シリーズ『冬の兵士――良心の告発』を観る(その1)
――市民の無差別殺りく、敵の非人間化による殺人洗脳、帰還兵の精神疾患、
軍隊の監獄化等を帰還兵の証言と映像で生々しく告発

 アメリカ合衆国の公文書館。イラク戦争開戦5年目の3月19日、イラクから帰還した兵士達が、デモ行進してやってきます。「戦争をやめよう、今すぐに!」 「アメリカよ、目を覚ませ!」と。
デモをしているのは反戦イラク帰還兵の会のメンバーです。彼等はこのデモを行う前、2008年3月13日〜16日まで、厳しい冬の時代に戦う兵士という意味のウィンターソルジャーと名づけた集会を開催し、戦争の体験・イラク占領の本当の姿を証言しました。

ワシントンDC郊外の全米労働大学での証言集会
 集会の最初は、戦闘モラルの崩壊についての証言が続きます。アダム・コケシュはファルージャを包囲した時、交戦規定は下着を変えるよりも頻繁に変わったといいます。別の人びとは“振り向くたびに交戦規定がかわった”“交戦規定は冗談か、方便のよう”等々と訴えました。
 彼等はモラルがなくなった、恥を知るべきだといいます。彼等はこみ上げてくる感情に中断されそうになりながらも、力をこめて、戦場の真実の姿を証言しました。交戦規定の問題では15人の帰還兵が証言し、イラク市民を無差別に殺害している事実を公表しました。

証言集会・ウィンターソルジャー3日目
 「差別と戦争、敵を非人間化する」というテーマで証言が行われました。ジェフ・ミラードはいいます。自分達以外の人間を「ハッジ」=軽蔑すべきものと呼んだ、こんな人種差別と非人間化が、戦争の最高司令官にはじまり、最下層の兵士まで浸透していると。別の人はいいます、戦争を正当化するために、相手国の市民を人間でないものと思わなければならない、今、アメリカでは「テロリスト」が人間でないものだ、米軍は市民を殺している、私には「テロリスト」と軍隊の違いがわからないと。カルロス・ハリスはいいます、米軍はイラクの市民と戦っていると。

証言集会・ウィンターソルジャー最終日
 軍隊という監獄、軍の瓦解というテーマでの証言が行われました。ゴールド・スミスはサドルシティに派兵されていました。占領に反対する運動が最も激しい地区のひとつです。イラクから帰国後、酒を飲み続けました。大学にいくことだけが希望でしたが、増派要員確保政策で拘束されました。彼は絶望から自殺をはかり、処分として大学給付金を受けられなくなりました。彼は今ピザの配達員をしてなんとか食いつないでいます。
 再び、反戦イラク帰還兵の会のメンバーのデモ行進の場面に移ります。ホワイトハウス前でのデモ行進の歌「反戦イラク帰還兵の会が、何でデモしているかわかるかい。我々の兵隊を帰国させるためだ。血も油ももうたくさんだ。」
 反戦イラク帰還兵の会は、占領軍のイラクからの即時撤退、イラクへの賠償、帰還兵への福祉の実現をめざし闘いを広げていこうとしています。

 彼らの証言は映像の中で彼らが語ることによってしか伝えられないと思いますが、田保氏のファルージャとサドルシティの取材映像が証言を裏付ける重要な役割をはたしています。
 現在、アメリカではオバマ政権が、イラクからの撤退政策を出す一方で、アフガニスタンへの増派政策・同盟国への協力要請策をだしています。日本は戦後60年以上がたっているのに、加害責任を明確にし、謝罪するということさえ出来ていません。この作品は米国に住む人たちにとってだけでなく、日本の私たちにもとって重大な問題提起をしていると思います。

2009年3月7日
リブ・イン・ピース☆9+25

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