シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.23) 貧困撲滅の闘い(中)──共産党の指導の下、全土から貧困地域の自立化へ支援

共産党員の闘い
 貧困撲滅は、中国国家の目標であり、中国共産党の闘いでもあります。草の根で責任を持ち主導しているのは全国に24.2万の貧困扶助工作隊、300万人の党員です。彼らは3年以上に渡って貧困地域の家に寝泊まりし、家族のように共に生活し、村民達が必要としているものを自分の体験を通じて理解し、解決策を見いださなければなりません。人とうち解け信頼関係を築く能力、全体を総合的に判断する能力、何が必要かを決断し方針を出す能力、何よりも献身性と自己犠牲性が要求されます。移住についても、決して強制ではなく、粘り強い説得活動によって行われています。党幹部からの抜き打ちの査察が入り、実際に貧困脱却のプロセスが進んでいるかが評価されることになります。党と国家が貧困脱却チームを組み、何年も村人と一緒に生活し方針を議論し協力していく活動スタイルは習近平時代に作られたと言われています。
 例えば貴州省紫雲県デイイン村は自給自足の農業以外に産業がなく43%が貧困世帯で「何もない村」として知られていました。ところが貧困に苦しむ世帯は当初は非協力的で、改革に否定的で現状のままでいいと考えていました。共産党員は、村の人々と話し合い、人生を変えるように励まし説得し、貧困削減キャンペーンの一環として牛の牧畜を開始し、インフラを改善しました。その結果2020年には56世帯(合計208人)が貧困から脱却しました。共産党員をよそ者扱いし、根強い封建的な風習に固執する村も多数存在していました。一度村を出て共産党に入り村に戻って貧困撲滅のために闘う少数民族の共産党員が主導するなど、さまざまな形で貧困撲滅の闘いを遂行しました。
 また、学生ボランティアも重要な役割を果たしています。夏休みなどに僻地にグループで入り、住民と寝食をともにし必要な援助や課題を見いだしたり、教育チームを作って貧困地域での教育支援などを行っています。さらに「先に豊かになった者が続く者を助ける」という思想が根付いているため、物資の供給などの貧困扶助には民間企業も参加しています。困っている人が言い出すのを待つのではなく、自ら探し出し手をさしのべるというシステムが作られています。
Chinese students encouraged to volunteer in rural areas(新華社通信)
Volunteer teaching team offers teaching service in Xiji County, China's Ningxia(新華社通信)

 貧困との闘いの過程でこれまで1800人以上が殉職し、その多くが共産党員でした。険しい山道を村落へ車で向かう途中に嵐に見舞われ車ごと転落した事例や、リュックを背負って崖から転落、変電施設での感電などです。それは、新型コロナとの闘いの中で、治療に当たっていた医師や看護師などが感染・発症し命を落とした事例に通じるものがあります。中国は新型コロナの感染拡大を初期の段階で封じ込め、14億の人口をもちながら感染者90,769人死者4,636人にとどめましたが、それには国力の集中と共に少なからぬ医療者の犠牲を伴いました。これらは、人民の命を救い貧困からの脱却を支援する中での尊い犠牲と言わねばなりません。
More than 1,800 sacrifice their lives in China's fight against poverty(Globaltimes)

社会主義ならではの先富論の具体的実践 企業が率先して参加
 貧困撲滅のために貢献した個人・団体への表彰として1,982人の人員と1,501団体にメダル、証明書、プラーク等が贈呈されました。そのうち500人以上の受給者がインターネット、教育、農業、エネルギー、航空などの産業から来た企業や企業の代表者でした。アリババ・グループ、ワンダ・グループ、ディディ・チュクシン、吉利など、中国の民間企業の中で最も有名な企業が参加し、その仕事が貧困克服事業として認められています。中国政府は過去8年間で約1.6兆元(2,500億ドル)の財政資金を貧困緩和に投資しましたが、民間企業もまた、これを補助する形で、貧困対策資金を投入しているのです。
Enterprises support poverty alleviation through industry creation, upgrading and transformation(Globaltimes)
Chinese conglomerates, including Alibaba, Wanda praised for poverty alleviation efforts(Globaltimes)

