貧困克服の闘いの5つの方法 中国の貧困克服の方法は大きく5つあります。(1)生産=地場産業の育成、(2)異地転勤=移住・出稼ぎ、(3)生態保障=自然環境を生かした観光誘致など、(4)教育=子どもの教育と、職業訓練や言語教育、(5)社会保障=生活保障や医療保障。これらは、組み合わされており、地場産業を育成しながら出稼ぎも行う、移住地で新しい産業に挑戦する、観光を促進しながら新しい地場産業を行うなどです。仮に地場産業が育成されても、そこからはみ出た家庭があればすべての人が貧困から脱却したことにはなりません。 日本のメディアでは、中国の貧困撲滅について、「いやがる住民を強制的に移住させている」ような報道が目立ちますが、それは事実に反しています。2012年以降貧困人口9900万人のうち、移住したのは960万人で全体の1割弱です。貧困対策の圧倒的多数は、その土地にとどまり地場産業の育成や観光等自力で生計の手段を獲得することです。また、移住といっても日本のように「立ち退かせて後は自分でなんとかしろ」ではなく、国の責任で民族性に配慮した集合住宅を造り、学校や医療機関を建設し、移住先での雇用なども保障しなければなりません。移住自体が一大事業で、最後の手段なのです。 地元伝来の農産物や工芸品の生産活動を長期的・安定的な産業として成立させ、個人・集団・村の自立的発展が遂げられるように事業が進められています。情報がインターネットで発信され、中国内や世界の人々に知られ、長年苦闘して整備してきた鉄道・道路を通じて物流が実現し、地場産業として成立し発展を遂げつつあります。 貧困撲滅の闘いは、あらたなステップへ――貧困への逆戻りを防ぐ 日本では、中国での貧困との闘いが報じられることはほとんどありません。仮に報じられたとしても否定的なエピソードだけです。たとえば、貴州省のある県で住民の移住が3割しか実現していないのに完了したと報告していた、広西チワン族自治区では貧困対策関連の統計データを現場レベルで不正に操作していた等々。それによって貧困撲滅はウソだというイメージを植え付けようとしています。 本論説では大半の情報を新華社通信やグローバルタイムス、CRIなど中国系メディアに依拠しました。しかし、中国の貧困撲滅の国際的な貢献や習近平政権の「精準扶貧」政策、少数民族居住地の貧困対策などは、専門家の研究や学術論文では当たり前のこととなっており、途上国であり社会主義国家である中国の貧困脱却プロセスは重要な研究対象となっているのです。このような論文はほとんど一般の人の目にはふれないことから、西側メディアの否定的報道がまかり通っているのです。 ※中国の貧困撲滅が世界的な貧困削減にも貢献(国立研究開発法人 科学技術振興機構) ※中国農村部における貧困削減の政策と実態に関する研究(同志社大学大学院学位論文 陳艶) ※「中国の貧困削減(扶貧)政策に関する一考察」(亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科 張建) ※曲がり角を迎えた社会保障改革― 貧困対策と社会保険の見直し ―(亜細亜大学アジア研究所 澤田ゆかり) 西側メディアが報じる不正や虚偽の存在はすでに中国政府が認め、改善しようとしています。今後の政策に不可欠だからです。今年発表された「貧困緩和:中国の経験と貢献」とする白書は、貧困撲滅の闘いの成果を確認すると共に、さまざまな問題や課題を挙げています。そこでは貧困緩和資金の管理、配分、使用、貧困緩和プロジェクトの実施と管理における問題、汚職、不正流用、腐敗、横領などの違反に関する告発や苦情が多数報告されています。開発援助を勝ち取るために貧困県指定争いや貧困救済資金のピンハネ・流用・詐欺などの事例は習近平氏自身が怒りを持って糾弾してきたことです。 ※China issues white paper on poverty alleviation to share experiences in eradicating extreme poverty(Globaltimes) ※White paper highlights anti-corruption efforts in China's poverty alleviation campaign(CGTN) 貧困撲滅の闘いは次のステップに進み始めています。貧困脱却の日から5年間の移行期を設け、主要な支援・補助政策の維持、貧困への逆戻りを防ぐためのモニタリング、特色ある栽培業・飼育業のレベルアップ、農産品の生産・販売マッチング、消費による支援、雇用対策と就労支援等々。