パレスチナ連帯シリーズ(その12)
空中投下と海上輸送はまやかしの人道支援
イスラエルは飢餓攻撃をやめ、通関を解放せよ

 迫りくる深刻な飢餓。国連の関連機関はガザで110万人が飢餓状態に直面していると警告します。現に乳幼児、子ども、病人や老人がバタバタと倒れ、命を失っていく事態が始まっています。ガザは南部の人口が密集した避難地ラファへのイスラエル軍による攻撃だけでなく、飢餓によるジェノサイド(大量虐殺)に直面しています。

飢餓によるジェノサイドの犯人
 飢餓によるジェノサイドの原因はどこに、誰にあるのか。メディアはそれを真正面から報じません。しかし、飢餓ジェノサイドの責任は「戦争一般」ではなくイスラエルにあります。イスラエルはガザ北部と中部から市民を追い出し、150万人の住民を南部ラファ付近に強制移動させました。避難民たちは家を破壊された上、水も食料もなく、トイレも医療もない劣悪極まりない状態で狭い地域に追い込まれたのです。
 そしてイスラエル軍はそのラファを攻撃しようとしています。ラファはエジプトから入国する検問所があり、ラファを攻撃すれば人道支援物資の搬入がとまります。最大の問題は、イスラエル自身がさまざまな口実を付けて人道支援物資の搬入を執拗に妨害していて、人々が生存できるだけの物資を搬入させないようにしていることです。米国は、国際司法裁判所ICJがイスラエルに「ジェノサイド防止命令」を出すのを阻止できなかったので、カウンター行動として17か国と一緒に人道支援物資の最大の供給者である国連パレスチナ難民支援機構(UNRWA)への資金遮断を行いました。UNRWAは資金の不足によりすぐにでも機能停止になりかねません。日本政府も米と歩調を合わせてガザ市民を飢え死にさせる第2のジェノサイド攻撃に加担していいます。
 ガザの市民を死に追いやっているのは、イスラエルによる空爆、地上攻撃と、イスラエルと結託して米国と同盟国が行っている飢餓攻撃、飢餓ジェノサイドなのです。

イスラエルの飢餓攻撃を批判せず、空中投下を賞賛するメディア
 メディアが今大きく取り上げて宣伝しているのは人道危機を「緩和」するために米軍等が食料を空中投下している姿です。あるいは海上からNGOが食料を輸送し、バイデン大統領が仮設の桟橋をガザに作るよう米軍に命令したというエピソードです。まるで米政府と米軍が人道危機打開のために働いているかのような書きぶりです。
 しかし、それは根本的に間違っています。ガザに運ぶ食料や水がないのではありません。ラファの外には数千台のトラックが通関を待っています。イスラエルの検問所制限のために20日も待たされているのです。このトラックを通関させれば、ガザの飢餓発生は食い止められるのです。
 止めているのはイスラエルです。さまざまな難癖をつけて(例えば医療用のはさみが積み荷にあるだけで追い返される)トラックの通関を妨害しています。さらには市民を使ってトラックの前をふさぎ通行できないようにもしています。ガザに入ってからもイスラエル軍がトラックとその警備員、警官を狙い撃ちにするので、人道支援物資の運搬は困難を極めています。メディアはなぜイスラエルのやっていることを取り上げ、その責任を追求しないのでしょうか。検問所を人道支援物資に対して解放するよう要求しないのでしょうか。
 繰り返しますが、戦争だから食料が入らないのではありません。イスラエルは占領軍として住民に食料・水を供給する国際法上の義務を負っています。ところがそれを果たさないばかりか、逆に食料・水の遮断を武器として飢餓攻撃をかけているのです。