 航空会社は「観光開発」への貢献が認められています。中国東方航空は2017年に中国南西部の雲南省で昆明から江源への「貧困緩和ルート」を開始し雇用創出にも貢献しています。電子商取引大手の蘇営は、貧困緩和と農村再生のため23億元以上の現金と材料を寄付しました。ワンダグループは中国南西部の貴州省ダンザイタウンに23億元以上を投資し、3年間で1,900万人の観光客を受け入れました。アリババグループは、中国の貧困地域が地元の農産物を販売するのを助けた成果を認められました。過去3年間で、グループは832の貧困郡が2700億元以上を売るのを助けました。大連万達集団は、2014年に中国南西部貴州省ダンザイ郡に専門学校と観光村を建設し、巨額の観光収入を可能にし、58,800人の地元の人々を貧困から脱却させました。
 さらに大小さまざまな企業が、内モンゴル自治区や広西チワン族自治区の被災地の学生への教育援助、被災地域からの食材購入、コーヒー業界の貧困緩和プログラム・コーヒー生産者の訓練等を行っています。
 一方でアリババやテンセントなど対しては、昨年末から独占禁止法違反の疑いで行政指導の強化が始まっています。さまざまな要因が絡んでいると考えられますが、社会主義中国における巨大民間企業のあり方が問われたのは間違いありません。同時期に習近平氏は名指しではないものの「 民営企業家は先に豊かになった後、これから豊かになろうとする人々を助ける役割を果たすべきだ」と語っており、企業家の目的が事業拡大や利益優先ではなく、教育、医療などの社会事業にも尽力すべきことを強調しています。大企業も厳しい指導下にしっかり組み入れようとしているのです。
中国当局、アリババを独禁法違反の疑いで調査(日本経済新聞)

「双子の関係」と、貧困克服を可能としたインフラ整備と科学技術革命
 東部の先進地域が遅れた西部地域を助ける事業は「双子の関係(twin relationships)」と言われています。「先富論」「豊かになった東から貧しい西へ」は一般的なスローガンではなく、東で産み出された利益を具体的に西に投入して豊かにしていくという実践的プログラムです。国全体が沿岸地域を発展させ、その後、国の西部地域へと波及させていくのです。東部から西部へとの地域間のこれらの「双子の関係」は、社会のあらゆる分野で未開発の地域を大いに助けてきました。個人、地域の自治グループやサークル、政府機関、企業が組織的に動員され、あるいは数々の自主的で能動的な活動とタイアップし、財政的支援だけでなく、高度な技術や才能を提供するために従事してきました。
「習近平の貧困扶助物語」第四話:福建寧夏モデル(CRI)
 東部地区と西部地区がペアを組んで貧困扶助協力を行う事業は、習近平氏が寧夏ホイ族自治区を何度も訪れて計画を作ったことから「福建寧夏モデル」とも呼ばれている。茶葉の栽培や工芸品、観光などその地に適した産業支援や移住事業が具体的に進められている。


深センからの支援で作られた広西省荘族自治区巴馬瑶族自治県の町

 最近の貧困克服事業において、通信システム、ネット販売とデジタル決済手段、太陽光発電など科学技術の発展が貢献した側面を強調しなければなりません。中国には637万個の通信塔が建てられ、そのうち4Gで300万個です。2015年12月に最後の無電村に通電し、全国が無線で通信できます。特に貧困が集中する西部地域の電力網とネット網を強化しました。これらの地域の夜間の照明地域は過去5年間で55%増加し、村や国内の道路の長さは5年以内に64%増加しました。水道水の普及は81%の地域をカバーし飲料水の問題が基本的に解決しています。都市部での利益優先ではなく、開発から遅れた人々に恩恵が及ぼされているのです。
 「農業のデジタル化」が農村部の貧困克服に重要な役割を果たしています。それはインターネット企業と、個々の農家を支援するアリババのプロジェクトの例が挙げられます。このプロジェクトは、地元の農産物倉庫とコールドチェーンロジスティックネットワークの間のデジタルシステムの構築を強化し、輸送中の農産物の損傷率を減らし、生産者から消費者に新鮮なまま迅速に届けることを可能としました。もちろんこれには、道路網の整備が前提となっています。
China’s successful poverty reduction experience is worthy to be taken as examples: MFOCOM(Globaltimes)
Socialist system's advantages, CPC leadership key to China’s miraculous poverty alleviation success(Globaltimes)
 この記事では、中国共産党の強力で効率的なリーダーシップ、全国の資源を動員する能力、そして中国国民が行った大きな貢献を「中国の社会主義としての体制的優位」として挙げている。党、政府、企業、農村協同組合などが一体となって貧困撲滅のために動いたことが紹介されている。

2021年5月11日
リブ・イン・ピース☆9+25

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