移住先では、産業と就労支援、インフラ整備、公共サービス施設、コミュニティーの創出等々。貧困撲滅の闘いを継続強化する中で、逸脱行為を廃し、失敗や試行錯誤から教訓を生かそうとしているのです。 また李克強首相は「中国は人口が多い発展途上国であり、年間の可処分所得は平均で3万元(45万円)だが、平均月収が1000元(1万5000円)前後の中低所得層も6億人いる。月1000元では中規模都市で部屋を借りることすらできない」とも語り、絶対的貧困の克服にとどまらず、激しい所得格差や都市と農村との不均衡の解消、低所得層の底上げなどの課題に取り組んでいく姿勢を示しています。 ※中国に衝撃「月収1.5万円が6億人」の貧しさ――家計資産1億円超える大都市との巨大な格差(東洋経済) ※Poverty alleviation in NW China’s Shaanxi exposed as fake, as villagers forced to fetch water from across province(Globaltimes) 偏見や思いこみを捨て、事実を知るところから始めよう 私たちは、半年以上にわたり、中国の党・政府の公式文献やメディア(多くの映像を含む)、NHKの中国に関する紀行番組、米欧メディア、左翼・共産主義関係のメディア、学術文献などを検証してきました。結論は、中国の党・政府が、私たちの見聞きしたことのない方法で、紆余曲折と試行錯誤を繰り返しながらも、絶対的貧困から着実に脱却してきたという事実に間違いはない、日本を含む西側メディアや左翼の一部の否定的報道や歪曲は説得力がないというものでした。中国政府と共産党が、強制や暴力ではなく、一人ひとりの自立性を大事にし、対話と説得を重ね、民族尊重、公衆衛生の向上、教育と社会保障、民主主義の発展等々人民の利益を第一に考えて貧困撲滅の闘いを進めていることは間違いないと思います。 もちろん個々の事例について様々な疑問が出てくることもあると思います。「電気も水道もいらない、自給自足でいいという人はいるはず」「子どもを寄宿舎に入れて親と隔離するのはどうか」「観光地化して本来の伝統や文化、慣習が変質し廃れていくのは素直に喜べない」「伝統の民芸品を商売にするのはどうか」等々。 これについても、他ならぬ中国政府自身がこれらの点に細心の注意を払い慎重な対応をしています。端から評論するのは簡単ですが、具体的に解決の道筋を探らなければなりません。辺境の山岳地帯や河川、湖沼などの大自然を世界に類を見ない宝庫として生態文明保護を打ち出し、自然生態系の保護と辺境の観光産業を成立・発展させる方針を出しています。貧困脱却に生かしてゆくこと、「生態文明」「美しい社会主義」と貧困脱却はワンセットです。水道管や電線、道路の建設なども、自然生態系を崩さないために最大限の注意が払われています。また、多民族の文化や慣習、伝統を守り継承することこそが国の生命力をはぐくみ、社会主義建設の土台を形成するという考えのもと、民族性を尊重するというのが中国政府の方針です。 いずれにしても、米国をはじめ日本を含む西側帝国主義が束になって中国社会主義を封じ込め、その台頭を軍事力、金融・経済力、技術力を総動員して阻止しようとしている中で、安易にそれに同調することは危険です。そのなかにはメディアによる「中国脅威論」「中国独裁論」などメディア攻撃があるのです。メディアは人々の意識や心理を誘導し、操作する力を持っています。まずは、事実を検証すること、事実を知ることからはじめなればなりません。 以下で、まず新疆ウイグル自治区での貧困克服の闘いの事例を見たのち、先述した貧困克服の5つの方法――(1)生産=地場産業の育成、(2)異地転勤=移住・出稼ぎ、(3)生態保障=自然環境を生かした観光誘致など、(4)教育=子どもの教育と、職業訓練や言語教育、(5)社会保障=生活保障や医療保障――について特徴的な事例を紹介します。 (紹介)貧困撲滅の闘いの具体的事例 新疆ウイグル自治区での貧困克服と、新疆綿生産での雇用創出と重労働軽減の取り組み 「ウイグル・ジェノサイド」「強制労働」「人権弾圧」などの宣伝に対して中国政府が「世紀のウソ」と喝破する背景には、テロ封じ込めや貧困克服の闘い、重労働軽減の取り組みを進めてきた強い自負があります。 新疆ウイグル自治区では、2019年に中国全土の19の州が約190億元(約30億ドル)を投入し、約2000件のプロジェクトを支援し、地元住民の生活を大幅に改善しました。深センの企業は新疆ウイグル自治区南部のタクオーガンタジク族自治州に対して、貧困緩和を目的に農産物の加工や輸出入に乗り出しました。