1日500台、5000トンの物資が必要で、可能なのはトラック輸送だけ
 2月の検問所通過トラック数は一日平均100台弱です。人々が生きていくのに必要な物資を届けるには1日500台は必要といわれます。現実に昨年の10月以前はそれだけの台数が入っていました。1日100台では圧倒的に足りないのは明らかです。。100台のトラックが運ぶのは1000トン余りです。230万人で割れば一人あたり430gに過ぎません。食料だけではなく、水も併せての量です。こんな量で生きていけるはずがありません。
 メディアは、イスラエルの飢餓攻撃を批判せずに、米軍等が空中投下や海上輸送で飢餓の緩和を試み、人々を助けようとしているかのように描き出します。イスラエルの食料遮断を批判し、検問所を解放させずににどうやって助けるというのでしょうか? 空中投下や海上輸送はイスラエルの承認と協力のもとで行われています。関係する国は米を始めイスラエルのガザ攻撃を支持している国です。だから、空中投下や海上輸送は、深刻な人道危機を起こしているという非難をかわし、イスラエルの攻撃を正当化するために行われているのです。
 飢餓の「緩和」はまやかしの宣伝です。1機の輸送機からの投下量はトッラク1台分より少し多いだけです。少数の輸送機がパラシュートで食料や水をばらまいても、食料の圧倒的不足は全く補えません。米国はいいことをしていますという宣伝効果だけです。海上輸送はどうでしょう。今、ワールド・セントラル・キッチンというNGOがキプロスからガザ市に最初の荷を運びましたが、200トンを運ぶのに数日がかりでした。トラック20台分に満たないのです。そして天候悪化で次の便は遅れています。バイデン大統領は、米軍にガザに設桟橋をつくり船舶による輸送を行うよう命じましたが、桟橋の完成は数週間後です。大規模な飢餓が発生し多くの人が倒れた後に桟橋はできるのです。人々の命を救うつもりならば、なぜ今すぐ国境を開放するようイスラエルに要求しないのでしょう。人道支援はやっているという政権にとっての宣伝、得点稼ぎに過ぎません。

海上輸送や米イスラエルの陸上食糧輸送が作る市民分断
 空中投下や海上輸送、新しいルートの陸上輸送、これらはすべてイスラエル軍の支配の下で行われています。輸送先はイスラエルが占領する北部のガザ市です。海上輸送や陸上輸送でガザ市に運んだ食料は、誰が警備し、誰が分配するのでしょう。警備はイスラエル軍です。イスラエルは、分配をハマスに従わない、反ハマスや非ハマスの地元勢力にさせようとしています。それに従わない地元の指導者をシファ病院で暗殺したりしています。イスラエルが目指す直接占領に手下として協力する部分を作り出し、ハマスを切り崩そうとしているのです。食糧支援、飢餓さえ占領戦略に利用しようとしているのが実情で、それを賞賛するのはばかげたことです。
 パレスチナ人が警戒するもう一つの危険は海上輸送にあります。いま、ガザからの出口はラファにしかありません。そしてラファの向こうのエジプトは、イスラエルがガザの人達を国境の外側、エジプト側の追放することを拒否して人々の通過を認めていません。これはエジプトのエゴ(一部のメディアはそう書きます)ではなく、占領地の市民の強制移動や追放は国際法違反であり、住民の追い出しは許されないからです。しかし、イスラエル軍の支配するガザ市に架設の桟橋をつくり、大型船が着岸できるようになればそれを「難民輸送」に使うことができるようになります。イスラエルはかねてより欧州諸国に200万人くらいのパレスチナ難民を引き受けろと要求してきました。仮設の桟橋を作れば、イスラエルの船によるガザ市民追い出し、民族浄化とイスラエル人のガザへの再入植に道を開くことにつながるのです。

国連安保理決議に基づきイスラエル政府を孤立させよう
 米国などによる食糧支援の空中投下などはまやかしの戦争プロパガンダの一環です。3月25日の国連安保理決議2728号は即時停戦とともに食料や医療など人道支援の確保(大幅増)を要求しています。人々の命を救うには、まやかしの人道支援パーフォーマンスではなく、停戦と人道支援拡大をイスラエル政府に要求し、国際的圧力をかけるように、自国の政府に要求しなければなりません。私たちは日本政府に対し、安保理決議に従い、一時停戦だけでなく恒久停戦を要求すること、飢餓ジェノサイドへの加担をやめUNRWAに対する資金拠出を再開することを要求します。イスラエルの戦争に協力する企業のボイコット、政府によるイスラエル軍需企業からの武器購入の中止を要求します。

2024年3月28日
リブ・イン・ピース☆9+25

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