シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.9) 中国の「ゼロコロナ」政策に学ぶべき(中)
-『武漢支援日記 コロナウイルスと闘った68日の記録』より-

医療従事者はじめ人民の自発的・献身的活動の奇跡の記録
 中国の防疫対策は、中央・地方都市が行う大量検査や徹底した隔離療養政策だけではありません。全人民が自発的・積極的にこの闘いに参加することで、防疫対策が完全に有効な対策となっているのです。その中心を担っているのが医療従事者です。昨年1月下旬から3月末まで2カ月以上にわたり、コロナ感染がひどく都市封鎖された武漢に、上海から派遣され、重症者の医療・看護に従事した女性医師の「闘い」の日記が、先日、日本語訳で発売されました。題名は『武漢支援日記』。その内容を中心にして、中国での医療従事者の奮闘ぶりを紹介したいと思います。

患者の命を救うことに最大限の奮闘をする作者―査(ソ)医師
 日記の作者である査医師は、昨年1月24日にあわただしく勤務している上海の病院をあとにして、コロナ感染がひどく都市封鎖した武漢に向かいました。(ちなみに1月24日は日本でいえば大みそかに当たります)。1名でも多くの患者の命を救うために。武漢に着いた直後は防護服等物資も不足しているうえ、感染もひどく、なかなか思うように医療が進みません。日記にも「私たちの目標は同じ――すべての手を尽くして多くの命を最大限に救うこと、それはそうだけど・・・」(1月30日)「心身とも疲れているのはまだ我慢できるのだが、患者とその家族のことを思うと、どうしても気分が滅入ってしまう」(2月4日)等々、日々の奮闘での疲れやなかなか患者の命を救えない現実へのイライラが赤裸々に語られています。そして、2月18日には、「私の心はどんよりとしていた。理想と現実の隔たりは大きく、バランスを取るのが難しい。今日は武漢に来てから、一番疲れた日だ。動きたくなかった。話をする力もなかった。」と、その日病院で何が起こったのかは想像に難くありません。また、防護服節約のため(=トイレ休憩をしないため)飲まず食わずでの長時間勤務やマスクを着けたままでの仮眠等の過酷な労働にも触れています。しかし、再三再四お互いに常に注意し合ったことは、医療従事者が感染しないよう最大限の措置を行うことでした。

医療従事者を強力にサポートする人民のボランティア
 上記のような医療従事者の奮戦・奮闘は、中国だけでなく、日本はじめ全世界の医療従事者も同様と思います。しかし、ここから後の医療従事者へのサポートになると中国と日本では真逆の状態となって表れてきます。『日記』には、全国から派遣された医療従事者のために、全国から食事や花などが連日次々と届けられ、「(武漢への派遣で)連日おいしい食事が出され逆に太ってしまった」というエピソードも載せられています。物資だけではありません。リスクがあり、自宅に帰れないことを承知のうえ、隔離病棟の清掃をかってでたボランティア、医療者の勤務のための無料送迎をかってでたボランティア・ドライバー、医療従事者の散髪を1日に70人も引き受けたボランティア、等々と医療従事者以外にも武漢の感染防疫戦に立ち向かう多くの人々を『日記』は記述しています。

医療従事者と共に戦った「社区」ボランティア
 なぜ中国では、サポート、ボランティアがこのようなコロナ感染防疫戦において即座に大量に生まれるのでしょうか。それには理由があります。実は、常日頃からサポート、ボランティアが人民の生活を支え合っており、そのような住民組織が完全に出来上がっているからです。それが聞きなれない言葉ですが、「社区」という組織です。『日記』のなかでも、(重症)病棟からの患者の退院に際して、ホテルへの移動は、「社区」住民のボランティアで行われることが触れられています。また、作者査医師の目撃談として「依然として数多くの武漢市民のボランティアがいた。遠くのスーパーの入り口にバスが止まっているのが見えその脇のドアから荷物を次々と車の中に運んでいく人の姿があった。住民のために生活物資を調達している各団地のボランティアに違いない。」と社区ボランティアの奮闘ぶりを取り上げています。

医療従事者や多くのボランティアを心身ともに支える中国共産党
 なぜ中国で、サポートやボランティアが即座に大量に生まれるのでしょうか。その理由のもう一つ大きな要因が、中国共産党の存在です。『日記』作者の査医師も党員です。『日記』の随所に渡り、査医師の党員活動が触れられており、その活動での思想教育が彼女の献身的な奮闘を支えてきたことを何度も述べています。その活動の一旦として「会議の最後に、自分を守る意識をもって、まずはよく休んで自分の体に気を付けること、自分を守ることができればこそ患者により良いサービスを提供することができる。との講演があった。更に上海医療チームの目標として、戦いに勝利することはもちろんだが、科学的な治療を行わなければならない。」(1月25日)と。実際査医師は日々の医療活動で疲労困憊でありながら、実はこの派遣の間、休日には率先して運ばれてくる物資の仕分け作業を行うボランティアに参加しています。そしてそれがなによりのリラックス法だと。また査医師だけでなく、武漢に派遣された全国からの多くの医療従事者が、党員もしくは党員希望者であり、困難をまえにいつも先頭に立つ党員の日々の活動が困難な防疫戦勝利の原動力であったことがわかります。

