[新テロ特措法延長反対]
日本政府は、11月5日の参考人質疑でいったい何を学んだのか?
現地からの声に真摯に耳を傾け、インド洋での給油を今すぐやめるべき!

 新テロ特措法延長法案が今月中旬にも成立する危険が高まっています。私たちは怒りでいっぱいです。政府は、参議院外交防衛委員会で5日に参考人招致を行い、ペシャワール会の中村哲氏とJICA(独立行政法人国際協力機構)の力石寿郎氏に意見を聞きました。そこでの両者は、「外国軍隊の空爆が治安悪化に拍車をかけている」、今の給油活動も「掃討作戦の一環である」(中村氏)、現地の人たちも「外国の軍隊は全部出ていけと、外国人も全て出て行けと、繰り返し言っていることから推察すれば、自衛隊が歓迎されざる存在に映る」(力石氏)などと語りました。およそ、給油活動の延長を結論づけるものではありません。参考人らの意見を素直に聞くならば、インド洋から自衛艦をすぐさま撤収させるという方針になるはずです。にもかかわらず、翌6日、新テロ特措法延長法案の採決で合意したのです。日本政府は、11月5日の参考人質疑をいったい何のためにやり、何を学んだのでしょう?
参考人質疑の映像(参議院外交防衛委員会)

 さらに中村氏は「何をすべきかではなく、何をしてはいけないか、これを明確にするだけで大きな方針が出される、対日感情の好転がはかれるのではないか。対テロ戦争の破綻というのは誰の目にも明らかだ。しかしそれを言うとみんなから責められる。だからみんな黙っている、“裸の王様”になっている」と、完全に破綻したブッシュの対テロ戦争に対して、日本政府が今からでも政策の誤りを認め、これ以上加担しないことことを明確にすべきとの認識を示しました。
 とりわけイラク第一次派遣隊長として名を売り参院議員に成り上がった佐藤正久氏との質疑では、淡々とした語り口の中にも、現場を知らないまま自衛隊派遣ありきで質問する佐藤氏への怒りがにじみ出ていました。給油した油がアフガン軍事作戦=OEFに具体的に使われているか否かという議論に対して、「内輪の議論、私には通用しても、現地の人たちには通用しない」と喝破、現地の人たちにとっては、殺戮作戦への加担以外の何ものでもないと批判しました。
 私たちは、以下やや詳しくペシャワール会中村哲氏の参考人質疑を中心に紹介し、国会で起こっている異常事態、いや“国際社会”で起こっている異常事態を明らかにすることで、新テロ特措法の延長反対を改めて主張したいと思います。後日議事録が参議院ホームページに掲載されることになりますが、ここでは私たちが緊急に公開映像から発言を筆記したものを末尾に添付します。

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2008年11月9日
リブ・イン・ピース☆9+25


11月5日、参議院外交防衛委員会での中村哲参考人発言から

□深刻な飢餓と暴力主義。「対テロ戦争」が治安悪化に拍車。
 委員会の冒頭の発言で、中村哲氏は、飢餓と水不足で深刻なアフガニスタンの実態を語りました。そして、「対テロ戦争」が暴力主義を生み出しており、中村氏がアフガニスタンにいくようになって25年間で最悪の治安状況だと語りました。

中村「500万人が飢餓に陥っている。このままでは数十万人が冬を越せないだろう。小麦の価格は3〜4倍になった。戦争どころではない。飢餓こそが問題だ。私たちは、医療団体だが、清潔な水さえあれば8から9割は命を落とさずに済んだと考え灌漑をしている。干ばつに加えてアフガンをむしばんでいるのが暴力主義だ。アフガン人によるものもあるし、外国人によるものもある。治安の悪化が悪くなる一方だ。アフガニスタン、パキスタン北西辺境州まで巻き込んで、膨大な死者がでている。『対テロ戦争』が治安悪化に拍車をかけている。
 一口に反米武装勢力などというが、実際はアフガンの伝統的な国粋主義者だ。切っても切っても血がにじむようにでてくる。一定の党派に統制されているわけではない。欧米諸国への憎悪が民衆の間に拡大していることを、民衆に接していて感じる。
 伊藤くんの犠牲について言えば、アフガンにはとんでもない無頼漢もいる。各地域でばらばらに自発的な抵抗運動が続いている。それだけ根が深い。おそらく2000万人のパシュトゥン農民を抹殺しない限り戦争は終わらないだろう。これは私ではなくて、地元の人々の意見だ。アフガン農村とは、兵農未分化の世界だ。すべてが武装勢力といってもいい。復習は絶対の掟だ。アメリカ兵、カナダ兵が何名殺されたというニュースがでるが、アフガン人の犠牲者1人の100倍が『テロリスト』として日々生産されていると考えなければならない。混乱はパキスタンにまで及んでいる。アフガンにのがれるパキスタン難民まで出てきている。私が25年いる中でもっとも治安が悪くなっている。」