「2013年には家電製品はほとんどなく、環境は劣悪で、広い道路はなく、一部の村には電気と水道がなく、多くの人々が貧しかった」状況から、ネットワーク施設や低価格の車両、運転技能講習も活用し、貧困からの脱却をサポートしてきました(双子の関係)。2014年から2019年にかけて、年間平均GDP成長率7.2%を維持し、1人当たりの可処分所得の平均年間成長率は9.1%と、地元の人々の生活水準は大幅に改善しています。 新疆の最後の貧困郡としてシャチェ郡、モユ郡、アクト郡をはじめ10郡が残っていましたが、2020年11月に貧困から脱しました。10の郡はすべて、国内最大の砂漠がある新疆南部にあります。そしてそのうち5つの郡はホータン県にあり、生存に適したオアシスエリアは土地のわずか4%もありません。ここに貧困に苦しむ228の村、76,900人が暮らしてきました。人々は厳しい自然環境と貧しいインフラのために、安定した収入もなく公共サービスからも制限されてきましたが、雇用、教育、医療サービスの促進に予算の70%以上が費やされ、インフラ整備、共通語の普及、教育と雇用の促進、都市整備を行いました。職業訓練や教育活動を通じて、テロ活動に勧誘される危険を取り除き、安定した市民生活を送る土台を作り出しました。 ※China’s approach in Xinjiang best answers Western criticism(Globaltimes) ※China's Xinjiang secures prominent achievements in poverty alleviation(alwihdainfo) ※China's Xinjiang shakes off absolute poverty(Globaltimes) ※Xinjiang's Altay organizes all sorts of training to improve villagers' vocational skills(Globaltimes) ※Xinjiang region beefs up wind, solar power generation(EQ)
南疆タシュクルガン・タジク自治県は、平均標高4000メートルのパミール高原にあります。送電線とソーラーパネルで電化や他地域との通信を実現し、農家・遊牧民、ロバの飼育場、国境地帯の防衛への参加等で雇用を創出すると共に、移住も同時に進めました。アルタイ市では、村人の職業スキルを向上させるためにあらゆる種類の訓練を組織しています。サルフルスン郡区クルティ村で作られた手工芸品が広く販売されるようになり、村人の収入源を多様化させました。 新疆ウイグル自治区は、日照時間が長く雨が少ない乾燥した気候、昼夜の気温差もあり、綿花の植え付けに世界で最も適した地域の1つであり、新疆綿は最高品質で知られます。綿花摘みから製糸まで機械化が進み2020年の平均で70%超が機械化されていますが、南部ではまだ40%超にとどまり、重労働の機械化が引き続き取り組まれています。以前は、綿花摘みのために河南省からの出稼ぎ労働者が4分の1を占めたといいます。 近年綿花生産地の多くの地域に製糸工場が増設され、地元住民がオフシーズンに仕事をしやすくなるとともに、原料の輸送コストを節約できるようになりました。その一つアクス県アワット郡は、絹のような光沢と耐久性をもつ高品質綿の町として知られ、世界の長繊維綿の5分の1を生産し、広州、深セン、上海などの沿岸の大都市に配送し、その後欧米に輸出されています。 ※In Xinjiang, from cotton fields to cotton mills(CGTN) ※Why Xinjiang is one of the world's most suitable regions for cotton-planting?(CGTN)
(1)地場産業の育成 ○湖南省花垣県十分洞村は、「ピンポイント貧困扶助工作隊」が作られ、すべての貧困戸のファイルが作製され、脱却の道が探られた。以前は多くが出稼ぎして生活していた。しかし、もともとあった地場産業を発展させ観光誘致する方針が立てられ、ミツバチの飼育と蜂蜜の出荷、キウイの栽培、工芸品である刺繍の販売、語学学習とツアーガイドの育成、観光客を相手にした農家食堂などで生計を立てることができるようになった。特に女性の活躍がめざましく女性の自立にもつながっている。ある女性は言う「かつては夫から金をもらっていた。自分で稼ぐようになってしたいことが自由にできるようになった」。 ○雲南省貢山県独龍族は全国に6900人しかいない少数民族で、成人女性の顔に入れ墨をするなど独特の風習がある。