シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.52) 日中国交正常化50周年を平和と友好の出発点に(下)
中国との平和共存政策への転換に必要なことは?

日本の戦争準備をやめさせること
 日本が米の仕掛ける「台湾有事」に全面加担し、日米共同作戦計画で対中戦争準備で突き進むならば、日米と中国との間の軍事的政治的緊張は一気に高まります。このままでは本当に戦争になるでしょう。これは何としても食い止めなければなりません。
 対中戦争を阻止するためには、何よりもまず日本の軍事外交政策を変えなければなりません。中国敵視・対中包囲の軍事外交政策を、中国との平和共存、真の友好・協力へと進む政策へと根本的に転換させる必要があります。しかしそのためには何が必要でしょうか?
 まず第1に、米日が一体となった対中戦争準備の危険性と切迫性を暴き出し、広く知らせていくことです。実際に「台湾有事」になれば南西諸島の島々が対中攻撃拠点になります。米軍は後方に退いて自衛隊に戦わせ、結局住民が被害を受けること、「戦争法」による「事態認定」で日本全土が自動的に戦争に巻き込まれること、等々。米バイデン政権の危険で陰湿な目論見、「台湾有事は日本有事」などと敵基地攻撃能力を獲得し、対中軍備増強を進める岸田政権が戦争の危険性を格段に高めていることを訴えて行くことが必要です。
 第2に、日中共同声明の原点に立ち返り、「一つの中国」原則と侵略戦争に対する反省、さらに日中平和友好条約の「武力や武力による威嚇に訴えない平和的解決」を武器に、岸田政権に中国との平和共存と友好協力を迫っていくことです。
 第3は、反中・嫌中イデオロギーとの闘いです。新疆ウイグルの「人権抑圧」、「尖閣諸島は固有の領土」、中国の「債務の罠」など、繰り返される中国敵視プロパガンダに対して具体的な事実で反論し、分かりやすく説明する説得活動を強めましょう。

日本の侵略戦争と植民地支配の歴史を知り自覚すること
 しかし、それだけではまだ不十分です。何故なら、あらゆるメディアが連日連夜、執拗に「中国脅威論」を洪水のように垂れ流し、中国に対する嫌悪・侮蔑・敵視・恐怖・不信・嫉みなどの感情、イデオロギーを人民大衆に刷り込んでいるからです。世界19ヵ国の世論調査によれば、「中国;好ましくない」の割合は87%と世界で最も高い(米ピュー・リサーチ・センター今年1~6月調査)のです。
 日本の人民は何故、中国に対する誤った認識を持つようになったのでしょうか? 差別・偏見に取り憑かれているのは何故か? どうすれば、これを克服できるのでしょうか?
 重要な要因として、かつての天皇制日本による侵略戦争と植民地支配に対する反省の欠如があります。このことが、今日の中国と中国人を見下す差別的・排外主義的意識を再生産する原因の1つとなっています。私たちは、中国が歴史的に被ってきた侵略と植民地支配、帝国主義的介入による苦難、それが社会主義的発展に大きな困難を強いたこと、今日に至るまで中国人民に甚大な影響を及ぼしていることをあまりに知らなさすぎます。過去のことと済ますことは許されないのです。国交正常化50年にあたり、中国メディアは繰り返し日本の侵略戦争の反省が不徹底だと指摘し、改憲・軍拡策動に対して警鐘を鳴らしました。日中共同声明で中国は賠償請求を放棄しましたが、それは決して日本の戦争犯罪を不問に付したのではありません。共同声明発表後、周恩来が「未来のために過去を忘れるな」と語ったことを、今こそ思い起こさなければなりません。
 日本で活動する私たちは、抑圧民族としての自己批判を片時も忘れてはなりません。もう一度、アジアの近現代史、日本帝国主義と米・西側帝国主義の侵略的本質、植民地主義的本質を学び直し、深く知る努力を続けることが大切です。そうすれば現在の中国の真の姿を捉えることができるでしょう。

