シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.14) 香港国家安全法(下)――特殊な歴史的経緯で生まれた「一国二制度」における特権と制約

国安法は、香港返還時から制定が求められていた法律
 1990年に成立した「香港基本法」第23条には香港における「国に対する謀反、国家分裂、反乱の扇動、中央人民政府の転覆、国家機密窃取、外国政治組織・団体の政治活動、外国の政治組織・団体と関係を持つことを禁止する法律を(香港が)自ら制定しなければならない」と記されています。今回の国安法制定は、この規定を実施したに過ぎません。あれこれ非難するのは、それこそ約束違反です。
香港基本法(香港ポスト)

香港返還の約束を反故にしようとしたイギリスの帝国主義的植民地主義の強欲さ
 私たちは、アヘン戦争を遠い過去のことだと軽く見てはなりません。今回の香港デモの際に香港統治時代最後の総督パッテンが中国に警告を発したというニュースを見ました。まだ口を挟むかという感じです。イギリス政府は、唯一の空母を極東に派遣すると表明しました。中国を威嚇、脅迫するためです。いつまで宗主国面をするのでしょうか。
 確かに、アヘン戦争は1840年で、それから180年も経っています。周知の如く、この戦争は、当時の清国政府がアヘン患者の蔓延と惨劇に抗議し、アヘンの密貿易を禁止したことを口実にイギリス帝国が一方的に仕掛けた非道極まりない侵略戦争のことです。香港はそれ以来イギリスに割譲されたのです。
 第二次世界大戦後も、イギリスは香港を変換しませんでした。1982年から15年にもわたる粘り強い交渉の末に1997年にようやく英国から返還させたものです。1982年9月に始まった返還交渉も困難を極めました。サッチャー英首相は同年6月にアルゼンチンのマルビナス島をめぐる侵略戦争に勝利して、中国に乗り込み、返還する気はありませんでした。しかし鄧小平は「香港はフォークランドではないし、中国はアルゼンチンではない」と怒り、返還に応じなければ武力行使や水の供給停止に打って出ると迫ってようやく交渉過程に入ったのです。しかもイギリスは香港の一部しか返還しないと、最後まで植民地を手放さなかったのです。イギリスの帝国主義的植民地主義の強欲さを表すものです。そして今回、香港デモをきっかけに植民地を奪還できると考えたのです。そのようなイギリスと一体となって行動する「民主派」を支持することがなぜできるのか。反帝国主義・反植民地主義の立場から反戦平和運動に取り組んできた私たちには理解できません。
イギリス、香港市民への特別ビザ開始 30万人が申請か(BBC)
 イギリス政府は今年1月31日、香港市民にイギリス市民権を獲得できる道を開く、新たな特別査証(ビザ)の申請受付を開始しました。5年間で30万人を受け入れると言います。時が来れば、再び彼らを先兵として送り込むつもりなのでしょうか。時代錯誤であからさまな内政干渉に他なりません。

「一国二制度」も英中共同声明も香港基本法も脱植民地化の観点から捉えるべき
 西側政府やメディアは、中国が「一国二制度という国際社会への約束を破った」と糾弾しますが、どの口が言うのでしょうか。中国は、英中交渉で、あくまでも妥協の産物として、やむなく「一国二制度」で譲歩したのです。21世紀の直前まで、前時代の遺物である植民地があったという事実こそが異常なのです。
 私たちは、「一国二制度」も英中共同声明も香港基本法も、香港を中国に返還する脱植民地化の観点から捉えるべきだと思います。米英帝国主義による再植民地化の観点から捉えてはなりません。
 もともと中国の一部であった地域が中国に返還されるのですから、制度も中国と同じになるのが本来自然なことです。「一国」が最優先されるのは当然です。中国は一国であり、香港はあくまで中国の一地方都市でしかありません。行政府長官は市長にすぎません。
 しかし香港返還にあたって、資本主義制度の維持をはじめ、中国政府は香港市民へ徴税ができない、財政は独立、公務員給与はイギリス統治下の水準を維持、金融市場は存続、英語と中国語の二国語教育等々の特権を与えられました。これが“高度な自治”です。旧宗主国である英国の法体系が一部維持され、現在も最高裁判所は裁判官22人のうち17人が英、米、加、豪などの外国人であるであるという不条理な制度も含まれます。
 こうした植民地時代の残滓は脱植民地化の観点から、解消させていくべきだと思います。「高度な自治」はあくまで自治権であって、国家主権ではありません。行政権、立法権、司法権は中国中央政府が授与したものです。例えば香港立法府の制定した法律は人民中国の全人代常務委員会への報告と審査を受ける必要があります。
香港問題に関する英中共同声明

 そして重要なことは「国防」と「外交」の権限については香港政府には与えられておらず、中国政府が持つということです。従って、“国安法を香港議会を経ず中国政府が強行的に決めた”“言論の自由を圧殺するもの”などの批判は全く見当違いです。国防や治安に関する権限は中国政府にあります。外国勢力と結託した破壊活動への対応は、国防問題そのものです。中国外務省は「香港の権利と自由は何の影響も受けない。影響があるのは一部の外部勢力と香港の個人が結託して安全を破壊しようとする自由だけだ」と語り、外部勢力から香港をまもるためのものであることを繰り返し強調しています。

多数の市民が国安法を歓迎 安定を取り戻した社会・経済活動
 日本のメディアはほとんど報道しませんが、実は香港の多くの人々が同法を歓迎しています。昨年5月に「香港各界連合戦線」が提起した香港国家安全維持法への支持署名はわずか8日間で(人口750万人の香港で)300万筆も集まりました。
香港国家安全維持法、なぜか報道されない「歓迎の声」も多い(幻冬舎ゴールドオンライン)
数字で「香港国家安全維持法」を説明=在米国中国大使(中国網)

 一昨年の「民主派」によるデモと暴力・破壊行為は多大な損失を香港に与えました。香港経済全体で2019年通年でマイナス成長を余儀なくされ、総額で1千億香港ドル(1兆4千億円)のマイナスと試算されています。4000億香港ドル(5兆6千億円)もの損失という試算もあります。特に観光・小売りの2業界の損失が大きいです。中国からの旅行者が大幅に減少し(6-9月期 前年比378万人減)。これに伴い観光・小売業界の売り上げが大幅減になりました。そしてこれが雇用情勢の悪化につながり、一昨年11月には失業率が2.9%と1%も上昇してしまいました。また、破壊行為の被害を最も受けた公共施設を個別に見ていくと、立法府建物で1億香港ドル、地下鉄は93駅中85駅で、ライトレールは68駅中60駅で破壊を受けました。地下鉄の自動改札機で1600回、券売機等の設備で960回、ライトレールの券売機設備で915回、駅のエスカレーター・エレベーター・出入り口のガラス・シャッター等が合わせて2千回近く。街の信号機が850回、街路灯が40機、そして街路に設置してあったゴミ箱が670個、等々。
「香港 激動の記録~市民と“自由”の行方~」(NHKスペシャル)
 この番組は、自由が制約され運動が停滞していったと、中国と香港行政府に対して批判的な立場で制作されていますが、破壊活動の沈静化によって治安と安定が戻ったことで社会経済活動が正常化されたことに安堵する市民の声を多数拾っています。

 現在香港の騒乱状態は解消し、平穏な市民生活と社会・経済活動が戻りました。香港国家安全維持法は香港の平和と安定、安全を維持するために必要な法律です。私たちは、米英両国や日本をはじめとする西側帝国主義諸国の香港への制裁・介入に強く反対します。

2021年2月25日
リブ・イン・ピース☆9+25