険しい山の中、冬は大雪で閉ざされる。ここに山を貫通するトンネルが2014年に完成した。以前は洞窟や樹の中で寝泊まりしながら3日かけて行かなければならなかったが、これが3時間になった。馬庫村では、農業やマスの養殖業、観光業で発展している。 ○独自の農産物を特産品にした地域もある。江西省井岡山市は、いちご生産協同組合が作られ、144世帯が参加している。雲南省濾水市色徳村は、さまざまな種を栽培する工業団地が建設された。河北省淡源県は、もともと多くの種類の農産物、特にトウモロコシの栽培がされていたが、市場から取り残されてきた。それが、需要を調査し販売できる作物を生産するようになった。河南省蘭考県徐場村では、桐の植樹をし、それを使った古琴産業が大きく成長している。江西省江西瑞金市鳳岡村では、もともと細々と作られていた地場産業の鴨の卵をブランド化し、全国へのネット販売を始めた。 ○貴州は2012年以来900万人以上の人々を貧困から引き上げた。ジユンミャオ族ブイ族自治州ダディバ村は、山の奥深く世間から切り離され長い間貧困に苦しんできた。しかし電気が通じ、新しい道路、家、農場ができ、幼稚園と小学校が建設された。また定期的に医師が訪問するようになった。江口県民国区民家昌村では食用真菌栽培基地ができ、キノコ栽培が盛んだ。美傑市、青西村、華武村などでは貧困緩和ワークショップで衣服の縫製工場ができた。リピン郡のドン族の女性は伝統的な手工芸品の農家協同組合で刺繍、嘉康郷嘉哲村では地元観光促進、栄江県高南村は栽培拠点で竹の真菌の栽培、新家県徐家場郡区では新たな農産物の栽培等々。 ※Guizhou lifts over 9 million people out of poverty since 2012(Globaltimes) ※Mountain village welcomes new life thanks to poverty reduction campaign(Globaltimes) ※Sustainable project in China’s poorest regions promotes ethnic culture(Globaltimes)
(2)移住と出稼ぎ ○河北省イン陽区は15000人が暮らす移住民の工場都市で、靴下工場やしいたけ栽培工場ができ、大きな産業へと発展している。 ○甘粛省康楽県は黄土高原と青蔵高原にわたる標高2000メートルの高地にある。2017年以来143本の道路を造り、15000軒の家屋を修繕し、1000世帯の移住を実現した。康楽県上溝村は、泉の水が水質基準を満たしておらず、水源地から50キロメートルの導管を通すことになったが、国家自然保護区を通ることから、環境を壊さない導水施設をつくるために森林工事を行った。ここは、地場産業と出稼ぎで対応している。女子は進学せず嫁入りするとの伝統が根強く残っていたが父親を説得し、専門学校やで学び手に職を付けることを進言した。 ○雲南省怒江州は、高山と渓谷にあり、92%が少数民族のリス族の自治州だ。保山市叢崗村では、リス族の67世帯445人の移住を実現し、衣食住と医療保障が充実した。子どもたちは寮生活で教育を保障されている。念坪村のナスティ集落には800名のリュック隊が入り49世帯に移住を説得し、医療、教育、生活が保障されるとの説得活動が進められた。
○チベット自治区の江当郷は標高4000メートルで年間日照時間が3300時間しかない(1日平均1時間未満)。シガツェ市は、土でできた家で雨が降るとぼろぼろ、服も1~2枚、食べ物にも欠く生活を強いられていたが、日照時間の長いところに移住し、太陽光発電で電気を供給している。 ○寧夏回族自治区のヘラン山脈の麓では青い太陽光発電パネルと風力発電の白い風車がある。ホンシブ郡区の弘大村は2012年以来7000人以上が27の村から移住した国内最大の貧困緩和移転地だ。ブドウ園、植物温室、太陽光発電所、牛農場、工業団地が見え、大きな教育棟、保健所が建っている。 ※Huawei smart PV: injecting momentum into Xihaigu’s rural rejuvenation(Globaltimes) ※雨水を飲み、泥道を歩く生活からの脱却。1300人が移民、中国寧夏回族自治区(AFP) ※Tibetan villagers celebrate farmers' New Year in new homes(Globaltimes)
