シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.16) 「ウイグル・ジェノサイド」のデマ・ねつ造を批判する(上)
狙いは中国封じ込め――制裁発動、新疆綿使用企業ボイコット、北京五輪ボイコット

「世紀のウソ」に基づき米欧諸国が対中制裁を発動
 米欧諸国は、空母艦隊を中国近海に貼り付け軍事的恫喝を加えると共に、「ウイグル・ジェノサイド」「強制収容所」論を盾に「人権問題」を政治化し、対中制裁に乗り出しています。
 先鞭をつけたのはトランプ政権時代のポンペオですが、バイデン政権が全面的に前政権を引き継ぎ、「人権外交」=制裁外交を加速しています。米は今年1月、新疆綿の輸入を禁止し、3月には財務省が中国政府の幹部2人を制裁対象としました。対象者の在米資産凍結、関連する全取引の禁止が含まれます。EUも3月、ウイグルを理由に中国当局者への制裁に踏み切りました。EU域内の金融資産が凍結され、域内渡航が禁止されます。天安門事件以来30年ぶりのことです。EUはそのために「グローバル人権制裁制度」を昨年12月に設けました。カナダ下院はいち早く「ウイグル弾圧がジェノサイドであると認識する」との決議を採択しました。オーストラリアとニュージーランドも「EUの制裁を歓迎する」との声明を出しました。カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、米英が主導する諜報・謀略機関ネットワーク「ファイブアイズ」そのものです。
米国務長官、中国はウイグル族を「集団虐殺」と非難(BBC)
中国によるウイグル人「ジェノサイド」、カナダ下院が認定(AFP)
EU、30年ぶり対中制裁決定 ウイグル人権問題で(日本経済新聞)

 併せて米欧政府、亡命ウイグル人団体「世界ウイグル会議」、大手メディアやヒューマンライツ・ウォッチなど国際人権団体が有名アパレルブランドに圧力を加え、新疆綿ボイコット運動を煽り始めました。これに対抗し、中国国内で中国民衆が草の根で対抗不買運動を開始しています。
 米欧政府の最大の狙いは、台頭する中国の封じ込めです。直接的には来年2月に開催予定の北京五輪・パラリンピックのボイコットに狙いを定めています。3月6日に米国務省報道官が同盟国の共同ボイコットを示唆しましたが、次の日には大統領報道官が否定するなど、米国内でも混乱していますが、中国の国際的威信をおとしめるのを目的にボイコット論が広がる可能性があります。
米 北京五輪ボイコットも選択肢 「同盟国と協議」(NHK)
[FT]ウイグル問題 米で起こる北京五輪ボイコット論(日本経済新聞)

 もちろん「人権」は中国を封じ込めるための口実にすぎず、本当に人権のことを考えているわけではありません。米国が真に人権を問題にするなら、まずは自国の山ほどある人権侵害、人権蹂躙を解決するのが先決でしょう。4月11日もまたミネソタ州で警官が黒人を射殺しました。「誤射」で片付けようとしています。黒人奴隷制以来続く黒人射殺制度をいつまで続けるのでしょうか。バイデンは口先では非難しますが、黒人への構造的差別と警察内部の白人至上主義者の放置、制度化された黒人殺害システムを解決する気はありません。人権を言うならイラク、アフガニスタン、シリアなど中東全域から米軍を即時無条件で撤退させるべきです。一体、何十万、何百万人を殺戮し、何千万人を難民や避難民にし、国土を破壊したのか。人権を語る資格のない国が他国の人権を云々すべきではありません。ところが、不思議なことに、日本を含む西側メディアは、こうした米国の突出した人権侵害、人権蹂躙は追及せず、容認し、寛容なのです。

全く検証されず垂れ流されるデマ報道――メディアの報道姿勢、報道責任を問う
 中国政府は、「ウイグル・ジェノサイド」「強制収容」「強制労働」を全面否定し、「世紀のウソ」と主張しています。当事者が真っ向から否定するなら、日本や世界の大手メディアは、少なくとも裏付け、「証言者」の素性、「報告書」の検証をきちんとする必要があるはずです。しかし、これらを検証した形跡は全くありません。ただそのまま垂れ流すだけです。メディアの倫理観や責任はどこへいってしまったのでしょうか。
外交部、「ジェノサイド」は中国では世紀の嘘(人民網)
米国務省が再び新疆のイメージを毀損 外交部「虚偽情報の出所はほぼ同じ」 (人民網)
中国、性被害証言は「うそ」 ウイグル女性の写真を手に非難(共同通信)

