リブ・イン・ピース第2回オンラインカフェ
「宮古島ミサイル弾薬庫反対運動の状況について」
報告

 2020年10月11日(日)に「宮古島のミサイル基地化の現状と日米の対中国軍事戦略」と題してリブ・イン・ピース☆9+25が第2回オンラインカフェを開催、宮古島保良地区在住の下地茜さんから「宮古島ミサイル弾薬庫反対運動の状況について」の報告が、会員の吉田正弘さんから「日米の対中国軍事戦略の動向」という報告が行なわれました。

「宮古島ミサイル弾薬庫反対運動の状況について」
宮古島ってどんなところ
 地図で宮古島が小さな島でどんなところに位置するか示されました。南西諸島の真ん中が沖縄本島、北側が奄美大島、屋久島、種子島で薩南諸島、南側が宮古島、石垣島、与那国島で先島諸島と呼ばれる。
 南西諸島での陸上自衛隊配備について、宮古島の弾薬庫建設は沖縄の米軍基地の問題に関わっている人の中でもあまり知られていない、また沖縄本島、宮古島、石垣島それぞれに状況も違うとのことです。はじめに石垣島での出来事が説明されました。 

石垣島でおこったこと
 石垣島は石垣市の合併の際、自治基本条例が作られた。その条例には住民投票の実施を求められる項目が存在し有権者の4分の1の署名が集まると市長は住民投票を実施しないといけない。しかし昨年12月に陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票実施に必要な4分の1以上の票が集まったが、石垣市長は住民投票実施とは逆に市議会に自治基本条例を廃止するという条例案を出してきたという。そしてそれは賛成10、反対11とギリギリのとこで否決された。それで市議会に住民投票の請求を提出したが、否決された。また住民投票を実施しないのは条例違反であると那覇地裁に申し出たがこれも棄却され、石垣島はいま目が離せない状況である。

宮古島の状況
 一方、宮古島では宮古島市が合併されたときに自治基本条例は作られなかった。条例が存在しなくても住民投票の権利と市議会に提出するも拒否される状況にあった。石垣島と宮古島での大きな違いは保守系と革新系の議員の数で、宮古島には保守系が多く長いものに巻かれる傾向がある、とのことでした。
 そして歴史的に見て同じ境遇であっても、それぞれの問題で手が一杯で自分たちなりに解決していかないといけない状況にあるのかなと思いますとも言われました。
 宮古島は少し前までバブルの状態で公共事業をかなり発注してお金がジャブジャブした状況だったこと。経済はさとうきび、葉たばこ、和牛の生産、観光業、なかでも存在感が大きいのが建設業であること。その理由には合併特例債(7割は国が出してくれて最終的に3割くらいしか返さなくていい)という国が地方に貸し付ける割のいい制度を95%利用して15年間、市役所や市未来創造センターを造ったりして公共事業に依存してきた背景があるとのこと。そして今年、宮古島はその特例債の上限額を使い切ってしまい、工事をすることで潤ってきた建設業が、今度は陸自配備に依存していく現実がある。例えば、隊員宿舎の建設、基地の建設、周辺対策の補助金で工事をするいうこれからも補助金を利用して依存していくと感じるとのことだった。そういった状況で陸自配備がすすんだ。

陸自配備計画の問題点 大福牧場から千代田地区へ
 2016年の陸自配備計画発表では建設会社の土地であった「大福牧場」が候補地となった。しかし「大福牧場」は地下水保全区域の真上にあり、施設をつくることで水質の汚染があると地下水審議会によって判断が下された。宮古島市長は審議会の審査は不必要と事実を公開しなかったり、言い逃れをしたりしたが、市長による報告書の改ざん要請が暴露され、これが大きな問題となり「大福牧場」での配備を変更せざるえなくなった。代わりにり「千代田カントリークラブ」が候補地に浮上した。
 「千代田カントリークラブ」は宮古島の真ん中にあって、あまり大きくない土地だ。そこに陸自の基地が建設された。防衛省はそこには弾薬庫を建設しないと住民に約束していたが、代わりに「保管庫」というものの建設が図面上にあった。しかし、出来てみたら火薬を貯蔵する標識が掲げられており、中距離多目的誘導ミサイルの弾薬が保管されていることが明らかになった。防衛省に確認すると当時の防衛大臣、岩屋氏が謝罪し、弾薬は一旦撤去された。
 水質問題で「大福牧場」から千代田地区に変更となったが、千代田地区には断層が走っていて丁度その上に駐屯地が建設されている。そのうえ地盤が軟弱だと言うことが調査でわかり、特に燃料タンクの下に大きな空洞があって、もし地震があったら大きな事故につながる可能性がある、地下水の保全地域に近いし、地下水はどこでも流れているので汚染されたら宮古島全体の地区に影響がある。