□改めて言う、自衛隊の派遣は、“有害無益”、“百害あって一利なし”
中村氏は、対日感情が急速に変わっていることを指摘します。“国際社会”という欺瞞的な言葉を批判し、自衛隊の派遣を“有害無益”、“百害あって一利なし”と切り捨てました。

中村「対日感情もかげりが出ている。アフガン人は、広島、長崎を知っていて、知識人はアフガンの独立と日本の独立が同じ日だと信じているくらいだ。しかし、日本が米軍に協力しているというのが知れ渡ってきている。対日感情は日々悪化している。
 “国際社会”という言葉は、現地から疑問がある。実体はなにか、アフガン民衆、パキスタン民衆は“国際社会”の中にはいっていないのは明らかだ。“国際貢献”というが、何を持って国際というのか。国際というのは、国や国家、民族、宗教を超えて人々が理解し合って命を尊重し合うことではないか。これが平和の基礎だ。
 いかによりよい社会、平和な日本を子孫を残すのか、どういう世界を残すのか、岐路にある。アフガンは局地的な国際紛争かもしれないが、目先の政治的な道具にしたり、目先の経済的利益から見るのではなく、日本の岐路を決定する重要な問題として見なければならない。
 伊藤くんの殺害後、現地の治安当局が住民と話し合い、治安委員会をつくり我々を防衛している。治安というのは警察の問題だ。陸上自衛隊の派遣は、“有害無益”、この言葉がいやなら、“百害あって一利なし”でもよい。
 この戦争では解決できないという認識が広がってきている。日本は平和国家として、交渉の推進役になるべきだ。しかし、米やヨーロッパ諸国の手先であるという風になってはダメだ。あくまで、独自の方針でやっていくべきだ。」

□重要なのは、何をすべきかではなく、何をしてはいけないか。
 中村氏は、米軍主導の地域復興支援チーム(PRT)を宣撫活動と批判し、またマドラサ建設に協力した意味を説明しました。その上で、今の日本にとっては「何をすべきかではなく、何をしてはいけないか」を考えて実行するだけで十分であり、とにかく“裸の王様”であるブッシュの「対テロ戦争」から手を引く必要があることを強く示唆しました。

中村「軍民一体のPRT(地域復興支援チーム)も軍事活動の一環に過ぎない。医療活動といって、突然装甲車がやってきて薬を配らせてくれと言う。副作用も患者の症状もみないでどういうことか。米軍の活動をよくするための、宣撫活動だ。PRTと接触することが危険を招くので、私たちは、一切関係を持っていない。
 マドラサの建設に協力したのも、日本では『イスラム神学校』と訳されるが訳が悪い。マドラサは各地域を束ねる中心だ。アフガンではいろんな部族が入り交じっている。紛争も起こる。それを束ねる場所が必要だ。地域の宗教的な中心だ。タリバンの温床だとか武装勢力の養成所というのではない。農宋共同体の秩序はマドラサなしには存在しない。長老はマドラサの完成で自由になったと行った。アフガンではこれだけ戦乱がありながらストリートチルドレンが少ない。子どもを世話し、教育する機能を兼ねている。マドラサで学んでいるというだけで爆撃の対象になる。地域の人にとって何が必要かが重要だ。」

中村「何をすべきかという性急な結論を出さずに、大きな目でアフガニスタンの流れをみて、これは有効だという道を宣言する。すなわち、何をすべきかではなく、何をしてはいけないか、これを明確にするだけで大きな方針が出される、対日感情の好転がはかれるのではないか。
 対テロ戦争の破綻というのは誰の目にも明らかだ。しかしそれを言うとみんなから責められる。だからみんな黙っている、“裸の王様”になっている。支援の道というのは明らかだ。水、水さえあればいろんなことができる。ここに力を入れるべきだと宣言する。“国際社会”というマジックのような言葉に踊らされずに、日本独自の道を見いだす。“過ちては則ち改むるに憚るなかれ”という言葉があるが、誤りは誤りと認めて、まだ間に合う、性急に結論を出さず、議論を尽くし、しかし大局を大局として見据えて決定していく。抽象的だが、わたしはそれを望みたいと思う。」