 私たちは、これら世界の大手メディア、中国メディア、そしてこれらメディアを監視・検証する数少ない進歩的独立系メディアを元にして、私たちなりに検証してみました。その結果、「ウイグル人人口減少」「強制不妊手術」「強制労働」「強制収容所」「ホロコースト」などは全てデマであること、ほとんどの記事、ニュースが、特定の「研究所」、特定の人物の「報告書」、真偽の分からぬ特定の人物の「証言」からなっていること、そしてそのほとんどが米英諜報・謀略機関(ファイブアイズ)関連から発信されていることが分かりました。
 かつて、米欧諸国が侵略戦争や軍事介入をする際に、CIAや「戦争広告代理店」が作った謀略に世界中のメディアが踊った事実があります。湾岸戦争を始める際の「油まみれの水鳥」「クェートの少女ナイラ証言」、ユーゴ侵略の際の「セルビア人の民族浄化」、極めつけはイラク戦争の際の「大量破壊兵器」など、全て世論を侵略に動員するためのデマでした。今回もそれと同じではないかと、非常に危機感を感じます。
田岡俊次氏が、メディアの暴走に待ったをかけています。「セルビア民族浄化」「50万人大虐殺」のデマを「戦争広告代理店」が編み出し、米NATO軍によるユーゴ空爆へ導いたこと、それが全くのデマであったことが後で判明したこと、しかし空爆をした米NATO諸国やメディアが誰も検証しなかったこと、それが後のイラク戦争の「大量破壊兵器」のデマにつながったことなど、分かりやすく解説しています。今回の「ウイグル・ジェノサイド」にも同じことが言える、と。
――ウイグル族への「ジェノサイド」認定は慎重に(ニュースソクラ )
――ウイグル「ジェノサイド」問題にコソボの幻影~国際謀略戦が始まった(デモクラシータイムス.)

超党派「人権制裁法案」の提出反対 新疆綿使用企業へのボイコット反対
 菅政権は、対中での軍事対決には米と同一歩調をとっているものの、今のところ中国との経済関係を配慮してウイグルでのジェノサイド認定や制裁発動については慎重姿勢をとっています。ところが、与野党の中から対中強硬論が台頭しています。
 自民党・中谷元議員、国民民主党・山尾志桜里議員など改憲タカ派を中心に「人権外交超党派議連」を結成し、米欧と同様の「人権外交」=制裁外交のための人権制裁法案を今国会にも議員立法で上程しようと策動しています。この発起人には日本共産党が参加し、当初渋っていた公明党まで名を連ねました。またこれとは別に立憲民主党や共産党など野党を中心にした「人権外交推進議連」が発足し、「政府の姿勢は物足りない」と菅政権に対して対中強硬姿勢を要求していこうとしています。
人権侵害制裁法の整備を 超党派議連、ウイグル念頭(日本経済新聞)

 私たちは、与野党一体となった反中・嫌中の異常なエスカレーション、コロナ・デマ、ウイグル・デマに抗議し、人権制裁法案の提出に強く反対します。事の本質は「人権」ではないのです。「人権」を口実にした内政干渉であり、帝国主義的圧力外交なのです。対中軍事包囲網の米欧諸国や日米同盟による対中軍事包囲網、戦争挑発と一体のものです。「人権」が中国を脅迫する帝国主義外交の道具となり、軍事挑発と同時に打ち出されている現在、極めて危険な挑発行為なのです。
 日本共産党はこの間、「香港問題」「新型コロナでの初動の遅れや情報隠蔽」「ウイグルでの人権抑圧」等で中国批判を強め、対中強硬論の先頭に立ってきました。同党は一昨年来、「人権」や「独裁」を理由にベネズエラのマドゥーロ政権を糾弾し始めましたが、社会主義国や社会主義指向国を殊更に糾弾するのは同じ流れだと思います。とりわけ「ウイグル・ジェノサイド」は極右・改憲勢力や極右メディアなど反中・嫌中勢力が熱心であることを知っているはずです。客観的にこれら勢力と一緒に動くことになりかねません。野党共闘で自公政権を追い詰めるべき重要な局面で、絶対に「人権」を道具に使うべきではありません。菅政権を右から批判することは避けるべきです。一刻も早く、対中強硬論から脱するよう期待します。

