[紹介]06年1月ハマス圧勝を封殺する国連・欧米諸国の不条理を描く
ガザ ハマスと人々の6ヶ月
NHK BS世界のドキュメンタリー“シリーズ パレスチナとイスラエル”
(2006年8月5放送 2009年2月10日再放送)

 2006年1月、民主的な評議会選挙の末、ハマスが勝利した。それはハマス自身の予想をも超えた圧勝だった。イスラエルに妥協的で外国からの支援を利権化し腐敗したファタハは、パレスチナ人民から見限られたのである。選挙は10年ぶりであり、欧米諸国からの要求に応じたものであった。ところが、欧米諸国や国連は、いざハマスが勝利してしまうと手のひらを返したようにハマスたたきをはじめた。パレスチナへの支援を停止したばかりか、イスラエルがパレスチナを経済封鎖しても、空爆してパレスチナの子供や女性などを虐殺しても黙って見ている。ハマスとそれを支持するパレスチナ人民がイスラエルに抵抗することを止めないからである。
 ガザ地区最大の公立シファ病院の医師アーデル・モルタジャさんは、ファタハの政権に近い人たちだけが富んでいく事に疑問を感じハマスに投票した。「新しい政権ができて、よりよい時代が来ることを望んだのです。」モルタジャさんの妻ワファさんは「私たちは選挙を行い、民主主義を実行したのです。その選挙結果を世界はひっくり返そうとしています。その上、みんなが頼りにしてきた支援をカットするなんてとんでもないことです。私たちパレスチナ人には大きな打撃です。」と憤って語る。
 ハマスがファタハから引き継いだ政府の財政は既に破綻状態だった。それどころか借金だらけだった。自治政府の予算はおよそ20億ドル。半分以上はイスラエルが代理で徴収する税金と外国の支援によるもので、イスラエルの経済制裁と欧米諸国の支援停止で財政運営は完全に行き詰まった。ハマスは住民に募金を求めた。多くの人たちがハマスの政府を支援した。ハマスとは、イスラム抵抗運動の意味で、パレスチナの土地を奪ったイスラエルに抵抗し、いつかは故郷に帰ることを夢見るパレスチナ人民の悲願を実現しようとしている。
 その頃イスラエルではオルメルトが新首相となった。オルメルトはパレスチナを一方的に分離する総延長700キロの壁建設を進めた。ハマスとの話し合いを拒否し、パレスチナとの国境を一方的にイスラエルの都合の良いように確定するためである。また、イスラエルはパレスチナの検問を強化し、パレスチナの農産物の輸出を妨害、重病のパレスチナ人の移動を制限した。きゅうりやいちご、トマトなど農産物が輸出出来ずに廃棄されていく。封鎖とは、単に食糧や生活物資が入ってこないだけではない。あらゆる経済活動や生活を締め上げるものだとわかる。経済制裁で医療が満足に受けることができなくなった透析患者は死んでいった。
 ハマスは組織の中に軍事部門を持っているが、政府に参加すると共にイスラエルへの攻撃は自粛していた。しかし、二つの事件が事態を変えてしまう。イスラエルがハマスの治安部隊のトップ、アブサム・ハダナ氏を暗殺し、子供を含む市民を爆殺したのである。ハマスは武力による報復を余儀なくされた。イスラエルはハマスの攻撃を待っていたかのように大規模な空爆を行い、ガザの発電所や橋などを破壊した。
 モルタジャさんは「ハマスが選挙で選ばれてから私たちはつらい苦しみを味わってきました。しかし、それは目標に到達するためなのです。」「我々は苦しんでいます。しかしいつか自由と独立を勝ち取れる。私はそう思いたいのです。」と語っている。
 ハマスとイスラエルのどちらが暴力的なのかはこの番組を見るだけで充分に分かるだろう。
 番組は、イスラエルが半年間で150人ものパレスチナ人を殺害し、さらにレバノンに対しても侵略を開始したことを伝えて終わっている。

2009年3月7日
リブ・イン・ピース☆9+25

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