□陸上自衛隊派遣によって治安はかえって悪化する。
 中村氏は、自衛隊派遣によって治安はかえって悪化すること、いずれにしても軍隊は人殺し部隊であることを鮮明にします。佐藤氏は「場所とか地域で使い分けをした方が良いのではないか」と食い下がりますが、中村氏は、自衛隊が復興支援出来るというのであれば今あるJICAは単なる付録なのかと怒りをあらわにします。また、力石氏も「自衛隊は歓迎されざる存在」として「使い分け」は困難でとの認識を示します。これに対して佐藤氏は自衛隊の優位性を「地元の方に風呂とか食事とか無用の負担をかけずに自分で面倒を見る自己完結性の能力を持っている」と的外れのことを行って失笑を買います。

中村「自衛隊派遣によって治安はかえって悪化すると言うことは断言したい。これは、米軍、NATO軍の治安改善ということを標榜して、この6年間活動を続けた結果、結末が今この事態だ。これ以上日本が、軍服を着た自衛隊が中に入っていくとこれは日本国民にとって為にならないことが起こるであろう。してはならないことと言うのは、これは国連がしようとアメリカがしようとNATOがしようと人殺しをしてはいけない。人殺し部隊を送ってはいけない。軍隊と名前が付くものを送ってはいけない。これが復興の要の一つではないか。」
 自衛隊を復興支援に送るいうのであればJICAを全部引き上げて全部自衛隊員を送れば良いことだ。それじゃないとできないと言うのであれば、麻生首相自ら銃を握って前線に立ってもらいたい。自衛隊が復興支援に携わるというならば、現在、復興支援で死力を尽くしているJICAの方々の立場はどうなるのか。JICAの人々はただの付録なのか。自衛隊が銃を捨てて現在のJICAの仕事ができるというのであれば、JICAの支援もいらないというこだ。又、NGOもいらないという議論になってくる」。

佐藤「場所とか地域で使い分けをした方が良いのではないか。」

力石「自衛隊が来たら、中村参考人の言うように、やはり軍隊という印象を持たれるので、今まで民生中心にやってきた日本までがついに軍隊を送ったかという捉え方をされてしまう恐れがある。一般的には現地の武装勢力の人たちも事あるごとに声明を出しているあるいは警告を出しているように、外国の軍隊は全部出ていけと、外国人も全て出て行けと、繰り返し言っていることから推察すれば、自衛隊が歓迎されざる存在に映るのはおそらく知っているだろう。だから使い分けができるかというのは非常に難しい判断だと思う。」

□ISAFが進駐したら混乱状態が起き、治安が悪化する
 佐藤氏は「仮にISAFとかいう物が無くなったら、アフガニスタンの治安は改善すると思うか?」という質問をします。これに対して、独立行政法人の力石氏は、幾分政府に配慮しながら「ISAFが一定の治安抑止力を発揮しているというのは確かなことだ」としながらも、「ISAFすなわち軍隊が居ること自体が治安を悪くしているという見方」もあると、2つの見方を述べます。中村氏は、タリバン政権時代のことにもさかのぼり、ISAFが進駐したが為に混乱状態が起きたという見方を明らかにします。

力石「難しいお話ですが、ISAFが一定の治安抑止力を発揮しているというのは確かなことだと思います。二つの見方がありまして、ISAFが居るからあれだけで済んで居るという見方と、ISAFすなわち軍隊が居ること自体が治安を悪くしているという見方と両方可能じゃないかと思うんです。」