 最近、極右勢力、反中・嫌中勢力が、オーストラリアの軍・諜報機関に属するオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の一人の女性ヴィッキー・シューの報告書を元に、新疆ウイグル自治区で栽培された新疆綿や、繊維工場で製造されたアパレル製品を扱う企業をあぶり出し、弾劾し、メディアで非難を集中させるボイコット運動を組織し始めました。残念ながら、この運動に人権団体が加わっています。私たちは、このような疑わしい「報告書」を元にした企業ボイコット運動には反対です。人権団体には、今一度、この「強制労働」「強制収容所」問題の検証をするよう期待したいと思います。
日本の人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」は最近、ウイグル「強制労働」問題を取り上げています。しかし、ASPIの素性や中国政府、中国系メディアの反論、進歩系調査報道などを包括的に分析したのか疑問が残ります。同団体のサイトには、ヴィッキー・シューの報告書「売り物のウイグル人 -新疆地区を越えての「再教育」、強制労働と監視-」が翻訳掲載されています。この団体は性暴力問題などで非常に優れた活動をされているのに残念です。
ヴィッキー・シュー「売り物のウイグル人 -新疆地区を越えての「再教育」、強制労働と監視-」(ヒューマンライツ・ナウ)
新疆ウイグル自治区のアパレル・繊維産業における人権侵害に関するCall to Action(ヒューマンライツ・ナウ)

 極右・反中・嫌中勢力は、なぜ新疆綿を狙い撃ちにしているのか? それは、綿栽培が新疆経済の基幹産業であり、米欧諸国は制裁をテコに新疆を世界の綿のサプライチェーンから除外し、新疆経済に打撃を与えることができれば、再び新疆ウイグル自治区を不安定化させ、イスラム原理主義武装組織=東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)の活動を活発化させられると目論んでいるからです。
「『新疆綿』はなぜ中国たたきの理由になったのか?」(AFP通信)
 この記事は、制裁やボイコットは失敗するとしています。「西側諸国による制裁の効果は限定的であると結論づけている。世界の高級綿の生産量は限られているため、新疆綿の不買運動は、世界の産業チェーンの混乱や農産物価格の異常変動を招き、市場の健全的発展だけではなく、欧米企業自身の不利益につながる可能性もある」と。


問題を解くカギは、米国の諜報・謀略機関とイスラム武装テロ組織
 「ウイグル・ジェノサイド」「強制収容所」「強制労働」のデマを解くカギは、2つあります。まず第1に、このデマ宣伝は、中国と中国人民がどれだけテロ攻撃で人的・物的被害を受けたのかを隠していることです。何もないところで突然、中国の「一党独裁」政権が「大量虐殺」「強制不妊手術」「レイプ」「強制収容」したと指弾するのです。
 しかし、「ウイグル問題」には前段があります。新疆ウイグル自治区では、イスラム武装テロ組織=東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)によるテロ・破壊活動が数百件規模で起こっていました。それをそそのかしているのが米欧の政府・諜報機関です。彼らは、東側からは香港で「民主派」という美名で「独立」=国家分裂を扇動し、台湾の分離独立を煽り、西側からはチベットの「独立」と並んで、新疆ウイグルでテロ攻撃を組織し、中国の国家分裂を扇動しているのです。
香港への介入については本シリーズ(No.12No.13No.14)香港国家安全法を参照(リブ・イン・ピース☆9+25)

 最近も、中国政府は、米側が新疆を利用して中国に混乱を持ち込み、国家を分裂させる工作・陰謀を計画的に実行していることを暴露しました。例えば、パウエル元米国務長官事務所のトップを務めるローレンス・ウィルカーソンの2018年8月の発言「アフガニスタンでの米軍駐留の第3の理由が、中国の新疆にはウイグル人が2000万人おり、CIAが中国の安定を壊すための最良の方法は中国に動揺をもたらすことであること、そしてCIAが彼らをうまく利用し、彼らと一緒に中国政府を刺激し続ければ、外部の力を必要とせずに中国を内部から直接崩壊させられることを少しも隠さずに語った」をビデオを交えて紹介しました。また、昨年、米国の駐トルコ大使が現地の東トルキスタン組織の指導者と会見したこと、元FBI職員の証言「『グラディオ作戦』の特殊工作員が新疆人を密出国させて、彼らに訓練を施し、武器を配った後に中国に戻した」なども併せて暴露しました。
「FBI元通訳が新疆に対する米国の企てを暴露」(人民網)

