シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.51) 日中国交正常化50周年を平和と友好の出発点に(中)
「台湾有事」をあおっているのは日米の側

「力による一方的な現状変更」の張本人は米国
 米国と日本をはじめ西側諸国と主要メディアは、ペロシ訪台に対する軍事演習やミサイル発射などの中国の対抗措置に対して、「力による現状変更の試み」などと一斉に騒ぎ立てました。これまでも、釣魚島問題、南シナ海問題、空母就航など、事あるごとに「中国の大軍拡」などと中国を非難し、一方的に責任を押しつけてきました。しかし「力による一方的現状変更」を仕掛けてきたのは米国の側であり、これに付き従ってきた日本の側です。
 米国が明確に対中対決戦略に転換し始めたのは、オバマ政権が2011年11月に打ち出した、中国との対決を強く念頭に置いた軍事外交政策=「アジア・ピボット」戦略からです。さらに、トランプ政権は2017年12月、米国の軍事戦略の基本を、従来の対テロ戦略から明確に中国とロシアを敵にするものに変える「国家安全保障戦略」を打ち出しました。ところがバイデン大統領は主敵を中国一国に絞ると同時に、西側同盟諸国によって中国に対抗する戦略転換を行いました。台湾民進党の蔡英文政権へのテコ入れを強めながら、日米、米韓、日米豪印などを総動員して対中戦争の準備と挑発を強めているのです。
 米国の対中戦略の相次ぐ転換は、2010年に中国がGDPで日本を追い抜いて世界第2位になったこと、さらに2012年11月、習近平指導部が誕生して社会主義路線を強化し始めたことが直接的な要因です。米国による世界の一極支配と覇権主義体制が掘り崩されることへの危機感が根底にあるのです。米を先頭とする西側諸国は、自らの軍事・政治・貿易・ドル金融、等々の覇権体制の維持と巻き返しのために、対中包囲で社会主義中国に打撃を与える戦略を基本に据えたのです。
対中国主敵論をむき出しにした米国家安全保障戦略NSS(リブ・イン・ピース☆9+25)

日本も対中軍事対決のための法律を次々と制定 
 日本の対中軍事外交政策がはっきりと中国敵視=対決路線に転じたのも、2010年代以降のことです。日中国交正常化から2000年代までは、歴史認識問題や靖国参拝で対立が生じましたが、日本の基本戦略は中国の経済発展を促すことで、WTO加盟等を通じて西側陣営に取り込み、自らの市場、新植民地的発展の足場とすることにありました。
 日本の対中対決への転換は、民主党野田政権から始まりました。まずは漁船衝突事件を最大限に利用し(2010年)、次に尖閣諸島国有化(2012年)で対中対決へ大きく踏み出しました。当時の野田政権は、極右政治家と自民党が領土問題で攻勢をかけた結果「国有化」を強いられました。しかし、それは日中共同声明と日中平和友好条約の交渉時の尖閣「棚上げ」合意を一方的に反故にするものであり、中国側が激しく非難したのは当然のことでした。
 しかし、日本が軍事面を軸に全面的な対中対決へと転じたのは第2次安倍政権になってからです。安倍政権は、特定秘密保護法制定(2013年)、集団的自衛権容認(2014年)、安保関連法案(戦争法)強行(2015年)など一連の軍国主義諸法案を一挙に推し進めました。本格的な対中軍備増強はここから始まったのです。当時、安倍首相は「米の戦争に巻き込まれることは絶対にない」と言い放ち戦争法を強行しましたが、昨年末には一転「台湾有事は日本有事」と明言するに至りました。戦争法など一連の法的整備が日本が米の対中戦争に全面的に加担・参戦するためのものであることは明らかでした。
※本シリーズ(No.4) 「尖閣諸島への中国の脅威」は本当か?(上)(リブ・イン・ピース☆9+25)

米国の敵視政策・覇権主義と、その対極にある中国の平和共存政策
 米国の「一方的な現状変更」は軍事外交政策だけではありません。まず初めに、トランプ政権が中国を第1の戦略的主敵とする「価値観外交」を掲げ、対中関税戦争、5G排除とIT制裁などで経済制裁を仕掛けました。そして突如として「新疆ウイグル・ジェノサイド問題」のデマを煽り立てました。ここから香港、新疆ウイグル、チベット、内モンゴルなどで「人権抑圧」「民族抑圧」等々のデマ宣伝を吹聴して、中国に対する公然たる国家分裂策動に乗り出したのです。
 バイデン大統領もこれを全面的に引き継ぎました。10月7日には、半導体技術・チップの対中輸出規制を強化し、技術デカップリングに大きく踏み出しました。
 岸田政権も米国の対ロ制裁、対中制裁に参加し、香港問題、新疆ウイグル問題などでの「人権」非難、中国経済のデカップリングとインド太平洋経済枠組み(IPEF)結成で、政治経済の面でも対中対立を強めています。
 一方、中国軍は台湾周辺での軍事演習やミサイル発射、南シナ海や中国周辺の軍事的展開が報じられていますが、それは、米と西側諸国の中国封じ込め戦略、「一つの中国」原則を破る日米一体となった「台湾有事」策動と軍備増強に対する対抗措置です。それらはあくまで中国周辺地域と海域防衛のために行われています。
 中国の対外政策に対して、西側メディアは「覇権主義」などと騒ぎ立てますが、実態は全く逆です。それは米と西側諸国が他国を自らの軍事同盟と覇権体制、途上国収奪体制に組み込み、従属させるのと対極にあります。中国は、上海協力機構(SCO)首脳会議、BRICS拡大会議、「一帯一路」などを通じて、平和共存と平等互恵を原則とする「真の多極間主義外交」を展開し、途上諸国・新興諸国との経済開発協力、インフラ建設支援、気候変動対策、医療支援など相互利益=共存共栄(ウィンウィン)の関係を築き上げようと攻勢に打って出ています。それは「台湾有事」をはじめ対外的に侵略性と好戦性を異常に高める米国の野望を阻止し、世界覇権の押し付けを掘り崩していく「平和共存」戦略なのです。
米が半導体で衝撃の〝対中禁輸〟バイデン大統領、技術使用した第三国製も規制対象に
※本シリーズ (No.36) 「一帯一路」は覇権主義なのか(その5)植民地支配・収奪からの脱却を目指す世界史的事業(リブ・イン・ピース☆9+25)