保良地区の弾薬庫建設と活動報告
 千代田地区の用地では当初予定していた「大福牧場」より小さいということで保良(ぼら)鉱山に弾薬庫を建設する話がでてきた。
 公式の発表の前に「保良弾薬庫反対!住民の会」を立て、地域としては配備に反対という決議案を可決したにもかかわらず、防衛局は昨年10月に工事に着手した。これ以降抗議活動をするようになり座り込み行動、細長い道をぐるぐる歩きながら、踊ったり歌ったりスピーチをしているとのことで、反対行動の写真も紹介していただいた。その反対運動の土台をつくってくれたのが運動当初の2〜3ヶ月間、共に行動をしてくれた辺野古基地反対活動をされてる山城博治さんだったとのこと。山城さんに言われた「なによりもよりも長く続けること、ここに来た人に義務感を感じさせない、ネガティブにならない」などの言葉を受けて下地さんたちも楽しく励まし合ったりしながら運動を続けているとのことでした。
 そして現場活動以外に昨年12月には東京に行き防衛省と経済産業省との政府交渉、院内集会を行い、また沖縄県知事に宮古島に来てもらうように要請したとのこと。
 この一連の行動の中で現地の抵抗活動をするのもかかせないことだけども、それと並行する形で行政のルールのもとで意思表示をしていくことの必要性を感じた、いくら現地の住民が反対しても市や県が動かないと中々難しいと感じてるいるとのことでした。

配備に反対する理由(対政府交渉で明らかになったこと)
1)住んでいる家にすごく近く、保良は南側にながらかな坂になっており、その先に弾薬庫がつくられるとしている、もし事故があったらと心配。
 それで、防衛省にいくら弾薬を保管するのか聞いても防衛上の機密で言えない。たとえば保良には弾薬庫が3棟つくられるのため、火薬取締法の3倍なのかと交渉の際に聞いても、加算するという法律もないし、しなくてもしてもいいという法律もない。など本来であれば市民と議論してどの解釈が正しいのか議論の必要があるのに防衛省と経済産業省が共有して市民に対して見えないようにしている。
2)塩化水素ガスの問題。
 水に溶けると塩酸になり目に入るとやけどなど影響があるが、この危険性に対してどうするかとたずねると、防衛相は事故が起こらないように気を付ける、事故が起こった場合の対応は想定してないのかと聞いても長い沈黙だけ。
3)ミサイル発射の際に民間の地域に落下の可能性があるブースターの問題に対しては、市街地を避けるという返答。保良や近くの地域は農村地域だとわかってるので、市街地なのかと確認すると沈黙。
 
 政府交渉に同席していた福島瑞穂議員がシミュレーションを出してくださいと書類の回答をお願いしたら、それに対しての防衛省の回答は同じ市街地を避けるとか事故が起こらないようにするとかの内容だったとのこと。

他の自治体には説明しながら宮古島には秘密のベール
 防衛省は国家機密で言えないと言うが、宮古島に対してはあまりに説明が不足している。千葉県習志野の駐屯地での火薬の保管量は明らかになっている。秋田県、山口県のブースター落下区域に対して防衛省はシミュレーションを提出し、塩化水素ガスについても説明が書いてある。一方、宮古島では火薬の保管量に関しては具体的なことはなく、塩化水素ガスについては事故が起こらないように気を付ける、ブースターの落下に関しては市街地を避けてると他の自治体に比べて曖昧の回答である。