 一つの転機は、2014~15年、シリアで、残忍なテロ組織「イスラム国」らと一緒にテロ行為・殺戮行為を繰り返していたETIM系の武装テロ組織が、アサド政権の反転攻勢によってシリアから敗走し、活動拠点を中国・ウイグルに移したことです。これによって中国は国内最大の面積を持つ人口2500万人の自治区で「内戦」を引き起こされかねない危険にさらされたのです。2014年以降、1588件の暴力とテログループが摘発され、12,995人の暴力的テロリストが逮捕され、2052の爆発物が押収されました。これは中国人民と新疆ウイグル自治区住民の命と生活を守るための懸命の措置でした。
 確かに、多民族国家中国に矛盾はあります。漢族とウイグル族との民族間の紛争があり、ウイグル地方の貧困や差別につけ込み、イスラム過激派が若者を勧誘しテロ活動へと走らせているという事情も背景にありました。しかし、民族紛争の解決に努力し、重要な成果を勝ち取っているのも確かです。

 このテロ活動に対する中国政府の対応が、2つのプログラムです。(1)まず、この自治区全体の経済を成長させ貧困から脱却させ、ウイグル人に仕事を与えること、そのために様々な職業教育を行う職業訓練所や教育施設を作ること、(2)次いで、前記ETIM系武装テロ組織の中心的構成員にテロ犯罪に見合う正当な処罰を与え、職業訓練を行い、社会復帰させること。中国政府はとりわけ2014年以降、イスラム武装勢力に対する取り締まりと職業訓練を本格化させてきました。西側メディアが言う「強制収容所」とは、こうした2つのプログラムに関連する職業訓練所と教育施設のことです。これによって2015 年以降は中国でのテロ攻撃はほとんど発生していません。
 一方、中国に「人権」を云々する米国のテロ対策はどうでしょうか。凄惨で残酷です。中国と米国、どちらが人権を尊重しているかは明らかです。米国には教育も社会復帰もありません。イスラム教徒を国内法も国際法も無視した超法規的措置によって逮捕・拘束し、グアンタナモ基地に送り監禁し、鎖でつなぎ、拷問し、中東ではドローン攻撃で殺しまくっているのです。占領下のイラクの米国刑務所アブグレイブでは米軍とCIA要員による拷問、殴打、性的暴行、強姦、死体に対するわいせつ行為、殺人など、囚人に対する卑劣な拷問・虐待の数々が暴露されました。しかし、西側諸国やメディアや人権団体は、今回、中国側に人権を迫る際に、改めてこれら米国の人権侵害や戦争犯罪を国連で決議し、裁き、米国に制裁を科そうとしているでしょうか。否、です。甚だしいダブルスタンダードです。
米国と中国のテロ対策を対比して暴露したのが、スティーブン・ゴーワンズの論説「The Chinese Uyghur Dark Legend and Washington’s Campaign to Counter Chinese Economic Rivalry」(Stephen Gowans October 25, 2020)です。

 要するに、「ウイグル・ジェノサイド」問題とは米欧の政府・諜報機関がそそのかし、ETIM系武装テロ組織が行ったテロ活動に対する中国政府の防衛措置という問題なのです。彼らは、新疆ウイグル自治区でのテロ活動、分離独立=国家分裂策動が不発に終わったことから、今度は目先を変え、「ウイグル・ジェノサイド」「強制収容所」「人権弾圧」の大宣伝、対中制裁に打って出たのです。「ウイグル・ジェノサイド」を吹聴する人々は、こうした事実を覆い隠しています。