「台湾問題」を作り出した根源は日本の侵略戦争と植民地支配
 そもそも今日の「台湾問題」の根源を作り出した張本人は、天皇制の軍国主義日本です。1895年に日清戦争によって台湾を清国から奪取したことが、半世紀に及ぶ「不幸な時期」(周恩来)を作り出した起点です。これによって日本はアジアで初めて植民地を有する列強の一員となり、帝国主義的発展の基礎を築きましたた。植民地台湾は、日本帝国主義が朝鮮半島から中国大陸、そしてアジア全域へと侵略と植民地支配を拡大する出発点、最重要の出撃拠点だったのです。日米戦争においては「不沈空母」として位置づけられました。日本軍は台湾の貴重な歴史的文化財を破壊し窃盗行為を働いたばかりか、建物を破壊し、無差別殺りくを繰り返し、数万人もの人命を奪ったのです。それは1937年南京大虐殺の前兆でもありました。
 問題はそれだけではありません。天皇制日本は、植民地台湾において徹底した皇民化教育を行いました。その申し子こそが台湾独立を唱えた李登輝です。今日の台湾独立勢力は、まさに日本の台湾植民地支配、親日・皇民化教育が作り出したといっても過言ではありません。
 戦後は、日本に代わって米国が台湾に介入しました。それは国共内戦における国民党・蒋介石への直接的軍事支援、朝鮮戦争への介入と米第7艦隊の台湾海峡派遣による台湾解放阻止、第1次・第2次台湾危機など、米国の介入は1972年のニクソン電撃訪中、79年の米中国交樹立=台湾との断交まで繰り返されました。
 それから半世紀、米国は再び台湾をターゲットにした「台湾有事」策動に乗り出し、日本もまたこれと一体化して対中戦争準備を本格化し始めました。「台湾問題」を作り出した日米の歴史的犯罪を徹底的に暴き出していくことが必要です。

日米は「一つの中国」原則を守り、台湾分裂策動をやめるべき
 「一つの中国」原則とは、世界に中国は一つしかないこと、台湾は中国の一部であり、中華人民共和国政府が中国全体を代表する唯一の合法的政府であるということです。
中国は1949年10月、中華民国政府に代わって人民共和国政府が、台湾を含む中国全土の主権を享受し行使することになった。1971年10月には、中華人民共和国が国連に加盟するとともに、国連の「中国の議席は一つ」であることを確認して、国連代表権問題に終止符を打ちました(国連第2758号決議)。それ以来、今日に至るまで「一つの中国」原則は国際関係の基本原則、普遍的なコンセンサスです。日中国交正常化に際しても「一つの中国」は決定的に重要な政治的基礎でした。
 日本のメディアは、中国があたかも台湾の「武力統一」を追求しているかのような宣伝を繰り返しています。しかし、中国の台湾問題での基本方針は、「一国二制度」であり、あくまでも長期的戦略としての「平和統一」である。中国は少なくとも1978年以降、「武力統一」という言葉は使っていません。
 台湾問題は中国の内政問題です。中国政府は台湾との間の「92コンセンサス」に基づき、両岸の平和的発展を進めていいます。日本ではほとんど報じられませんが、大陸と台湾の貿易額は習近平体制下で急増し、3283億米ドル(2021年)と過去最高となりました。台湾にとってはどの国の貿易額よりも大きく、中台間の経済関係、文化交流等はますます緊密になっています。
 「92コンセンサス」を否定する民進党と蔡英文政権は、米国と結んで「独立志向」を強めていますが、それでも大陸との緊密な関係、「平和統一」の流れを根底から覆すことはできません。「平和統一」に難癖をつけ、これを破壊しようと目論んでいるのは米国であり日本なのです。中国に対する分裂策動、「台湾有事」による軍事対決の押しつけ、日米軍事同盟、AUKUS等による軍事的包囲、等々は公然たる内政干渉、軍事介入です。しかし「台湾問題」の解決はあくまでも両岸の人民に委ねなければなりません。
※本シリーズ(No.29) 「台湾有事」プロパガンダと日本軍国主義の新段階(2)なぜ米国は台湾に対する介入と中国への国家分裂策動を続けるのか(リブ・イン・ピース☆9+25)

2022年11月3日
リブ・イン・ピース☆9+25

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