シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.7) 新疆ウイグル──貧困対策、テロ活動防止のための教育施設

「強制収容所」の国連報告は出ていない
 新疆ウイグル問題は、国連人種差別撤廃委員会が2018年8月末に“最大100万人のウイグル人が強制収容所に入れられている”と報告したことから、多くの西側メディアが報道し始めたものです。
 あたかも国連が報告書を出したかのように報道されていますが、丁寧に読むと、国連人種差別撤廃委員会も国連人権委員会もそのような報告書を一切出していません。国連は、アムネスティやヒューマンライツウォッチなどの人権団体が報告書を出したことを報じているのです。そしてこれらの人権団体も、現地調査で裏付けをしたのではなく、新疆ウイグルの「元住民」のインタビューのみをもとにして報告をしています。
 そしてこの「元住民」のインタビューというのは、ひとつは反共福音派機関のエイドリアン・ゼンツなる人物の創作。彼の「証言」は、かつてはワシントン、今はドイツに拠点がある「世界ウイグル会議」(WUC)を通じて全世界へ垂れ流されました。もうひとつは、ワシントンにある中国人人権団体CHRDによるものです。ほとんどがCIAのフロント機関=全米民主主義基金(NED)からの資金援助で運営されています。
 また、「強制収容所」の証拠として衛生写真を報じてきたのがオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)ですが、新疆地方政府は、それらは行政施設、老人ホーム、物流センター、高校などの学校等であることを明らかにしています。そして、「衛星写真」で云々するのではなく、直接ウイグル地区に来て確認するよう呼びかけています。中国政府はASPIについて、まともな調査を一切せず、米政府や武器商人の援助で、ただ中国に関するデマ情報を流すことだけで生計を立てている、学術的価値も職業倫理もない組織だと厳しく批判しています。
Xinjiang offers real-site photos to debunk satellite images ‘evidence’ of ‘detention centers’(Global Times)
豪戦略政策研究所ASPIの正体を暴く=外交部(CRI)

 ウイグル族出身のモデルが撮影したという真偽不明の動画をBBCが大々的に報じ、世界中のメディアが飛びつきました。中国当局は、即これに反論し、麻薬売人の動画とショートメッセージでねつ造されたものだと批判しました。
ウイグル族のモデル、中国の収容施設から動画 BBCが入手(BBC)
外交部新聞司「英BBCの新疆虚偽報道に厳正な申し入れ(人民網)

 その前には米ニューヨークタイムスによるデマ情報がありました。マスク工場が「奴隷工場」だというのです。グローバルタイムスは、雇用調整のための労働者移送バス、マスク工場、教育施設での監視活動などの写真が巧妙に組み合わされて「奴隷労働」としてのイメージを作り出していると報じています。
NYT ‘Uygur labor’ report slammed(Global Times)
仏、ウイグル問題で監視団派遣を要求 中国側は「デマ」と一蹴(AFP)

多数の国が中国の対応を支持
 ジュネーブで開かれていた第45回国連人権理事会では、キューバやベネズエラ、ロシア、シリアなど45カ国の代表が新疆ウイグル問題について中国を支持すると表明しました。“テロリズムと過激主義は人類社会にとって共通の敵であり、人権への深刻な脅威である。中国の新疆で講じられた一連の措置は、こうした脅威に対応し、地元各民族の人権を守るためのものである。新疆では3年連続で暴力的なテロ事件が発生しておらず、再び安定を取り戻している。各民族の人々の人権が効果的に守られている”等としています。
 一方39カ国がこの問題で中国政府を非難しました。非難したのは日本、米国、英国とEUを中心とした諸国です。
 米国の覇権主義と軍事的脅威に直面し、また現に米国の厳しい制裁を受け介入の危険にさらされている国々は中国政府の政策を支持していることがわかります。
Nearly Twice As Many Countries Support China's Human Rights Policies Than Are Against It(News Week)
Nearly 70 countries voice support for China on human rights issues(CGTN)

