(1)この自治区の経済を成長させ、貧困から脱却させ、ウイグル人に仕事を与えること、そのために様々な職業教育を行う職業訓練所や教育施設を作ること、(2)前記ETIM系武装テロ組織の中心的構成員にテロ犯罪に見合う正当な処罰を与え、職業訓練を行い、社会復帰させること。西側メディアが言う「強制収容所」とは、こうした2つのプログラムに関連する職業訓練所と教育施設のことです。

「ジェノサイド」の唯一の情報源ゼンツ。その論拠は2点だけ
 「ウイグル・ジェノサイド」の情報源はただ一人、エイドリアン・ゼンツです。この人物は、極右キリスト教原理主義者の組織「福音派共産主義犠牲者記念財団」の上級研究員という肩書きで、反中・反共情報をねつ造・流布を専門にしている有名なデマゴギストです。そして亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」(WUC)と密接な人物です。同団体はNGOを装っていますが、前記イスラム原理主義組織ETIMと結びつき、米欧の諜報機関や米政府に支援された反中国のプロパガンダ機関です。
 ゼンツの「ウイグル・ジェノサイド」の論拠は二点だけです。(1)「中国統計局の調査で新疆ウイグル地区の二大都市で人口増加率が84%減少している」、(2)「ウイグル族で避妊手術が増えている」。
 (1)については、ウイグル民族の人口は2010年の1010万人から18年の1270万人に増加しています。「増加率」が下がっただけで、人口が減少した訳ではありません。2005年から18年まで一貫して漢族よりウイグル族の人口の方が増加しています。
 (2)について、ゼンツが避妊手術が激増している根拠としているのは、「中国におけるでのIUD(子宮内避妊用具)の純挿入のうち80%が、人口の1.8%しかない新疆で行われた」ということです。IUDの新規挿入で見れば、中国全体で3,774,318件、新疆は328,475件で、新疆での件数は、中国全体の8.7%に過ぎません。にもかかわらず80%というような数字になるのは、ゼンツが挿入数から摘出数を引いた「純挿入数」という概念を導入して、それを比較しているからです
 証言もデマです。例えば、ある女性は「強制収容所で警備員に集団でレイプされ身体的拷問や強制避妊手術を受けさせられた」と証言したとされていますが、実際には彼女は「新疆では精神的に追い詰められて亡命した」と話していただけです。また母親から子どもを強制的に引き離されたと証言したとされる女性は「無料保育を提供する政府のプログラムによって、子どもの世話をしてくれるお陰で安心して仕事に行くことができる」という後に続く発言部分が省略されました。「子どもと別れる」部分が「子どもの引き離し」「強制収容」へとねつ造されているのです。

「強制収容所」は、たった8人のインタビューから100~200万人の強制隔離を「推計」
 「ジェノサイド」の他に「強制労働」「強制収容所」があります。この情報源の一つは、中国人権擁護者ネットワーク(CHRD)です。彼らも米政府の支援を受け、ワシントンに拠点があります。資金源は世界ウイグル会議と同様、CIAの隠れ蓑「全米民主主義基金」(NED)です。
 しかし、その根拠は、彼らが「証言者」として集めた、わずか8人のウイグル人とのインタビューで、そこから「推計」しただけです。8人からどうやって1000万人の動向を「推計」できるのでしょうか。こうして「村人の10%、100万人が再教育拘禁キャンプ」、「村人の20%、200万人が再教育プログラム」なる荒唐無稽な「ホロコースト」がでっち上げられたのです。

豪軍・諜報機関系シンクタンクASPIは、衛星写真をもとに証拠をねつ造
 新疆ウイグルの「強制労働」「強制収容所」宣伝で最前面に出ているのが「オーストラリア戦略政策研究所」(Australian Strategic Policy Institute、ASPI)です。軍事政策のシンクタンクですが、オーストラリア政府によって設立され、オーストラリア国防省からも資金が出ているオーストラリアの軍・諜報機関のシンクタンクなのです。公平中立のシンクタンクのような顔は真っ赤なウソです。
 このASPIの作り話の手法は、衛星写真をもとにもっともらしく「強制収容所」の証拠としていくつかの建物を指摘するものです。しかし、中国の環球時報(英語版Grobal Times)がチェックしたところ、老人医療施設、物流センター、初等学校、中等学校と、すべて別の建物でした。

中国経済研究者の検証論説も「確固たる根拠はない」
 中国経済研究者の丸川知雄氏は最近、「ウイグル強制労働」に関する論説を日本版ニューズウィークのサイトにアップされました。結論は「H&Mなどの大企業が「新疆綿」の取り扱い中止を発表したことで、ウイグル族に対する人権抑圧の新たなシンボルとして浮上した綿花畑での「強制労働」には、今のところ確固たる根拠はない」です。
 そして「新疆の綿花農業における強制労働の存在を主張するアメリカとイギリスの4本のレポートを検討したが、このうち自ら証拠を捕えようとしているのはゼンツだけで、他の3本は他のレポートの受け売りである。となるとゼンツのレポートが強制労働説の大元ということになるが、中国の報道を曲解しただけのレポートが騒ぎの元なのだとすれば驚きである」としています。

中国政府は西側メディアにも職業訓練所と教育施設を公開
 職業訓練所で西側メディアの記者が撮影した映像を素直にみれば、職業訓練や教育が行われています。ところが西側メディアはそのような映像をバックに「国際人権団体は、虐待などの人権侵害を指摘」「家族と連絡とれなくなったと話す中国国外のウイグル族も」などの字幕を入れ、あたかも技能講習や教育活動は宣伝であり実態は収容施設であるというイメージを与えようとしています。中国政府がいくら映像や統計を公開しようとも「ウソだ」「真実を隠している」と言い、相変わらずゼンツらのねつ造情報を報道し続けているのです。

2021年5月4日
リブ・イン・ピース☆9+25

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