中村「今まで平和だったところがISAFが進駐したが為に混乱状態が起きるというのも事実であり、これは国軍兵士、警察はもちろん国軍兵士も含めて、複雑な感情でおる。一旦事があるときは、国軍自身が米軍に向かって発砲するであろうと言うことは想像に難くない。それを考えると、ISAFの存在が治安にどれだけ貢献しているのか、一方で悪くしながら一方では雇用機会を与えて安定させているというのも事実であるが、全体的に見れば、ISAFが来なければどうだったのか、私が経験したタリバン政権時代、皆さんがお嫌いになっているタリバン政権時代は、今の百倍は治安がましだった。ともかく、外国軍が入ってきてから治安が悪化したという事実はこれはどうしょうもない事実だ、これはアフガン人のほとんどが認めている事実だ。外国軍に対する嫌悪がある。食えないのでやむを得ず従っていると言うのが現実であり、私たちの作業現場、少なくとも下々から見た現場というものは、ほぼ100%が非常に反米主義的な傾向が強い。」

□伊藤さんの殺害は外国軍の干渉、米軍及びNATO軍のアフガニスタンの軍事介入と無縁ではない。
 伊藤さんの死亡を受けて政府が自衛隊派遣の口実にすることを、中村氏は「心穏やかでない」と怒りの感情を露わにする。さらにマスコミの批判にも言及した。

中村「伊藤くんの殺害は、外国軍の干渉、米軍及びNATO軍のアフガニスタンの軍事介入、あるいはパキスタンの軍事介入と無縁では無かろうと思う。その背景について責任を持つのが日本国家の政治家の責任ではないかと私は思う。何もこれで国を責めようとは思わない。我々が無防備だったとしか言いようがない。しかし我々としては最善の力を尽くしたと思う。背景についてもっと突っ込んだ議論があって良いのではないか。あのとき報道されたのは、中村代表は治安の認識の甘さを認めたと言う報道が大々的になされた。これは誤報であり、私がはっきりとバンコックで述べたのは、私を含め報道機関、それからいろんな日本の機関、日本国民、全てがこう言った認識が甘かったと言うことだ。中村代表が自分の治安の認識の甘さを認めたと言うことで矮小化されてしまった。」

□「給油はOEF(不朽の自由作戦=アフガン攻撃作戦)とは切れている」――こんな議論は、私には通用しても、現地の人たちには通用しない。
 公明党の浜田昌良氏は、新テロ特措法は、旧テロ特措法とは違い、OEFという陸上作戦とは完全に切れた関係になっていると主張する。海上阻止活動に給油している日本は空爆を支援しているわけでは全くないと。だが、これに対して中村氏は、そんな詭弁は国会では通用するかもしれないが、現地では通用しないと一喝する。

中村「それは私に通じても現地の人には通じない。それから、給油対象のほとんどであるパキスタンの軍隊、これが今大々的にパキスタン側から空爆している。言っていることは現地に対しては説得力はない。また、たとえ1%であろうと2%であろうと米軍に補給しているという事実、このことは現地に対して非常にアレルギーと言えるほどの反応を起こすという事は確実だ。」「内輪の議論であり、アフガニスタン、パキスタンではそういう議論は通じない。OEF内部での軍事活動、油がそういうところにいっていないといっても現地には通じない。」



以下、11月5日参議院外交防衛委員会の議事録の一部です

(文責:リブ・イン・ピース☆9+25)

佐藤正久「自衛隊が治安維持ではなく、民政支援のため現地にはいると言うことについてどういう要領で有れば現地の人とマッチングするのか?絶対マッチングしないとお思いなのか?」

中村哲「自衛隊派遣によって治安はかえって悪化すると言うことは断言したいと思います。これは、米軍、NATO軍の治安改善と言うことを標榜いたしまして、この6年間活動を続けた結果、結末が今。これ以上日本が、軍服を着た自衛隊が中に入っていくとこれは日本国民にとって為にならないことが起こるであろう。してはならないことと言うのは、これは国連がしようとアメリカがしようとNATOがしようと人殺しをしてはいけない。人殺し部隊を送ってはいけない。軍隊と名前が付くものを送ってはいけない。これが復興の要の一つではないか。」

佐藤「復興支援分野で自衛隊を運用すると言うことについては如何ですか?」

中村哲「お答えします。ならばJICAを全部引き上げて全部自衛隊員を送れば良いことでありまして、それじゃないとできないと言うのであれば、麻生首相自ら銃を握って前線に立ってもらいたい。その上で考えて欲しい。私は思います。」