貧困対策、差別解消、対テロ封じのための職業訓練所や学校
 中国政府が新疆ウイグル地区で職業訓練所や学校での教育に力を入れるようになったきっかけは大きく二つあります。
 第一は、2009年7月に起こったウイグル騒乱事件です。デマ情報をきっかけに起こった広東省でのウイグル人襲撃・殺害事件への警察への対応に怒りを爆発させたウイグルの人々の抗議デモが暴動に発展し、200人近い死者が出た騒乱事件です。この背景には、ウイグル地方の貧困やウイグル出身の出稼ぎ労働者に対する根深い差別構造があるとされました。それ以降も毎年、深刻な爆破事件や警察襲撃事件などが継続して起こっており、対応が迫られていました。
 第二は、貧困と差別につけ込んだテロ勧誘の危険です。5000人とも言われるウイグル人戦闘員が 2013 年以来シリアでの武装活動を行っていましたが、シリア現地の戦況の悪化(アサド政権の攻勢)と共に中国に戻り、中国でテロ活動を活発化させました。イスラム原理主義武装組織ETIMやISISらはシリアから追い出された次の活動地域をウイグル地域にシフトしようとしたのです。
このような動きに対応し、中国政府は2014年以降イスラム武装勢力に対する取り締まりと再教育を本格化させてきました。「強制収容所」と喧伝されているものは、武装・テロ活動から抜けだすために様々な職業教育を行う「職業訓練所」として運営されてきたものです。それはまた、貧困と差別を克服するための学校でもありました。
 「世界ウイグル会議」の人々はイスラム原理主義と通じた人達です。中国政府の対応はこれに対する防衛措置です。米国や西側諸国に扇動された中国国内でのテロ活動という真の姿を見なければなりません。
China detaining millions of Uyghurs? Serious problems with claims by US-backed NGO and far-right researcher 'led by God' against Beijing(The Grayzone)

 もう一つ付け加えれば、西側のメディアではあたかも“漢族の中国政府によるウイグル族の新疆地区への弾圧”のように描かれていますが、新疆ウイグル自治区はウイグル人だけが住んでいるのではありません。ウイグル族47%、漢族38%、カザフ族7%、回族5%(2011年)とウイグル族は多数民族ではあるものの、過半には至りません。多数の“国家級貧困県”を要する辺境の自治区に対する貧困脱却のための経済政策という性格が基本なのです。
 2015 年以降は中国でのテロ攻撃はほとんど発生していません。監視・治安活動と再教育活動が功を奏したと見ることができます。米国をはじめとする西側諸国は、新疆ウイグル自治区でのテロ活動が不発に終わったことから、「中国政府による弾圧」「拘束施設」のプロパガンダに打って出たのです。

自民党極右勢力が宣伝
 日本のウイグル支援団体も保守・右翼系勢力と一体です。戦前から伝統右翼勢力、『日本文化チャンネル桜』のようなネット右翼勢力、宗教保守の新宗教団体が参加しています。「世界ウイグル会議を応援する日本人の会」には、平沼赳夫・石原慎太郎・加瀬英明・藤井厳喜ら極右保守の大物が並んでいます。最近では橋下徹も頻繁に取り上げています。
 2012年4月23日、日本ウイグル国会議員連盟が自民党本部で結成されました。日本の外務省、安倍晋三、黄文雄、三原順子、山谷えり子、古屋圭司、衛藤晟一、新藤義孝らが参加しました。これだけで、彼らウイグル人の主張の信頼度のなさが分かります。
 香港、ウイグルなどを口実に中国への内政干渉を公然と叫ぶ超党派の「対中政策に関する国会議員連盟(JPAC)」の呼び掛け人は、中谷元・元防衛相です。彼は今、敵基地攻撃能力問題で自民党の先頭に立っています。「人権」と中国への先制攻撃態勢整備は一体のものなのです。
日本で「ウイグル問題を報じづらい」3つの深刻な理由 右翼勢力の影響が強すぎる在日ウイグル人民族運動(文春オンライン)

日本のメディアも追随 モスクの観光利用を「破壊」と表現
 前出のオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は、同じく衛星写真をもとにモスクなどの宗教施設が破壊され信徒が弾圧されているとの報告書を出しました。中国の国旗を付けた重機がモスクを壊していくイラストを掲載しています。
Tracing the destruction of Uyghur and Islamic spaces in Xinjiang(ASPI)

 日本でも朝日新聞がこれに追随し、直接ウイグル地区に入り、記者がモスクが破壊された実態を確認したと報じました。
壊されるウイグルのモスク カフェに改装、寝転ぶ観光客(朝日新聞)

