パレスチナ連帯シリーズ(その1)
日本政府は、ハマスへの経済制裁をやめよ
ハマスはテロ組織ではない

「ハマス=テロ組織」論は、イスラエルの大量虐殺を支持すること
 日本政府は、ハマスに対する経済制裁をする方針を打ち出しました。幹部や資産取引所を狙い撃ちにしハマスの資金源を断つというのです。31日にも閣議決定しようとしています。絶対に許されません。
日本政府 ハマス幹部ら9人の資産凍結など制裁の方向で最終調整(NHK)

 この制裁の根拠になるのが、政府による2つの立場、「イスラエルには自衛権がある」と「ハマスのテロ非難」です。これは、米国が主導するG6(米国、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ)が10月22日に出した声明に合わせるもので、イスラエルの進行中のガザ空爆、地上侵攻によるパレスチナ人大量虐殺を支持し、加担することに他なりません。
米など6か国首脳 イスラエル支持表明 国際人道法の順守求める(NHK)

 しかし、ハマスはテロ組織ではありません。ガザ地区で自治政府の政権を担う組織であり、占領者イスラエルへの抵抗闘争です。
 「ハマス=テロ組織」論は、メディアや言論世界でも、イスラエルの大量虐殺を支持するキーワードであることに注意する必要があります。

10月7日の攻撃は「テロ」ではなく、占領への抵抗闘争
 10月7日のイスラエルへの攻撃は、ハマス単独のテロ活動などではありません。周到に準備された大規模で組織的な軍事作戦であり、ハマスのほかイスラム聖戦、DFLP(パレスチナ解放民主戦線)、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)などの他の多くの抵抗勢力が参加しました。しかもヨルダン川西岸のパレスチナ解放機構に属する左派勢力・抵抗勢力なども全面的に支持しています。イスラエルに対するパレスチナ民衆の闘いです。
Al-Aqsa Flood: Imperialism, Zionism, and Reactionism in the 21st Century(Orinoco Tribune)

 すでに米国は金融制裁を発動し、慈善団体や事業所などを次々と制裁対象に加えています。日本の動きは、これら米国の行動に追随するものです。イスラエルがこれまで行ってきたパレスチナに対する占領、侵略、虐殺などの歴史を無視して、イスラエルを支持しパレスチナの抵抗闘争を貶める策動は許されません。ハマスに対する経済制裁をやってはなりません。
US Deploys Fresh Sanctions Targeting Hamas’ Fundraising Efforts (Bloomberg)

パレスチナ議会選挙で多数派となったハマス
 ハマス(イスラム抵抗運動)はパレスチナ議会で選出された多数派組織です。2006年のパレスチナ議会選挙で、ハマスはヨルダン川西岸、ガザ地区双方で過半数を獲得し、「パレスチナ自治政府」で多数派となりました。「ハマス政権」が誕生しました。この事実は今も生きています。
 この事態に危機感を持った米国とイスラエルがハマスと、米・イスラエルに融和的なファタハ(パレスチナ民族解放運動)との対立と内戦をあおり、ハマス議員の不当逮捕や追放を行った結果、ヨルダン川西岸ではファタハが選挙結果を覆して政権に居座り続けました。その結果、ヨルダン川西岸ではファタハが、ガザ地区ではハマスがパレスチナ自治政府として「分割統治」していることになっています。すなわち、イスラエルや米国の後押しを受けてパレスチナ議会選挙の結果を覆して政権にしがみついているのはファタハなのです。ハマスは正当な多数派の指示を受けたパレスチナ自治政府なのです。現在議会は実質停止状態に追い込まれていますが、ハマスを「ガザを実効支配している」などと施政根拠がないかのように言うのは全くの誤りです。
反占領・平和レポート NO.59 ハマス=「テロ組織」の虚像を垂れ流すマス・メディアと西側諸国を批判する(リブ・イン・ピース☆9+25)

 ガザ地区では、ハマスは軍事組織だけでなく、食料の配給や医療、教育、福祉などの行政機能を維持していますが、自治政府として当然のことなのです。そしてパレスチナを解放し自治国家を樹立するために、占領者であるイスラエルに対して抵抗闘争を主導することは、自治政府の当然の役割です。 