佐藤「自衛隊が民政支援、復興支援を現地で行うこととJICAの方々を引き上げると言うことはどういうような関係があるのでしょうか?」

中村哲「これは明らかであります。自衛隊が復興支援に携わるというならば、現在、復興支援で死力を尽くしておられるJICAの方々の立場はどうなるのか。JICAの人々はただの付録なのか。自衛隊が銃を捨てて現在のJICAの仕事ができるのかということを考えますと、自衛隊がしゃしゃり出ていくのならJICAの支援もいらないということであります。又、NGOもいらないという議論になってくるのではないかと思います。私が言いたいのは、軍隊と名の付くものを、日本では軍隊とは呼びませんけれども、実質的にこれは国際的には軍隊です。軍隊と受け取られるものを現地に送る必要があえて復興というならば、あり得るのか。治安という意味ならば、先程民主党の方がご質問されたとおりでありまして、自衛隊を送らなくとも治安を守る、日本人を守る方法はいくらでもある。その道を探らずして、いきなり自衛隊が復興に出てくるのは私はおかしい、自衛隊派遣が7年前と同じ事を言いますけれども、有害無益、と私は強調したいと思います。」

佐藤「海外支援イコール自衛隊という考えは持っておりません。」「場所とか地域で使い分けをした方が良いのではないか。同じ地域で自衛隊とJICAの方がやると言う場合は今中村参考人が言われた懸念があるかも知れませんけれども、場合によっては、アフガニスタンでもいろんな地域がある。治安の状況によっては、JICAの方々がされるような復興支援を行う場所とあるいは自衛隊と言うものを使いながら復興支援する場所を使い分けしながら困っている人を助けるやり方も私はあろうかと思っている。これについて、力石参考人の方にお考えをお聞かせ願いたい。」

力石「自衛隊が来たら、中村参考人のように、やはり印象としては軍隊という印象を持たれますので、そうすると今まで民生中心にやってきた日本までがついに軍隊を送ったかとそういう捉え方をされてしまう恐れがあることが多々あると言うことは否めないと思います。その上で、それが可能かということは私の立場では何とも申し上げられないので確たることは言えないんですが、一般的には現地の武装勢力の人たちも事あるごとに声明を出しているあるいは警告を出しているように、外国の軍隊は全部出ていけと、外国人も全て出て行けと、繰り返し言っていることから推察すれば、自衛隊が歓迎されざる存在に映るのはおそらく知っているだろうと思います。ですから、使い分けができるかというのは非常に難しい判断だと思います。」

佐藤「復興支援の時に治安をどのように認識し、情勢から自分の身をどう守るのかと言うのが一つはポイントになり、あるいは地元の方に風呂とか食事とか無用の負担をかけずに自分で面倒を見る自己完結性の能力を持って支援をするという部分が今回我々がサマワに派遣された一つの要因ではなかったか。」「力石参考人にお伺いしますが、現地の方で実際に活動されております。その時の治安対策としてPMCと言われる民間の警備会社とかそういうものを実際に使われているのかどうか、その点についてお答え願います。」

力石「行く場所とかその時の状況によって、警護を付ける場合がある。そのような民間のセキュリティガード会社と契約を結びまして、必要な場合に必要な出動をお願いしているのが現状です。」

佐藤「場所場所で異なる。そこは私と同じ認識なんですけども、住民と一緒に活動をすると言っても場合にによっては100%安全確保というわけには行きません。」「自分の身の安全を守りながら復興支援を行う部分が基本ではないか。」「仮にISAFとか言う物が無くなったら、アフガニスタンの治安は改善すると思われますか?力石参考人からお願いします。」

力石「難しいお話ですが、ISAFが一定の治安抑止力を発揮しているというのは確かなことだと思います。二つの見方がありまして、ISAFが居るからあれだけで済んで居るという見方と、ISAFすなわち軍隊が居ること自体が治安を悪くしているという見方と両方可能じゃないかと思うんです。現地の人たちはおそらくそのような多様な意見を多分お持ちなんだろうと思うんです。ですから一枚岩で意見が一致しているということは多分無いので、ISAFが居なければどうかという推測はなかなか難しいと考えます。」