国民保護法
 特に秋田県のイージスアショアの配備が中止に追い込まれていく空気が伝わってきたということで、去年の5月に防衛省が出した調査報告書に事実の報告と異なるとデータが使われていたというスクープがあって、それを受け秋田の佐竹知事が県有地を売却する議案提出ができないと発言、地元の県議会なども反対請願をどんどん採択していくという状況であった。その際、佐竹知事が住宅地になんらかの影響があった場合に、どうするということについて国民保護法での対処と言うのは乱暴で、完全に安全といったことを住民に具体的に示す必要があるですよと言った。国民保護法は自衛隊の管轄でなく地方自治の管轄で、なにかあれば地方自治体でしてくれと防衛省がいうのは乱暴ではないか。ということを言われた。
 で、宮古島配備される自衛隊の部隊は災害救助でなくミサイル部隊がくる、トラックの荷台に車載のミサイルがくる、このミサイルを乗せたトラックはかなり移動し走りまわる、ミサイルを発射する部隊になるとリスクはかなり高くなる。これに際し住民をどうやって守るかというと、国民保護法になる。なにかあれば自衛隊は自主的に動くことはなく、あくまで市町村の指示のもとで、有事の復旧要請もあくまでも市町村が主体となる。
 2016年、「お母さんたちの会」がミサイル配備の容認を考えているのなら避難計画を作成する必要があるのではないかと質問すると、それは難しいとの回答だった。国民保護法を知っていたのならそれはおかしいのではないか。個人的には宮古島の地方自治の長としてはとしてはどうなのかと思うとのことでした。

 超党派の国会議員で沖縄県の米軍基地の問題を省庁にヒアリングする会のことが参議院の石橋議員のフェースブックに重要な内容だったのでと紹介された。防衛省は常日頃万が一の時、有事の際には地方自治が定める国民保護計画に基づいて対応をされると伝えている。これを受け石橋議員は国民保護計画は宮古島市によってきちんと作成されるのか、防衛省から作成のためのデータや情報は提供されているのか質問したが、防衛省は弾薬庫か建設されることを反映した国民保護計画は作成する計画もデータも提供する計画はないとのことでした。市が作成した宮古島のホームページの国民保護計画は一般的なことしか書いていなく、避難パターンとしてどう避難させるかのシミュレーションには住民を避難場所に集めて空港とか港とかを使って避難させる漠然とした計画で、人口5万5千の人をどうやって逃がすのか非現実的な上、危険性を考えると宮古島が有事に巻き込まれた時に宮古島の市民を守ると言うプランはかなり難しいことがわかる。それであるなら市長は保護計画を立てるか、立てられないのなら配備を受け入れるべきではないと思います。

最後に
 この問題3年間つきあって、はじめは防衛省に対する怒りがあったが、最後の結論として市民を守る主体は自治体である、自治体が国と対等に交渉してこそ、市民の権利を守ることができるのではないか思うとのことでした。(文中の図版は下地さんの説明資料より)


「米日の対中国軍事戦略の動向」

 後半は会員の吉田さんの報告で、2つのポイントについて報告がされました。この報告の中身は、南シナ海での米空母の異常な動向について上げています。今後もう少し詳しい内容を挙げる予定ですが、ここでは簡単に紹介します。
 1つは、中国が軍事的脅威とか軍事的挑発をしているという報道がながされているが本当なのかどうか、疑わないといけないという点で、ちまたの宣伝とは逆でアメリカの方が軍事的な挑発をしているのではないかということでした。
 そのきっかけは7月の初めから8月の中頃までにアメリカの空母2隻が3回南シナ海に入ったという記事。裏付けを試みたところ、米空母がかつて例がないくらいの特異さと回数で南シナ海に入って演習をしている。
 米軍による航行の自由作戦も増えていて米軍艦を南シナ海のいわゆる中国領と言われている島、岩礁の数キロ先のとこまで行くという包囲行動もされてること。勿論、中国も演習をしているのですが、遙かにアメリカの方が活発に活動をしていることが報告されました。

 もう一つはのポイントとして相手を悪魔化する、中国を悪者にするとどうなるのか、それを背景に何をしたがっているのかと言う点に関してでした。
 7月23日のアメリカのポンペオ国務長官が中国共産党打倒ということまで演説で言い切ったこと。打倒するまで妥協の余地はなく、共存の対象にはならないという姿勢を取ってる、このことが最大の問題である。この姿勢がベースで今のプロパガンダとか軍事的挑発が起こっているのではないかと考える必要がある。貿易摩擦、グローバルな生産から中国を切り離して世界経済から放り出してしまうという、動きをしている、政治的、経済的、軍事的に中国包囲と戦争にはならないが冷戦という戦争に近い政策をとっているのがアメリカであるとの報告でした。

 

2020年10月29日
リブ・イン・ピース☆9+25

※リブ・イン・ピース☆9+25のホームページで、シリーズ「新冷戦」に反対するを連載中です。