真の「パレスチナ自治政府」をつくるための闘い
 改めて「パレスチナ自治政府」とは何かを見ておく必要があります。「パレスチナ自治政府」は94年オスロ合意によって、パレスチナ側がイスラエルを承認することを条件に、ヨルダン川西岸とガザ地区を中心にパレスチナ人の「自治国家」政府として成立しました。しかし、イスラエルは、パレスチナ難民の帰還権、国境管理、水利権、イスラエルの入植地からの撤退などを全く認めず、自治国家として不可欠な保障をまったく置き去りにした名目だけの「自治政府」にしました。依然イスラエルの管理下におかれ、包囲・浸食され、生活と生存の権利全体がイスラエルに握られたまま、「自治」の称号だけが与えられただけです。パレスチナ人は何一つ自由にできないだけでなく、生活は一層悪化しました。
 事実上のパレスチナの占領・植民地状態を永続化するこの体制に対して、2000年代に入り、大衆的な抵抗闘争(インティファーダ)が起こりますが、これを主導したのがハマスでした。ハマスは欺瞞的なオスロ合意に当初から反対し、真のパレスチナ国家の樹立を要求しました。2006年議会選挙でのハマスの圧勝は、このような闘いの結果です。
Hamas has upended the status quo(Electronic Intifada)
反占領・平和レポート NO.30 イスラエル型アパルトヘイト体制=“陸の孤島”への「ロードマップ」(アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局)

2007年からのガザ封鎖は、ハマス勝利への報復
 2007年からはじまったガザ地区の完全封鎖――高いコンクリート壁とフェンスで完全に囲い、海岸線も監視して漁さえ自由にできないようにし、「屋根のない監獄」「強制収容所」にしたのは、2006年の選挙に勝利した「ハマス政権」に対する見せしめと報復なのです。
反占領・平和レポート NO.57 ガザ地区150万人の生存まで脅かす封鎖を即刻解除せよ(リブ・イン・ピース☆9+25)

 イスラエルは「芝刈り」と称してことあるごとにガザに空爆を加えて多数のパレスチナ人を殺害してきました。常習的に、パレスチナ住民を殺戮し、虐待し、逮捕・投獄し、拷問し、暴虐の限りを尽くしてきまし。食料、水、電気、燃料など生活に必要な物資すべてを管理し、生きる力を奪ってきました。08年から23年夏までの15年間で殺されたパレスチナ人は6500人に上っていますが、そのうち5000人、実に8割近くがガザの人々です。

ハマスへの制裁は、パレスチナの人々の抵抗闘争を踏みにじるもの
 ハマスは、パレスチナの土地の奪還と人権保護を目的とした抵抗組織であり、大多数のパレスチナ人の願いとかけ離れた要求しているわけではありません。ハマスは2014年7月、ガザに地上侵攻したイスラエル軍との戦闘の最中、以下の10項目を停戦条件として提示しました。@イスラエル軍のガザからの撤退、A集団懲罰の全囚人を解放、B封鎖解除と通過ゲートの国際管理、C港と空港を国連管理下で再開、D耕作地と漁場の拡大、Eラファー・ゲートの国連・アラブ管理、E10年間休戦とイスラエル航空機の進入禁止、Gガザ住民がエルサレムのアクサーモスクで礼拝できること、Hパレスチナ人の政治にイスラエル不干渉、I工業地区再開。どれも戦争や侵略者のいない場所で平和な暮らしがしたいという基本的な願いです。
BDS Japan Bulletin #パレスチナ連帯 #イスラエル・ボイコットのTwitterより

 ハマスをテロ組織と指定しているのは、米国、イスラエル、欧州諸国、そして日本など一部の国に過ぎません。多くの国は当然テロ組織とはみなしていません。2018年12月のハマスに対するテロ組織としての非難決議も国連総会で通過できませんでした。ハマスをテロ組織として経済制裁を加えることは、イスラエルが建国以来行ってきたパレスチナに対する蛮行を支持することになります。ネタニヤフ政権で加速する大虐殺、民族浄化を認めることになります。パレスチナの人々の抵抗と闘争の権利を奪うことになります。
 日本政府は、ハマスへの経済制裁をやめろ。イスラエル支持をやめ、ガザ侵攻・空爆の即時中止を要求しろ。日本政府は即時停戦を要求せよ。

2023年10月30日
リブ・イン・ピース☆9+25

 パレスチナ連帯シリーズ開始にあたって(記事一覧)