 しかし朝日の記事をよく読むと、「破壊」「取り壊し」というイメージではなく、一部が改築・改装されてカフェや休憩所、レストランなどとして利用されているということのようです。経済活性化のため旧市街が国家指定の重点観光地となり、観光用の町並みの整備が進んでいるのです。また一部のモスク閉鎖の理由がテロリストの拠点の隠れ蓑になるのを防ぐためということも示唆されています。
 私たちは、社会主義中国の宗教政策について安易に判断することはできません。観光資源としてモスクを改築することの是非は議論の余地があると思います。伝統的な教徒の意識との軋轢が生まれることも十分想像されます。しかし、日本でも欧州でも、宗教施設(教会、修道院、寺、神社など)を観光目的で改築・改装することは普通に行われています。それを「教会を破壊している」とは言いません。少なくとも「中国政府が宗教を弾圧しモスクを次々と閉鎖・破壊している」というのは、悪意のあるデマであることは確認できるでしょう。
 批判されるべきは、朝日新聞の記事の編集です。オーストラリアの研究所の情報に飛びつき、「色眼鏡」をかけて現地に入り、「ブルドーザーで壊しているモスク」の情報を拾おうとしたが、レストラン、カフェ、休憩所といった全く次元の違う情報しかとれず、無理矢理その写真や情報を「壊されるモスク」との見出しで報じたのです。意図的に事実に反する記事を流し、反中プロパガンダの先棒を担いでいると言わざるを得ません。

民族性を守りながら貧困・格差を解消することが最重要課題
 中国政府は「新疆関連の問題は一部の勢力が鼓吹する人権、民族、宗教問題では全くなく、テロ対策と分離主義取締りの問題だ」と主張しています。
 「厳しい暴力テロ情勢を前に、中国政府は新疆で一連のテロ対策と脱過激化の措置を講じた。こうした措置は成果が著しく、新疆ではすでに3年以上続けて暴力テロ事件が発生せず、生命権、健康権、発展権など新疆各族人民の諸権利は力強く保障されるようになった。中国が世界の人権事業とテロ対策事業に積極的な貢献をしたことを国際社会は一致して認めている」と。
外交部、米国の新疆ウイグル自治区問題干渉に断固反撃する(人民網)
新疆問題を利用して中国のイメージを悪くする少数の西側国の企ては再び失敗(人民網)
ウイグル問題 書簡の攻防 60ヵ国国連人権理に提出(西日本新聞)

 ここにきて、「ウイグル人の強制労働」キャンペーンが大々的に行われるようになっています。中国各地でウイグル人の強制労働を下請けで使っているとして、世界の企業が名指しされ、日本でもパナソニック、ユニクロ、無印良品など12社がやり玉に挙がっているのです。これを主導しているのも先述のオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)です。米は、高品質で世界的にも需要の高い新疆綿の輸入の中止に踏み切ろうとしています。
 ウイグル人の「強制労働」を止めさせるキャンペーンは、詰まるところ下請け企業などからウイグル人を解雇することにつながり、職業訓練→雇用→生活安定のサイクルで貧困や差別を解消しようという中国政府の政策に真っ向から反するものです。彼らは「ウイグル人の人権を守る」といいながら、実際には、ウイグル人が働く場所を無くして貧困や差別を助長し、不安定化をもたらそうとしているのです。許し難いことです。
米、新疆綿の輸入阻止へ 「奴隷労働で生産」と断定(AFP)

 1949年の中国革命において、新疆地区を支配下に置いた中国人民解放軍は、再び帝国主義の植民地として分割されることを防ぐために、中華人民共和国に編入しました。しかし、民族性の違いなどから分離独立の機運が高いことなどを配慮し55年に自治区として承認しました。こうした経緯から、確かに新疆ウイグル自治区で、漢民族とウイグル民族との摩擦や対立が根強くありました。ただそれは民族の違いを根拠とするいがみ合いや遺恨というのではなく、貧困や経済的格差に根ざすものでした。中国の党・国家は、新疆ウイグル自治区の経済的後進性と地域間格差を解消し、貧困問題や民族間摩擦を克服するよう全力を挙げてきました。執拗なテロ活動やプロパガンダは、まさにこのような新疆ウイグル自治区の発展に対する妨害活動なのです。そして米国は、中国=少数民族を弾圧する独裁国家として描き出し、多くの国が中国から政治的・経済的に離反するようし向けようとしているのです。
 米欧日の先進資本主義国こそが、「イスラム教徒」を十把一絡げで「テロリスト」視し、差別・弾圧し、さらにはアフガニスタン、イラク、リビアのように国家そのものを破壊することさえしてきました。そうした行為を棚に上げて、中国の対イスラム政策を、虚偽に基づいて声高に批判するなど許されないと私たちは考えます。

2020年12月29日
リブ・イン・ピース☆9+25