日中経済関係の強さからも平和共存が必要
 中国と西側諸国、資本主義諸国の間には、平和共存の経済的・物的基礎が形成されています。かつての米ソ冷戦時代、ソ連社会主義と西側資本主義との経済・貿易関係がほとんど分離されていた時代とは根本的に異なります。とくに日中経済は緊密に結びついていて簡単には切断できません。日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、中国にとっても日本は米国に次ぐ第2の位置を占めています。日本の貿易赤字は今年8月に過去最高、13ヶ月連続の赤字で長期的・構造的衰退が顕著になりましたが、その中で中国への依存度が急速に高まっています。とくに半導体と関連材料、電子部品、設備等は日本の輸出の原動力となってきましたが、中国の製造業と市場への依存度を高めています。さらに自動車産業では直接投資と生産における部品供給において対中依存が顕著に進んでいます。このような状況で、日本が米国に付き従って対中戦争の先兵の道を進み、経済面で中国排除に動けば、中国政府の非難を浴びるだけでなく、自国経済を一気に衰退させることになるでしょう。
 日本の財界は、経団連等の主催で日中国交正常化50周年記念レセプションを開催しました。しかし結局、岸田首相は出席しませんでした。政治の側は明らかに対決に舵を切っているのです。財界人の中でも戦争体験者は皆無に近くなっています。財界の中で対中対決に進む政府を公然と批判する動きはまだありません。しかし、日本の対中対決と日中経済依存の矛盾は、いずれ必ず日本の政治経済全体を揺るがす大問題となる時が来るでしょう。
 日中経済関係の緊密化と矛盾は、それだけで自動的に対中戦争準備を押しとどめることはできません。とくに岸田政権が対中対決姿勢をエスカレートさせている下では、それに反対する大衆的な世論と運動の力が不可欠です。日本の人民運動が岸田政権の中国敵視政策と闘い続け、政府・支配層に対中平和共存と相互協力への転換を迫り、これが世論へと高まっていくならば、政府の反中政策と日中経済関係との矛盾を拡大し、平和共存と真の友好協力への道を切り開くことができるに違いありません。 

中国の歴史や文化などへの理解を深め、絶対に戦争を引き起こさない世論を
 他方で、反中・嫌中意識の蔓延とはまた別の現実があることにも注目したいのです。いま若い世代を中心に、中国のITと最先端技術、言語、文化、歴史、ドラマ、食、スポーツ、ファッション、自然など、多くの分野で関心と親近感が高まりつつあります。日中の学生交流も日中友好活動の重要な一環として相互理解を深める重要な役割を果たしています。世論調査では、中国に「親しみを感じる」割合は、全年代平均20・6%(60代は13・4%、70代以上13・2%)に対して18~29歳では41・6%と2倍を超えています(内閣府「外交に関する世論調査」2022年1月)。
若い世代ほど中国へ親近感 急激な経済成長、「怖い国」から変化(朝日新聞)
外交に関する世論調査(内閣府)

 日本と中国は動かすことが出来ない隣国です。日中間の2000年を超える交流の歴史、文字、宗教、習慣、文化など生活全般における緊密なつながりを踏まえれば、日中関係は平和共存と友好協力以外の選択肢はあり得ません。このことが広範な人々のあいだで理解され浸透していく土壌は着実に成熟しつつあります。
 絶対に対中戦争を引き起こしてはなりません。私たちは改めて、反戦平和運動の強化が必要と考えます。職場・地域・学園、労働組合、市民運動など各地の広範な現場から、「台湾有事」策動=対中参戦準備に反対する広範な世論と闘いを作り上げましょう。岸田政権に対し、対中戦争準備、中国敵視をやめ、平和共存政策に転換するよう要求しよう。統一教会問題の徹底追及、軍事費倍増反対、9条改憲阻止、雇用・労働・生活要求、消費税減税・廃止、原発再稼働反対と原発推進計画撤回、等々あらゆる運動の課題と結合して岸田政権を追いつめましょう。

2022年11月3日
リブ・イン・ピース☆9+25

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