中村哲「私もほぼ類似の意見でありまして、背に腹は代えられない、と言うことで米軍の協力者となる。あるいはISAFの傭兵となる、と言うことが普通でありますけれども、一方、先程JICAの方が仰られましたように、今まで平和だったところがISAFが進駐したが為に混乱状態が起きるというのも事実でありまして、これは国軍兵士、警察はもちろん国軍兵士も含めて、アンビバレンツと言いますか、複雑な感情でおると。一旦事があるときは、国軍自身が米軍に向かって発砲するであろうと言うことは想像に難くない。それを考えますと、ISAFの存在が治安にどれだけ貢献しているのか、一方で悪くしながら一方では雇用機会を与えて安定させているというのも事実でありますが、全体的に見れば、ISAFが来なければどうだったのか、私が経験したタリバン政権時代、皆さんがお嫌いになっているタリバン政権時代は、今の百倍は治安がましだった。ともかく、外国軍が入ってきてから治安が悪化したという事実はこれはどうしょうもない事実だ、これはアフガン人のほとんどが認めている事実だ。外国軍に対する嫌悪。食えないのでやむを得ず従っていると言うのが現実でありまして、私たちの作業現場、少なくとも下々から見た現場というものは、ほぼ100%が非常に反米主義的な傾向が強いと言うことはお伝えするに値すると思います。以上です。」

佐藤「いろんな意見があって、背に腹は代えられないのかなと言う部分は私も感じます。しかしながら、治安の維持は復興支援を行う前提条件になりますので、それをどういう形で保っていくのかと。そのために警察、あるいは国軍の育成と言うものもアフガニスタンのカルザイ政権を支援する形で国連の機関とかあるいは日本とかあるいはドイツとかが行っているわけですけども。中村参考人にお伺いいたします。旧国軍兵士を武装解除、動員解除して社会復帰させる、DDRというものについて、インターネットの記事で昔見たんですが、中村参考人はどちらかというと批判的なコメントが載っていたと思っています。計画倒れに終わったという趣旨だったと思います。DDRはとりあえずアフガニスタン政府の意向としては終了し、そして非合法の武装組織の武装解除、社会復帰の方へ。ダイヤグというように呼んでいるようですが、これを行っている。このDDR、ダイヤグについての中村参考人の率直な評価をお聞かせ下さい。」

中村哲「DDR自身は、私はこれは動機は良いと言うように評価いたします。日本はそういった意味で、しかも、あれがたとえ結果がどうなろうと、あれができたのは日本が平和国家だと言うイメージを背景にしてできたわけでありまして、私はそれをやった人を悪く言おうとは思いません。ただその結末が、結局今の悪循環に組み込まれて、無駄に終わるんじゃないかと私は申し上げたのでありまして、その努力事態は、率直に大いに評価したいと思っています。以上です。」

佐藤「同じ質問を力石参考人にお願いします。DDR、ダイヤグに対する評価をお聞かせ下さい。」

力石「DDRにつきましてはJICAとしては成功事例だったと評価しております。ダイヤグに付きましては中村さんが仰ったように状況が良ければ通常は非常に効果を上げる手法だと思います。実際似たような手法で過去カンボジアなどで日本政府がいわゆるガンフリビレッジを作っていって武器を全部供出させていって村には開発の援助をちゃんとやっていく。アフガンについては今のような治安の悪化があると逆に武器を持っている農民市民が逆にそれを放したくないとそういう精神的な状況に追い込まれますから果たして武装解除が効率的に行われるかどうかと言うのはなかなか難しいかなというのが私の印象です。」

佐藤「治安を回復するやり方として警察、国軍を育成すると同時にDDR、ダイヤグをやっているわけですが、自分の身を自分のグループを守るためにいろんなことをやるのだろう。その基礎は情報収集。中村参考人にお伺いしたい。今治安情報はどのように吸い上げてそれを自分のスタッフの方に伝えているのか、そのやり方をここで言えるのであれば言って下さい。」

中村哲「これは皆さんに言えないこともあります。」

公明党・浜田昌良「中村参考人に敬意を持ちますが、政府の無償資金協力とかJICAとか外部とあまり協力されていないように見えます。資金面で国際的な機関とか日本とかを使うと何か問題があるのでしょうか?」

