シリーズ:オスプレイ固有の根本的な危険性 はじめに:
・ V-22は「ヘリコプターと固定翼飛行機両方の利点を兼ね備えたティルトローター機」として開発されてきた。 実現すればおいしい話だが、結局のところ期待された性能は発揮できず、過去に山ほどある試作機群と同様の惨めな結果となった。 ・ にもかかわらず、ボーイング/ベル社は、老朽化したCH-46との代替え需要を当て込んで、退役した海兵隊の将軍たちを抱き込んで、なりふり構わぬ宣伝で、強引に売り込んできた。 http://www.liveinpeace925.com/us_base/osprey_is_still_unsafe.htm ・ 陸・海・空と海兵隊の4軍統合機種として開発が始まったが、当初メーカーへの要求項目のまとめ役だった海軍は早々にその任を降り、陸軍もティルトローターの限界を早期に察知して参加を取りやめた。今では実質的にメインのユーザーは海兵隊だけとなってしまったが、これまでの3軍のおこぼれ頂戴という立場から脱して初めて主契約者になれたことで、海兵隊はその武器調達予算の大半をつぎ込むまでにのめり込んでしまった。海兵隊はオスプレイと心中する様相になってきた。 http://www.g2mil.com/qalat.htm 高騰し続ける価格 ・ 2008年に国防総省は、オスプレイを360機調達して、およそ30年以上運用するとした場合のライフタイムコストを計算し、総額750億ドルと見積もった。しかし3年後の2011年にそれは61パーセント増加し、1210億ドル以上とされている。原因は、当初1,000機に上るとみられていた調達数が減少して単価が上がったことと、相次ぐ設計改修による開発費増と複雑怪奇な機体構造によるメンテ費用の増嵩が大きな要因となった。 ・ 現在、オスプレイ1機の購入費用は少なくとも6,000万ドルになるとされている。これは海軍の戦闘機FA-18スーパーホーネットよりも高価である。そして、頑丈なヘリコプター・UH-60ブラックホークは、オスプレイの4分の1・1500万ドルで入手でき、その能力は速度以外のすべてでオスプレイを凌駕している。 ・ しかしオスプレイは、初飛行から20年以上経過し、上記のように多額の費用をかけて設計変更と改修を重ねてきてもまだ事故は続いている。 オスプレイの設計上の固有の欠陥は周知の事実となってきている。その存在そのものがスキャンダル化してきている。タイム誌は「空飛ぶ恥」と題して批判した。 http://www.wired.com/dangerroom/2011/12/osprey-costs-soar/ http://www.g2mil.com/V-22Amishaps.htm http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,1666282,00.html ・ これらのことが、海兵隊とその背後にいる国防総省と米政府を、なんとしても沖縄配備をゴリ押ししてでも「オスプレイの実用化」を演出せざるを得ない状況に駆り立てている要因である。しかしそれは、日常的に危険にさらされることになる沖縄県民をはじめ全国民にとって許しがたい暴挙である。 固定翼機としての危険性 ・ オスプレイは運用時の大半は飛行機モードだが、上記の強襲揚陸艦配備のCH-46との代替用途のためと、ティルトローターのために両端に重い角度可変のエンジン/ローターナセルを配した特異な構造のため、巡航時の揚力をまかなう主翼面積はありえないほど小さくなった。主翼面積1uあたりの機体総重量を示す「翼面荷重」は、プロペラ機では前代未聞の高い数値となった。 ・ 加えて飛行性能を決定する主翼断面形状は、燃料タンクを兼ねるために分厚くなって、性能を表すもうひとつの指標・滑空比(揚抗比)は4と、とても飛行機とは言えない劣悪なものになった。これは「空飛ぶレンガ」「羽の生えたレンガ」と揶揄された「スペースシャトル」をも下回る、固定翼を持たないヘリコプター並みの数値である。 (しかしヘリコプターにはオートローテーションという緊急時の滑空機能がある) ・ オスプレイと同程度の翼面荷重の747だが、滑空比(揚抗比) は全く違う。747は約18、滑空比4のオスプレイの4倍以上と、揚力が大きく空気抵抗が小さい。従って滑空で飛行できる距離は長く、仮に全エンジン停止しても、安全に不時着場所を探す余裕がある。実例もある。 http://en.wikipedia.org/wiki/British_Airways_Flight_9 しかしオスプレイは、全エンジンが停止したら滑空距離は短いうえに失速速度は300km/hに近い高速で降下速度も速く、着陸場所を選ぶ時間的余裕もなく落ちるしかない。
(つづく)
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