使命を果たし、勝利の帰還
 『日記』の最終版はよほどうれしかったのか次のような言動で満ちあふれています。査医師のグループリーダーは興奮していった「私たちの第1組の患者はゼロになった。わたしたちは勝った」(3月26日)と。そして派遣最終日の3月31日の項では、「私たちが(上海への帰郷に向けて)出発する時、武漢の市民たちは道のそばで列を作って見送ってくれ、『歌唱祖国』という歌を合唱していた。「上海に感謝します。人民に感謝します」という一言が繰り返され、私たちも奮い立ち、列を作って「武漢の人民に感謝します」と呼び掛けた。ホテルの従業員と別れを惜しみ、歓送の声と警察官の敬礼の中で、私たちは出発した」と防疫戦の勝利を素直に喜ぶ記述で『日記』は締めくくられています。

現在の日本との違い――国が先導して医療従事者を支える姿勢があるか
 このように見れば、中国共産党と国家の指導、都市封鎖、「社区」ボランティア、医療・物資・食料等一切の動員体制など、日本との違いは大きいと思います。
 しかし日本でも、医療従事者の献身的活動や患者の命を救いたいという思い、自粛下でのさまざまなボランティア活動の存在など、共感・共通するところは少なくありません。やはり最大の違いは、国が先導して医療従事者を支え、コロナ下で医療体制を守っていくという姿勢ではないでしょうか。
日本ではコロナ感染拡大によって、医療逼迫に加えて、病院や医療機関が減収と経営危機に直面しているという深刻な状況があります。その結果、給与減、ボーナス減などとなって医療従事者は報われるどころか、犠牲を払わされています。また医療従事者や入院患者全員へのPCR検査がされないことから病院で集団感染が多発しています。医療従事者は安心して働くことができず、感染を恐れて離職を選択せざるを得ない人もいます。政府が医療機関をつぶさないという決意を示して必要な財政補填をし、給与やボーナスを十分に保障すること、医療者全員へのPCR検査を行い、安心して働ける環境を作ること等は体制の違いを超えて今すぐできることです。
 中国は、党と国家が先導し、住民ボランティアなどが制度として関わってくるという点では日本とは違いますが、日本でも政府が決意と覚悟を示しきちんとした政策と財政を動員すればできることなのです。やるべきことをせずにただ刑罰や罰金だけを振りかざして強制しようとすることからは、偏見や分断しか生まれません。
子どもの保育園から「(コロナに関係する)看護師のお子さんは預かれません」と言われたり、差別や偏見にさらされSNS等での非難・中傷さえ受けているというのは、医療者の感染リスクを抑えたり、十分なサポート体制をとっていない政府や自治体の責任です。
【大型ドキュメンタリー】感染症に立ち向かう日々·第4回 団結して困難に勝つ
 中国のテレビ局中央広播電視総台が制作したドキュメンタリーで、医療従事者の奮闘や火神山・雷神山両病院の建設、それに加わった土木・建設・電気等の労働者の闘い、食料提供や配送などのさまざまなボランティアの参加が記録されています。まさに国を挙げてコロナとの闘いを遂行する様子が伝わってきます。
【ドキュメンタリー】 お久しぶりです、武漢――日本人監督が見た武漢
 中国在住の日本人監督竹内亮さん(中国人の妻と2人の子ども、義父母の6人家族)が、封鎖から約4ヶ月後の武漢を映したものです。封鎖下の武漢でコロナ病棟で働いていた看護師や、雷神山病院の建設に関わった電気工事士、祖父を亡くした若い女性などが登場し、英雄伝だけではない“市民目線から見たコロナとの闘い”の一端がわかります。

是非この『武漢支援日記』一読を
 日本では、この本はあまり知られていません。作家方方氏が書いた『武漢日記・・封鎖下60日の魂の記録』の方が圧倒的に有名です。書店に積まれ新聞等に数多く紹介されています。こちらの本では、医療従事者や人民の献身的活動にはほとんど触れず、武漢市政府官僚の初期対応への執拗な批判に終始しています。共産党と中央政府のリーダーシップの下、初期の誤りを驚異的なスピードで克服し、医療従事者や民衆の献身的活動で武漢での防疫に成功したことに、方方氏は関心がないのでしょうか?
 方方氏と同様の姿勢で書かれた「日記」として、ソーシャルワーカーの郭晶氏が書いた『武漢封城日記』もあります。
 これらの本と今回紹介した『武漢支援日記』は全く違います。是非『武漢支援日記』を一読されることをお勧めします。

2021年1月28日
リブ・イン・ピース☆9+25