情報源は一人。デマの世界的ネットワーク
 もう一つ、問題を解くカギがあります。第2に、「ウイグル・ジェノサイド」というデマを誰が吹き始めたのか、です。大々的にニュースになったのが昨年6月のポンペオ国務長官(当時)の「不妊手術強制」発言です。以来、今では世界中のほとんどの西側大手メディアが垂れ流しているので、まるで真実であるかのように印象づけられ信じられています。
中国がウイグル人に不妊強制との報告書、ポンペオ長官「衝撃的」(ロイター通信)
 ポンペオは、少数民族のイスラム教徒に対して不妊手術や中絶の強要、強制的な産児制限を行っているとするゼンツの報告書を見ながら、「ショッキング」で「憂慮すべき」内容だとして中国を強く批判しました。

 しかし、このポンペオ発言に対して、今年2月の外交誌「フォーリン・ポリシー」に一つの記事が掲載されました。米国務省の顧問弁護士らが、全体として及び腰ながらも、「ジェノサイド」と認定するには、国連の定義を満たしておらず、余りにも根拠が薄弱だと、批判や困惑をしている様子が詳しく報道されたのです。しかし、一旦放たれた「ジェノサイド」デマは一人歩きし始め、バイデン政権になってからも、対中強硬政策が継続される中で、弁護士や法律家のチェックもはね飛ばして、暴走しているのです。非常に無責任です。
「国務省の弁護士たちは、中国の大量虐殺を証明する証拠は不十分と結論づけた」(State Department Lawyers Concluded Insufficient Evidence to Prove Genocide in China)
「The watchdogs of imperialism and the Uyghur genocide slander」Stephen Gowans March 2,2021

 
エイドリアン・ゼンツ(wikipediaより)
 しかし「ウイグル・ジェノサイド」について言えば、その情報源はただ一人、エイドリアン・ゼンツです。この人物は、極右キリスト教原理主義者の組織「福音派共産主義犠牲者記念財団」の上級研究員という肩書きで、反中・反共情報をねつ造・流布を専門にしている有名なデマゴギストです。財団は米CIAの隠れ蓑である「全米民主主義基金」(NED)からの資金援助で運営されています。また彼は、旧ソ連の反体制派を支援する目的で設立された保守派の防衛政策シンクタンク「ジェームズタウン財団(Jamestown Foundation)」に所属する研究員でもあります。そして亡命ウイグル人組織「世界ウイグル会議」(WUC)と密接な人物です。同団体はNGOを装っていますが、前記イスラム原理主義組織ETIMと結びつき、米欧の諜報機関や米政府に支援された反中国のプロパガンダ機関です。
 ポンペオは、そのゼンツが同じ6月に発表したレポートを読み上げたのです。完全に連携しています。ここから、現在に至る「ウイグル・ジェノサイド」プロパガンダが始まります。

 また今年3月初め、米国の「ニューラインズ戦略政策研究所」(Newlines Institute for Strategy and Policy:NISP)なる団体が新たに「ウイグル・ジェノサイド」のレポートを発表し、CNN、ガーディアン、AFPなどが「独立した分析」「数十人の国際的な専門家」「画期的な報告書」などと報じました。しかしそのほとんどがゼンツの「情報」を基にしたねつ造です。
NISPの怪しさは「Unsettling intentions and suspicious origins: D.C.-based Newlines Institute has more skeletons in its anti-China closet」で詳しく検討されています。

 このNISPは、フェアファックス大学グループであり、トランプ政権の対中対決政策に乗じて2019年に反中宣伝のために設立されました。今回の「ウイグル・ジェノサイド」レポートも中国叩きに乗じようとしたものでしょう。フェアファックス大学(FXUA)は専門的教員不足や論文の盗作横行によってバージニア州政府から認可取り消しの危機にあります。

 世界で反中「ウイグル・ジェノサイド」宣伝をしている団体にはこの他、「オーストラリア戦略政策研究所」(ASPI)、「日本ウイグル協会」、「アジア自由民主連帯協議会」、「南モンゴル人権情報センター」などがありますが、ほとんどがゼンツや世界ウイグル会議による創作話やねつ造情報を世界に配信しているだけです。そして、国際NGO団体「ヒューマンライツ・ウォッチ」や「アムネスティ」などもそのような情報を元にしています。世界ウイグル会議や日本ウイグル協会には、日本の有象無象の極右人脈につながっています。ウイグル問題を人権問題として大きく取り上げているのが極右系新聞です。「人権」の底が知れるというものです。これらが「ウイグル・ジェノサイド」というデマ宣伝の世界的ネットワークなのです。

2021年4月17日
リブ・イン・ピース☆9+25

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