中村哲「100%内部資金と言っていますが、過去、外務省無償資金で車両の共用を受けたこともありますし、これは公的資金とは呼べませんが郵便局ボランティアが予算の4分の1を占めていたこともあります。現在、私たちの資金は郵便ボランティア資金よりも増えてきましたので、やはり郵便局としても少ないところに恩恵を及ぼそうといまのところ100%まわされております。肝心のご質問ですが、公的資金を受けますと非常に動きにくい点も出てきます。あまりに規制が厳しくて運用がしにくい、例えば組織でもらいますと非常に厳密な会計報告をしなくちゃいけないんで、そのために又一人雇わなくちゃいけない。そのために組織を守るのが主体になって肝心の私たちの事業がついそういう傾向になりがちだと言うことで今全て自己資金。例えば、年度予算にはないもの、必要だからと言うことで決定が速やかにできる。募金者、お金をくれる人を喜ばせるような宣伝をしなくて良いと言うこと、これが非常なメリットでありまして、お金があるから自分たちでやってお金が無くなれば政府に頭を下げてと考えている。」

浜田「伊藤氏殺害後の改善について。」

中村哲「これは二つありまして、一つはその組織、個人レベルでの防御態勢、もう一つは治安悪化をもたらす要因の対処、この二つが組み合わされないとこれだけというものはない。いくら日本が治安が良いからと言って無防備でいれば、新宿で刺されたりするわけでありまして、私たちは個人的な防御に付きましては、いろいろ対策を講じてきましたけれども、その具体的な方法は先程申し上げたとおりです。個人自身が気を付けなくちゃいけない。つい日本の感覚でふらふらと出てやられてしまうと言うことは避けたい。それが不幸にして起きてしまった。以前はそんなことは考えられなかったのに、なぜ起きたのか。これは外国軍の干渉、米軍及びNATO軍のアフガニスタンの軍事介入、あるいはパキスタンの軍事介入と無縁では無かろうと思います。その背景について責任を持つのが日本国家の政治家の責任ではないかと私は思います。何もこれで国を責めようとは思わない。我々が無防備だったとしか言いようがない。しかし我々としては最善の力を尽くしたと思います。背景についてもっと突っ込んだ議論があって良いのではないか。あのとき報道されたのは、中村代表は治安の認識の甘さを認めたと言う報道が大々的になされた。これは誤報でありまして、私がはっきりとバンコックで述べたのは、私を含め報道機関、それからいろんな日本の機関、日本国民、全てがこう言った認識が甘かったと言うことが、中村代表が自分の治安の認識の甘さを認めたと言うことで矮小化されてしまった。」

浜田「個人でできる対策、個人でできない対策、両方あると思います。空爆がなされている、爆弾が空から降ってくると言う表現もありましたが、ジェララバードかどちらかで中村さんが見られた経験はあるでしょうか?」

中村哲「私は落ちてくるところを見たことはありませんが、2001年以後、ソ連軍時代にはありました。最近の高性能火薬の威力というものはものすごいもので村全体が真っ黒になるように見える。我々落とす側の映像しか見ませんけれども落とされる側の映像というものがほとんどない。死んでしまうんですね。」

浜田「中村代表とは認識が違う点がある。先程の発言の中に、米国の軍事活動に協力していると知れ渡ってしまうと不安を感じると言う話がありました。今国会で審議している新補給支援法、前のテロ特措法は廃案になりましたので、新しい法律の場合は、OEFという陸上作戦とは完全に切れた関係になっているんですね。司令部は違いまして、陸上と海上組織活動とは。海上組織活動とは給油している日本は空爆を支援しているわけでは全くないんです。前の法律とは違って、日本はあくまでインド洋上で不信船があるとそれを無線照会して同意の元でチェックをするというものに給油をしているもので、航空母艦とかそういうものじゃないと言うことにご理解願いたい。」

中村哲「それは私に通じても現地の人には通じない。それから、給油対象のほとんどでありますパキスタンの軍隊、これが今大々的にパキスタン側から空爆しているわけでありまして、仰られていることは現地に対しては説得力はないと思います。たとえ1%であろうと2%であろうと米軍に補給しているという事実、このことは現地に対して非常にアレルギーと言えるほどの反応を起こすという事は確実だ。」

浜田「日本には米軍基地もありまして、そういう関係にあります。日本としてはあくまで空爆をしたりする部隊に給油をするものではないということを中村代表も理解いただき、現地の人の誤解を解けるようにご協力たまわりたい。又、国際の捉え方が違うのではないかというご意見も頂きました。」

中村哲「それは内輪の議論でありまして、アフガニスタン、パキスタンではそういう議論は通じない。OEF内部での軍事活動。油がそういうところにいっていないといっても現地には通じない。」

