オスプレイはマニュアルとフライトシミュレーター通りに飛ばすと墜落する ・ 2010年4月9日、空軍仕様の新しいCV-22オスプレイが、アフガニスタンで墜落した。4人の兵士が死亡、16人が負傷した深刻な事故だった。しかし事故の調査は、フライトレコーダーが「行方不明」となり、生き残った副操縦士も「記憶喪失」になって事故の真相究明が不可能として原因不明扱いになったため論争の的となった。 ・ 空軍が発表したフライトレコーダーの「行方不明」の理由は極めてお粗末なものだった。第一は、捜索隊がフライトレコーダーの装着場所を知らなかったため、そしてもう一つは戦闘地域で十分な捜索時間がなかったためというもの。しかし事故現場は基地の近くで、いくらでも整備員を派遣できたし、しかも戦闘地域でもなく、2時間余り現場で捜索活動が可能だった。さらに軍は、「タリバンがリバースエンジニアリングでオスプレイの複製を作るのを防ぐため」と称して、完全に機体を焼却してしまった。完全に証拠は隠滅された。 ・ パイロットのランデル B ボアス少佐は、空軍で最も豊富にCV-22の操縦経験を有するパイロットの一人だったが、同機で重い搭載物を積んだ飛行経験は少なかった。彼はティルトローター機の持つ固有の危険性を身をもって経験することとなった。 ・ V-22の公式発表された垂直離陸可能な飛行場の標高限界は、同機の通常の搭載量である47,000ポンドの離陸総重量(燃料とペイロードを含む)時で5,400フィートとされている。これはボーイング/ベル両社のウェブサイトにV-22のスペックとして掲載されている。(ただし同規模の最新のヘリコプターでは、同じペイロードで2倍の高度でホバー離陸できるので何の自慢にもならないが。)しかしこれはあくまで「目標値」に過ぎなかった。 ・ OPEVAL(V-22に対する軍の運用能力測定テスト)で非常に低い能力しかないことが判明した後でさえ、飛行マニュアル(NATOPS)に記載されたV-22の地面効果外(Ground Effect :HOGE=Hover out Ground Effect)の垂直飛行能力に関する性能チャートは、古い性能「目標値」に基づいたままになっている。 ・ これらの「性能目標値」は、オスプレイの飛行マニュアルにそのまま実績値であるかのように記載され、訓練用フライトシミュレーターのプログラムを作成する際にも採用された。 ・ ボアス少佐は、上記の「目標値」に過ぎない性能チャートと、そのチャートに基づいてプログラムされたCV-22のフライト・シュミレータでの訓練結果を信じて、彼が命じられた任務は達成可能であると判断した。 ・ しかし、録画されたビデオ映像には、事故機が着陸に備えてヘリモードに切り替えるためローターを垂直方向に回転させた後、岩のように落ちていったことが明瞭に記録されていた。それはCV-22が、ホバリング不可能な状況にもかかわらずそれを実行しようとして墜落したことを物語っている。 ・ ビデオ映像の分析では、機体はフライトシミュレーターでは毎分200フィートで降下するはずが、実際にはその9倍の1,800フィートで降下して地面にたたきつけられたことを示していた。 ・ 事故の教訓は明白だった。オスプレイは、フライトマニュアルを守り、フライトシミュレーターでの訓練を経て、機体が何も故障していなくても、墜落するということだ。これは軍がオスプレイの水増しされた性能数値(目標値)を実績であるかのように鵜呑みにしたことによる当然の結果である。 http://www.g2mil.com/V-22mishaps2010-12.htm しかし防衛省は、欠陥フライトシミュレーターを絶賛している ・ 予想されていたことだが、先に見た防衛省発表のモロッコの事故の報告書には、この欠陥フライトシミュレーターを絶賛する記述が記載されている。 防衛省「モロッコにおけるMV−22墜落事故に関する分析評価報告書」より ・ 「ア 模擬訓練装置(シミュレータ) 分析評価チームが視察したシミュレータは、極めて精巧であり、実地に近い環境を再現できるものであった。また、これにより、実際に危険な状況に陥ることなく、MV−22の性能の限界まで経験することができるものであり、シミュレータによる教育訓練効果は極めて高いものと考えられる。このことから、シミュレータを多用した訓練について問題は認められない。」http://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/osprey/dep_1.pdf 結論 ・ オスプレイは紛れもなく失敗作であり、完全に整備された状態でも、マニュアルを守り、フライトシミュレーターの訓練をいくら積んでも墜落する。性能はすべて水増しされており、到底実戦部隊が訓練飛行に使用できる代物ではない。モード遷移時はもちろん、ヘリ・固定翼機の両モードでも簡単に失速し、それを防止するための安全対策は備わっていない。絶対に飛行訓練させてはならない。 (おわり) (その一) (その二) (その三) (その四) |
Tweet |