信じがたいことに、田母神前航空幕僚長の参考人招致をする代わりに、新テロ特措法延長法案を採決するということで自民・民主両党が合意したと報じられています。全く本末転倒という他ありません。しかもこの参考人招致は麻生首相も参加せず、テレビカメラも閉め出された密室で行われます。全くのアリバイに過ぎません。田母神氏に好き勝手にしゃべられたら困るという政府の意図が見え見えです。民主党も追及姿勢だけを一応示して早く切り上げたいと考えているかのようです。 ※新テロ特措法:給油延長法案成立へ 前空幕長、11日に招致――参院委(毎日新聞) 今回の問題は、単に歴史認識問題などではありません。日本の侵略戦争の事実を否定し、集団的自衛権の行使を主張して憲法を公然と踏みにじるような人物が航空自衛隊のトップに上り詰め、その航空自衛隊が、ブッシュのイラク侵略戦争に加担し最前線に立つ武装米兵を空輸し続けているという危険きわまりない事実です。私たちは、すでにこの問題について基本的な見解を明らかにしましたが、それ以降も自衛隊の幹部教育や田母神氏とアパ・グループ代表との密接な関係など、驚くべき事実が次々と明らかになってきています。 ※田母神元航空幕僚長問題の徹底追及を!新テロ特措法延長法案を廃案に!給油活動を今すぐ中止せよ!(リブ・イン・ピース☆9+25) とりわけ、航空自衛隊が組織ぐるみで歴史ねつ造教育をやっていたという疑惑はこの問題の根深さを示しています。防衛省官房長が論文提出を事前に知っていたどころではありません。「真の近現代史観」の懸賞論文の応募作235編のうち78編、実に3分の1が航空自衛官からの応募だったといいます。田母神氏自身が多数の自衛官に懸賞を紹介していました。そして幹部教育を行う航空幕僚監部教育課が全国の部隊に応募を呼びかけていました。この論文執筆が幹部教育の一環としてやられていたというのです。「日本は侵略戦争をやっていない」「集団的自衛権を行使できるべきだ」等々、政府見解と違う教育が、自衛隊内で露骨に行われていたことは大問題です。しかも空自の部内報でも田母神氏の同様の見解が掲載されていました。 ※前空幕長投稿の懸賞論文、空自の78隊員も応募(読売新聞) 私たちは、田母神氏のような人物を空幕トップに任命したこと、そのような人物がトップに上り詰めることが出来る体質が空自に存在していること、組織ぐるみで歴史ねつ造教育が行われていたこと、田母神氏の辞任拒否に押し切られる形で「定年退職」にしたことなど、この問題についての政府の責任を明らかにすべきだと考えます。問題は空自にとどまりません。また、麻生首相は、田母神氏の論文に対して「適切でない」などとお茶を濁すだけでなく、日本の侵略戦争がアジア・太平洋諸国に多大な犠牲を強いたこと、歴史歪曲は許されないことをきっぱりと自分の言葉で語るべきです。 5日の参院外交防衛委員会で、参考人として出席したペシャワール会の中村哲氏は、「外国軍隊の空爆が治安悪化に拍車をかけている」、今の給油活動も「掃討作戦の一環である」、自衛隊の本土派遣は「百害あって一利なし」等々、インド洋やアフガニスタンへの派兵を厳しく批判しました。それは、8月にアフガニスタンで殺害された伊藤和也さんの遺志でもあるはずです。新テロ特措法採決=アメリカのアフガン侵略戦争加担を取引材料にするなど絶対に許されません。田母神前航空幕僚長問題の責任追及、新テロ特措法採決反対を徹底して要求しましょう。 2008年11月7日
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