浜田「ISAF、OEFというものに協力している国は40数カ国ある。」「自衛隊はイラクで住民と良い関係を築けた。イラクでできてアフガニスタンではできないとは?」

中村哲「それは私もよく分かりません。アフガニスタンでは非戦闘地域は存在しない。あっても部隊が駐留すればそこが戦闘地区に。例えば我々の水路沿いに自衛隊が、あの大事な仕事を守らなければといって来れば我々としては大変迷惑な話。おそらく水路の作業員500名は全部武装して自衛隊に反抗するでありましょう。そういうことを考えますと、その辺はイラクとはずいぶん違う。自衛隊は出てくる必然性はない。」

浜田「私も自衛隊は行くべきものと思っていません。」

共産党・井上哲士「軍事力でテロは無くならないと私は実感として持っています。この点、中村参考人は現地におられて実感はどうでしょうか?」

中村哲「仰るように軍事力では絶対に無くなりません。無くならないどころかますます拡大していくだろう。過去6年間の経過を、ソ連軍の駐留の結果を見ても、これは火を見るよりも明らか。肝心の米軍自身が対話路線に切り換えつつある。と言うことは撤退もそう遠いことではないのではないか。」

井上「現在審議しているこの給油支援活動で日本が給油するのはあくまでもOEFに限ると政府は言うがそれは現地では通用しないと言われました。」

中村哲「OEFと同一視されていると思います。この誤解を解くのは容易ではない。実際、油だけではなく、いろんな米軍施設が日本の援助で建てられている。ジェララバード市内でもみんな知っている。これは米軍施設だけども日本の援助で建てられた、と言うことを皆堂々といっている。そういうことを考えるとこれを分けて考えるというのは、日本の中のコップの中のことで、普通は皆そう考えない。」

井上「外国軍が駐留する国民的感情とは?」

中村哲「これはカルザイ政権も含めまして、100%は言いませんけどもほとんどの人は反米的であると言うことは私は断言したいと思います。ただそれを口に出すと反米主義者、彼らは決して反米主義者なのではなくて、外国からやられるのが嫌いなんですね。しかしそれを言うとアルカイダに通じているだとか反米主義者だとか言う烙印を押されて過激派の味方だと言われるのでそれを恐れて黙っているだけ。内心、アフガン人のほとんどはほぼ反米的であります。確信を持って申し上げたい。」

井上「タリバンとは何か?」 「カルザイ政権に支持がないのはなぜか?」

中村哲「人々が期待するほどの生活向上が無かったと言うこと。それどころか以前よりも悪くなったと言うこと。今年の冬は特に500万人が餓死に直面し数十万人が死ぬであろうと言われた。あのとき、復興支援ブームが起きたときにはっきりカルザイ政権は言った。君らの衣食住は保障するから帰ってこいと言って難民たちを呼び返した。その結末がこれだと言う失望感。みんなが食えないと言うことです。それからカルザイ政権自身が外国の後ろ盾によって成り立っている政権だと言うこと。この二つが非常に大きな要因として、大きな不信感を生んでいる。みんなが言っているのは、政府が無い、と言うことを東部ではもうはっきりと言っている。米軍が引き上げると数日で崩れるんじゃないかと私が聞くと、いや数日じゃない、1分で崩れるという。こう言う政権に対する不信感。民生向上を無視して、民生を軍事活動に従属させてきたそのことの結末が今破綻となって現れているとこう理解してほぼ正確ではないか。」

井上「麻薬についてはどうか」

中村哲「ケシの栽培は、米軍の空爆以後、急速に広まったという事実。根底にあるのはみんなが食えない、小麦を作るよりケシを作った方が百倍収入が多いのでやむを得ず作るケースが多いと私は思います。貧困の絶滅以外にケシを無くす方法はないと思います。実際、私たちの感慨地域ではケシを作っている農家は一軒もありません。農村を豊かにすること、これ以外に根本的な方法はないと私は思っています。」
「現状を充分調査してから援助すべき。」
「みんなが食えない時に戦争によって食えない農民が米軍の傭兵、あるいは反政府勢力のの傭兵に大量に流れていくという悪循環を作ってしまった。これがアフガン復興破綻の現在の姿であろうと私は思います。」

力石「中村参考人の言ったとおり、アフガニスタンは本来豊かな農業国であった。」