(3)学校の開校、教育、職業訓練の強化 ○地方の農村部や貧困地域からより多くの学生が都市の主要な大学に進学できるようにするための特別な入学計画措置--入学試験での得点配慮や奨学金の提供など--がとられている。大学で学んだ学生が医師や教師、起業家として農村部に戻る。全寮制の小中学校の創設、大人を対象とした各種職業訓練、共通語の教育などが実情に合わせて行われている。 ※Vocational education helps with poverty alleviation in China: report (Globaltimes) ○四川省大涼山イ族自治区は標高2000~3500メートルにあり、住居、教育、医療の充実を進めた。ソソラーダ村は標高2190メートルにある。彝族が刺繍製品を作り、その民芸品を販売すると共に、農業技量、ビニールハウス技術の習得、魚の養殖、左官技術、溶接技術などで、起業や出稼ぎの技能を習得している。 ○墨玉県タクラマカンの南側は貧しい地域で、移住が進むとともに、残された者の仕事がなくなるという問題も起きる。移住の説得活動とともに、就業のため各種研修を実施している。 ○山東省済南市は貧しい地域で、就学支援は義務前から大学まである。 ※China focuses on education to combat poverty(CGTN) ※Senior political advisor recommends expanding compulsory education in former impoverished areas(Globaltimes) (4)環境保全と観光誘致 ○四川省大涼山の道路のない最後の村、アブローハ村。物流は馬と人力に頼り、絶壁に添って4時間の山道を歩く。彝族200人が複数の山に分散している。道を両側から掘り進めるために、村までヘリコプターで建設機材を運んだ。自然環境と特色ある農産物で村おこしの方針を決めた。登山、岩登り、野外冒険等の旅行産業で活性化させる「農村旅行一体化の村」だ。13年電気、17年水道、19年ネット、そして20年道路が開通した。
○雲南省鎮雄県大鍋圏天坑は崖下150メートルに新寒村があり、8家族32人が暮らしている。移住も検討されたが、もともと独自の特産品があり、風光明媚なことから橋と道路が作られ、特産品の出荷で生計を立てると共に、観光客誘致が可能となった。 ○浙江省パラディシアック村は数十年前にはひどく汚染された鉱山地帯であったが今では新鮮な空気、澄んだ川、緑豊かな山々、きれいな通りがある最も美しい村の一つとして賞賛されている。鉱山を閉鎖し、地域の環境と天然資源の保護に移行し、エコツーリズムによって発展を促した。 ※Decades on, rural areas in Zhejiang enjoy green and sustainable development under CPC's guidance(Globaltimes) ※貴州省のミャオ族村は、貧しい僻地から観光地に(チャイナネット) (5)医療制度の拡充と衛生状態の改善 ○山西省大寧県楽堂村は荒れた山で、140世帯が黄河東岸10キロの黄土高原に点在して暮らしている。やせた土地で、若者は出稼ぎに行き、2014年の貧困率は83.27%だった。貧困の最大の原因は病気だった。村に病院も医師もなく、意識不明になっただけで死に装束を着せ葬式を準備するというのが長年続き、肺炎でも命を落とす状況だった。村出身の若者が医師としてもどり、住民が医療保険カードを持つことで改善した。 ○広西チワン族自治区河池市ヤオ族自治県巴馬。長寿で有名で、自然環境、旅行、療養、健康を一体化させた観光を企画している。同じく広西荘族自治区南寧市は自然環境を生かした観光産業が育成されている。 ※制度の整備で中国の貧困者の基本的医療が保障される(新華社通信) ※迫りくるもう一つの米中逆転(丸川知雄 ニューズウィーク) 新型コロナでの死者増や「絶望死」(経済的困窮や将来悲観からの薬物中毒死や自殺など)の影響で米国の平均寿命が短くなっている。驚くのはコロナ死の人種差で、黒人の平均寿命が極端に下がる程度に影響しているという。一方中国はコロナを早期に押さえ込み、貧困撲滅や医療制度の拡充などの結果平均寿命が延びていることで、GDPの逆転より早く米中の平均寿命の逆転が起こると予想している。 2021年5月11日 関連記事 (No.23)貧困撲滅の闘い(中)──共産党の指導の下、全土から貧困地域の自立化へ支援 (No.22)貧困撲滅の闘い(上)──広大な国土と多民族の国での困難な課題の遂行 |
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