ペロシ訪台で新たな段階に入った「台湾独立」=中国分裂策動 日中国交正常化50周年の9月29日を、私たちは米国が「台湾有事」で対中軍事挑発をエスカレートさせ、日本政府もまた米に全面加担して対中挑発と参戦準備を本格的に進め始める中で迎えました。 「台湾有事」策動は、米バイデン政権の対中軍事挑発、中国破壊活動の目下の集中点です。それはアジアと世界の平和に対する最大の脅威となっています。 重大な転換点となったのは、8月2日のペロシ米下院議長の訪台でした。それは、「台湾有事」をめぐる軍事的緊張と米中対立を一気に新しい危険な段階に引き上げました。バイデン政権は、台湾・沖縄近海に空母打撃群を配置してペロシ搭乗機を護衛し、中国に対して軍事的威嚇を行いました。メディアはほとんど報道しませんでしたが公然たる軍事挑発であり、一触即発の危険極まりない状況が作り出されました。中国側は自制しましたが、軍事演習や台湾への制裁で対抗措置をとりました。 米バイデン政権の異常なまでの好戦性、侵略性は驚くほどで、トランプ政権の比ではありません。バイデン政権はウクライナで「代理戦争」「ハイブリッド戦争」をエスカレートさせながら、「台湾有事」でも対中戦争挑発を加速させ、さらに「朝鮮半島有事」にまで手を出し始ています。米軍が3正面で戦争策動をエスカレートさせるのはかつてないことです。 米国の現在の最大の攻撃対象は、本来の主敵である社会主義中国に向けられています。ペロシ訪台だけでなく、南シナ海と台湾周辺での対中軍事威嚇・挑発を繰り返しています。9月2日には、対艦ミサイル、空対空ミサイルなど総額11億ドルにも上る台湾への武器売却を決定しました。ウクライナのように台湾にも武器をどんどん送り込もうというのです。米政府は、口先では「一つの中国」政策は守ると繰り返していますが、実際は全く正反対の政策で、「台湾独立」=中国分裂策動を強めています。これが台湾や南西諸島を取り巻く地域全体に軍事的緊張と政治的対立を作り出しているのです。 ※ペロシ米下院議長の台湾訪問を糾弾する(リブ・イン・ピース☆9+25) ※米、台湾に最大規模の武器売却へ 「ハープーン」など11億ドル相当(朝日新聞) ※中国 米の企業幹部に制裁と発表 台湾への武器売却決定受け(NHK) 台湾を事実上の独立国家として扱う台湾政策法案 さらに危険なのは、米議会で審議が始まった「台湾政策法案」です。9月14日には米下院外交委員会で可決されました。この法案は、①台湾を非NATOの同盟国並みに扱う、②他の外国政府と同様の外交待遇で外交特権を付与する、③軍事援助拡大、攻撃兵器の解禁、軍事同盟追求、④軍事費の大幅増額を要求、等々と事実上台湾「独立」を作り出し、中国国家を分裂させるに等しいものです。それは「独立台湾」を自衛隊の南西諸島の軍事要塞化と結合させ、「日米台同盟」を構築することも念頭に置いており、格段に戦争の危険性を高めます。この法案が可決されれば、「一つの中国」原則は根底から破壊され、対中戦争の危険は一気に高まります。とんでもない法案です。 ところが法案の内容は着々と実行に移されています。米国は台湾との外交関係を切断したはずですが、米台間では共同作戦計画が練られ、米軍特殊作戦部隊と海兵隊部隊の台湾軍との訓練がすでに行われています。台湾政策法はその制度化と公然化を狙うものです。 ※台湾有事を招きかねない米議会「台湾政策法案」、日本の最悪シナリオとは(ダイヤモンド) 米の「台湾有事」政策へ追随する岸田政権 岸田政権は、バイデン大統領の「台湾有事」策動と一体化してこれに全面的に加担する対中軍備の大増強を進め、日米共同作戦計画を具体化し始めています。防衛省は「敵基地攻撃能力」保有のために、長射程ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)1500発以上の大量配備(さらにはトマホークミサイル導入まで言い出しました)、総合ミサイル防空能力など軍事力の抜本的増強を計画し、来年度政府概算要求に計上しました。すでに政府は、「防衛力の5年以内の抜本的強化」(首相所信表明)方針に基づいて最終年度には年額11兆円を超える軍事費の2倍化、「防衛3文書」(国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防)の年内策定に動き始めています。 さらに2015年の安保関連法制(戦争法)が、「台湾有事」の際には日本が自動的に参戦する仕掛けとなること、その際、南西諸島が最重要の出撃拠点となることが明らかになっています。最近政府が発表した「台湾有事」を想定した南西諸島での「住民避難シェルター」の検討は、住民の命を守るためではなく、この戦争計画を進めるためのものです。南西諸島の軍事要塞化と辺野古基地建設強行は、沖縄と島嶼地域だけでなく日本全土を対中戦争に巻き込む危険性を高めています。 米国が主導し、日本政府が全面加担する「台湾有事」策動に断固反対し、自衛隊の対中戦争先兵化に反対する運動を作り上げていくことが日本の反戦運動の急務です。 ※米製トマホーク導入案浮上 反撃能力の整備念頭―政府(時事通信) 日中関係の対立と緊張を生み出したのは日米の側 日中関係はこの50年間で一変しました。日本国中が沸き立った半世紀前の日中友好、協力・連帯の雰囲気は完全に消え去りました。いまや日本政府は対中対決路線を鮮明にし、メディアは反中・嫌中プロパガンダを野放図に垂れ流しています。 9月29日の各紙社説は、今日の日中関係の緊張と困難を作り出したのが中国の「覇権主義」「一方的な現状変更」にあると断じています。読売や産経などの右翼・保守メディアだけではありません。朝日や毎日などもまた、表向きは友好を唱えながら、「巨大な隣国の危うさ」(朝日社説)などと中国に責任をなすりつける論を展開しました。 政府とメディアだけではありません。野党を含む議会政党の圧倒的部分が「中国脅威論」を振りまき、中国敵視ではほぼ完全な翼賛体制がつくられました。とりわけ日本共産党は、中国の「覇権主義」「人権侵害」批判を前面に押し出し、米国と日本の対中包囲・中国敵視の軍備増強に対する批判を行うことさえしませんでした。こうして助長される「中国脅威論」が、日本の人民の批判的意識を骨抜きにし、差別・排外主義を植え付けており、政府がこれをテコにして対中戦争準備・軍備増強を強引に推し進めていることに危機感を抱かずにはいられません。 現在の日中間のあつれきと緊張を作り出しているのは誰か?「一方的現状変更」を行っているのは中国か? メディアが垂れ流す「中国の脅威」は事実なのか? 結論を先取りすれば、これらはすべてウソ、デタラメです。日中関係に緊張を持ちこんでいるのは中国ではありません。米日の側です。米バイデン政権と岸田政権こそが、「力による一方的現状変更」の張本人です。このことを繰り返し暴き出していくことが必要です。 ※本シリーズ (No.3) 南シナ海領有権争いを煽っているのは米国 中国ら当事国は平和的解決を模索(リブ・イン・ピース☆9+25) 日中共同声明の原点に立ち返るべき 日本政府こそ、日中共同声明(1972年)の原点に立ち返るべきです。私たちは、日中両国が国交正常化の出発点で確認した諸原則、とくに侵略戦争の反省と「一つの中国」の原則こそが国交正常化の大前提であり、日中関係の基礎であることを確認しなければなりません。 まず第1に歴史認識と侵略戦争についての反省です。「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」(共同声明前文)ことです。 第2は、「一つの中国」原則の確認です。日本政府は、中華人民共和国を唯一合法政府として認めました。同時に日華平和条約が存続の意義を失ったと表明して、台湾と断交したのです。 第3は、中国の日本に対する戦争賠償請求権の放棄です。 第4に、平和共存5原則(主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和共存)および「紛争の平和的解決」「武力・武力による威嚇に訴えないこと」の確認。 第5に、釣魚島(尖閣諸島)問題の「棚上げ」合意。国交正常化交渉に伴う対話の中で、「紛争棚上げ」は両国指導者間の黙契でした。このことは日中平和友好条約時にも確認されました。 共同声明に明記されているように、天皇制日本帝国主義の戦争責任に対する痛切な反省なしに日中国交正常化は実現しませんでした。それは日本国憲法の戦争放棄、侵略の被害を受けた中国とアジア諸国人民に対する「不戦の誓い」と一体のものです。日本政府がこのことを明確にし、日中の平和共存と友好協力、「紛争の平和的解決」「武力による威嚇に訴えない」ことを中国と中国人民に約束したからこそ、中国は対日賠償請求を放棄したのです。 平和共存5原則と「紛争の平和的解決」は、6年後の日中平和友好条約の締結で法的拘束力を持ちました。その意義を改めて確認する必要があります。今日、日本が締結している「平和友好条約」は、この日中平和友好条約ただ一つです。 日本政府が進めている「台湾有事」への加担の具体化、南西諸島への自衛隊配備、大量のミサイル配備等々の対中軍備増強は、これ自体が「平和的手段による解決」に真っ向から反するものです。岸田政権は、日中国交正常化での日中間の約束、双方が確認した諸原則を投げ捨てるのではなく、日中共同声明・日中平和友好条約の原則・精神に立ち返るべきです。 ※日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明(外務省) ※日本国と中華人民共和国との間の平和友好条約(外務省) 2022年11月3日 関連記事 (No.52)日中国交正常化50周年を平和と友好の出発点に(下) (No.51)日中国交正常化50周年を平和と友好の出発点に(中) |
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