シリーズ『冬の兵士――良心の告発』を観る
「ウィンターソルジャーの証言を検証し分析するのはこれからの課題だ」
<冬の兵士序章(動画)>

はじめに
 このシリーズは、『冬の兵士――良心の告発』の場面や証言、見た人からの感想などを元に、この映画が問題提起しているものをさまざまな角度から捉えようとするものです。
 『冬の兵士』はジャーナリストの田保寿一さんが、イラク戦争の本質を検証するために、2008年3月にワシントンDCで行われたイラク帰還兵による証言集会・ウィンターソルジャーでの証言と独自に行った取材をもとに編集し、自らナレーションをおこなって作り上げたドキュメンタリー映画です。映画は3つの章に分かれています。第一章・戦闘モラルの崩壊、第二章・銃口の先に見たもの、最終章・軍隊という監獄。この公聴会での帰還兵らの証言の映像に、田保さんがイラクで撮影した映像を加えながら、1時間15分の短編の映画に仕上げています。このわずかな時間にイラク戦争の全体が凝縮されているといってもいいでしょう。公聴会だけでも50時間という膨大な資料映像をわずか1時間強に凝縮したのは、出来る限り容易に見られるようにし、米国で起こっている変化を多くの人たちに伝えたいという思いからだと思います。田保さんは、イラク帰還兵が戦争のただ中に戦争犯罪を告発し始めたことに大きな局面の変化を感じたと言います。実際、米国ではオバマ大統領が大統領に就任し、イラクからの撤退を表明せざるを得なくなりました。しかしそれは極めて欺瞞的なものです。この映画で表現されている戦争の苦しみはイラク、アフガンで今も続き今後も続いていきます。『冬の兵士――良心の告発』はますます意義を高めていると思います。
 登場するどの兵士も誠実で、真剣な告発を行っており、すべての証言と映像が強い印象を与えます。そして問題は多岐にわたっています。田保さんは、DVDの冊子の中で次のように語っています。「彼らの証言を正しく理解することは、困難で作業がなかなか進まなかった」「ウィンターソルジャーの証言を検証し分析するのはこれからの課題だ。私も、その意味の解読に参加したいと思う」。私たちは、この言葉を、戦争での人殺しを強制されその経験と記憶にさいなまれている人々の苦しみを、その渦中にない者たちが簡単には理解することはできないという意味だと捉えました。しかしその苦しみを、またそれを告発する意義を人々が理解しようとし、諸個人の苦しみにとどまらず時代の苦しみと感じ始めた時に、事態は大きく転換していくのではないかとも思いました。私たちもまたささやかながら”解読に参加”していきたいと思います。米国のイラク、アフガニスタン侵略戦争に加担しているこの日本で、多くの人たちにこの映画が観られ、議論が広がっていくことを願います。シリーズ「『冬の兵士――良心の告発』を観る」がその一助となればと思います。観られた方からの投稿も大歓迎です。

2009年3月7日
リブ・イン・ピース☆9+25

『冬の兵士――良心の告発』ホームページには、登場人物の情報やシナリオなどが掲載され、映画がより理解しやすくなっています。
『冬の兵士――良心の告発』ホームページ
冬の兵士の登場人物
冬の兵士シナリオ
冬の兵士プログラム
[速報]3.22イラク戦争開戦6周年 映画&講演会 「冬の兵士が語る『対テロ戦争』の真実」 米帰還兵の勇気ある告発と田保さんのジャーナリスト魂に感涙


『冬の兵士――良心の告発』を観る(その1)
――市民の無差別殺りく、敵の非人間化による殺人洗脳、帰還兵の精神疾患、軍隊の監獄化等を帰還兵の証言で生々しく告発


『冬の兵士――良心の告発』を観る(その2)
「アルカーイダは、アメリカ人を怖がらせる亡霊のひとつだ」


『冬の兵士――良心の告発』を観る(その3)
「ファルージャの西、ユーフラテス川北の橋で、男は14歳未満でないと出さないと決めたので、男達を追い返しているところです」


『冬の兵士――良心の告発』を観る(その4)
「戦争はこの国の一つの世代をまるごと非人間化し、イラクをまるごと破壊した」


『冬の兵士――良心の告発』を観る(その5)
「人間は撃ちつくしたから、犬や猫や鶏など動くものは何でも撃った。」
「我々に食料を持ってきた女性を粉々にしたのです。」
「母親、父親、子供二人を殺し、男の子は4才、女の子は3才でした。」


『冬の兵士――良心の告発』を観る(その6)
偽装工作「爆弾を埋めるために使われるシャベルを持っていき、市民を間違って射殺した時、それを死体の上に置けば、武装勢力だったと言える」

シリーズ『冬の兵士――良心の告発』を観る(その7)
PTSDとTBIの深刻な被害――「怒りの発作が起きて、仕事が続かない・・・車にいるときに、路上の人を銃撃する幻覚を見る・・・毎日死ぬことばかり考えていた」


シリーズ『冬の兵士――良心の告発』を観る(その8)
「私は、国旗を逆さまにしている。なぜならアメリカは今、国難に遭遇しているからだ、しかし、我々は、まだアメリカを愛している。」