12月11日、大阪市内で講演会「自民党が狙う「緊急事態条項」の危険」を開催しました。約50人が参加しました。 安倍首相が2021年9月までの自民党総裁任期延長を手に入れ、憲法審査会に野党を巻き込み、改憲の第一段階として緊急事態条項や「新しい人権」を強行する危険が出てきています。 講演の前に約7分のアニメ映画「戦争の作り方」を観ました。戦争する前段階として言論の自由の圧殺や国家機密の保持、首相への権力集中などが起こることを、今の日本の状況と重ね合わせながら描いています。 講師の永井幸寿弁護士は「もうこのビデオを観るのは10回目くらいだが、何回観ても泣いてしまう」と切り出し、パワーポイントを使いながら講演を進めました。永井さんは1995年の阪神淡路大震災で事務所が全壊するという経験もあり、日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長を務め、その立場から自民党の狙う緊急事態条項に警鐘を鳴らしてきました。講演は前半が主として「憲法論と国家緊急権」についての法律論的な内容、後半は「東日本大震災と緊急事態条項」など具体的な事例を通じた危険性の説明です。 以下いくつかのポイント。 ・緊急事態条項は危険極まりない。「国家緊急権」を憲法条項に盛り込まれるといつでも独裁政権に移行できる。法律で要件を付け加え、際限なく権力を強化できる。明治憲法での「戒厳」も最初「戦争もしくは事変」だけだったが、自然災害にも適用されるようになり、関東大震災では軍の自警団への指示権付与等によって朝鮮人大虐殺が起こった。パニックではない。治安維持法も緊急勅令で死刑が入るなど重罰化し、共産主義者だけでなく自由主義者も弾圧の対象となった。 ・国家の利益の名のもと、時の政権の好き勝手にできる。人権の制限も、邪魔だと思えば、危険だと思えば、非常事態と宣言してつぶしていける。韓国の朴政権退陣デモみたいなものも弾圧の対象になる。 ・「ナチスの手口を学べ」と言ったが、それ以上のものだ。ナチスはワイマール憲法、緊急大統領令、全権委任法、独裁確立と段階を踏んだが、自民党改憲案が実現すれば一気に独裁確立になる。 ・戦争を行うことと国家緊急権はセットだ。戦争に国民を総動員するためのもの。だから、九条を持つ日本に国家緊急権がないのは当然。憲法制定過程で国家緊急権をどうするかが問題になったが、大日本帝国憲法下での反省から日本国憲法から排除したという経緯がある。 ・政府は、“国民の命と財産を守る”とか言っているがウソだ。国家緊急権は国家のための制度だ。国民のための制度ではない。人権保障、権力分立を停止することだ。 ・災害にどう対処するのかは現地、現場が一番よく知っている。災害で重要なのは現場。個々の被災者を救済するためにどうすべきかが全ての出発点。災害対策は、現場で被災者の話を聞き、被災状況を調査して、課題究明、将来の対策策定に役だてる。 ・法律や制度の適正な運用による事前の準備がなければ、災害の起こった後、権力を集中しても何もできない。準備していないことはできない。災害の時国家緊急権はいらない。 ・特に日本では、国民性として権力に対する警戒心がない、革命や独立の歴史がないなどの弱点があるため、国家緊急権を認めるのはきわめて危険。 ・“災害をダシにして憲法を改正してはならない」(被災者の言葉) 等々。 質疑応答では、“緊急事態条項は、結局大規模な労働争議・集団示威行動、つまり反政府行動を弾圧するためのものではないか”等の質問がありました。 最後に特別報告として「沖縄高江の状況と座り込み行動への参加報告」があり、オスプレイパッド建設強行で緊迫する高江への行動支援と「本土」大阪での宣伝・暴露活動の必要が呼びかけられました。 ※講演会開催にあたって ※アニメ「戦争の作り方」 ※憲法に緊急事態条項は必要か (日弁連災害復興支援委員会元委員長 永井幸寿弁護士) ※アンケート結果 2016年12月20日 |
Tweet |