ヌセイラト・キャンプの大虐殺を糾弾する

 6月8日、ガザ地区中部のヌセイラト・キャンプでイスラエルの特殊部隊がキャンプのど真ん中、市民が密集していたところに突如爆撃、砲撃、銃撃を加えた。ガザ保健省によると、274人が死亡し、698人が負傷した。死者には57人の女性と64人の子どもが含まれる。私達は、イスラエル軍がラファの「タル・アル・スルタン」地区(50人死亡)、人道ゾーンの「マワシ」地区(21人死亡)、そして直前のヌセイラトでの国連の学校爆撃(40人死亡)に続いて、さらに大規模な虐殺を行ったことを糾弾する。

常軌を逸した大虐殺
 イスラエルは「人質」を取り戻すための攻撃だったと言います。しかしそのやり方は常軌を逸しています。イスラエル軍はガザ海岸に米軍が作った桟橋の拠点から出発し、食料や衣服など人道支援物資を満載したトラックに「偽装」してたくさんの市民がいた市場に接近しました。安心しきっていた市民に突然激しい攻撃を行ったのです。直前には部隊が前に進むために地区には激しい空爆が加えられ、さらにドローンからの銃撃も行われました。ヌセイラトの市場は一瞬のうちに死体や負傷者が転がり、人々が逃げ惑う、阿鼻叫喚の地獄に変えられました。
 その後、イスラエル軍は人質が拘束されていた民家を襲撃し、その家の家族のほとんどを銃殺し、周辺地区を破壊し(100件近い家屋が破壊された)、来たときと同様空爆で道を開きながら元の米軍桟橋に引き上げ、そこからへりで人質をイスラエル国内に送りました。

大虐殺作戦を賞賛するネタニヤフとバイデン
 ネタニヤフは人質4人の解放を最大限に祝福し、成果として誇りました。しかし、この作戦は驚くほど残虐な、国際人道法に違反する戦争犯罪です。第1に、国際人道法、戦時国際法は戦闘に民間人を巻き込まないことを要求します。ところが、イスラエル軍は戦闘する前、現地に到達する前に、そこにいた多数の市民を無差別に殺しています。道を開くために殺しまくっているのです。ハマスの戦闘員と戦闘になったのはごくわずかです。死者や負傷者の大半は女性や子どもであり、一目で非戦闘員であるとわかるのに無差別に殺しています。許されない虐殺です。さらにイスラエルの特殊部隊は人道支援物資運搬のトラック部隊に「偽装」して人々を安心させたうえで殺しています。軍隊の民間人へのなりすましは「背信行為」であり明確に戦時国際法に違反する戦争犯罪です。これで人道支援のためと大々的に宣伝してきた米軍桟橋が何のためのものかが明らかになりました。軍の出撃のためのものです。直後に国連の世界食糧計画WFPも桟橋の使用を取りやめました。軍事施設と見なされるからです。

停戦を受け入れていれば、人質も市民も死ななかった
 死者、負傷者が次々と運び込まれたアル・アクサ病院は「屠殺場」のようだったと、居合わせた人は語っています。イスラエル軍の大規模な攻撃で、パレスチナ人だけでなく、他の3人の「人質(捕虜)」が殺されたとハマスは発表しました。なぜここまでする必要があったのでしょうか。ネタニヤフは「人質を取り返すためには攻撃が必要だ」と言い、攻撃したから解放できたのだと胸を張りました。それはでたらめです。なぜなら、恒久停戦さえ受け入れれば人質や市民は一人も死ぬ必要がなかったからです。「ハマスを壊滅させるまで(最後の一人を殺すまで)闘いはやめない」−−このネタニヤフの常套句は、パレスチナ人を全部殺すか、全部国外に追い出すまで戦争はやめない、パレスチナ人とは共存しないという宣言です。しかし、76年前にパレスチナ人を殺し、武器で追い出し領土と国を奪い、その後占領者として抑圧し、殺してきて、挙げ句の果てにパレスチナ人の民族自決は絶対に認めない−−これがネタニヤフのやっていることです。ネタニヤフにとって人質がどれだけ死のうが関係ないのです。ハマス壊滅だけが唯一の目標です。そして直接の目的はネタニヤフ政権の維持です。権力から離れたくないのです。許しがたいアパルトヘイトと植民地主義国家イスラエルを維持し続けようとする野望が停戦を妨げ多くの人々を殺しています。私たちは「人質解放」に名を借りた市民の大虐殺を許しません。

欺瞞的な停戦提案でポイントを稼ぐことだけ考えるバイデン
 ネタニヤフだけでなくバイデンと米政権もこの作戦を賞賛しました。とんでもない話です。ネタニヤフの作戦は成功などではありません。人質7人のうち4人しか解放できず、1000人近い死傷者を生みました。全く関係のない市民を殺しまくることを前提にした攻撃には何の成功もありません。バイデンは5月31日に改めて停戦を提案したばかりです。ネタニヤフが停戦に応じていれば、死ななかった274人の市民の死者、「人質」3人とイスラエル軍戦死者を問題にし、改めて停戦拒否を非難し、受け入れをイスラエルに迫るべきところを、ネタニヤフと一緒になって賞賛してどうするでしょう。米もイスラエル同様いかにパレスチナ人や人の命を軽んじているかがよくわかります。
 国連安保理に米国の停戦提案の受け入れを要求する決議を可決しました。しかし、上のような態度をとっているバイデン政権の停戦提案は全く信用できません。なにより「イスラエルが提案したものだ」という提案に、イスラエル政府が受け入れを表明していません。提案自身決定的に重要な点でわざと曖昧にしている。それは恒久停戦を目指すのかどうかです。ハマスはこの点を問題にし、恒久停戦、イスラエル軍のガザからの撤退、帰還の権利の保証、これらの条件を明確にするよう米と仲介国に求めています。ハマスの要求は当然です。逆に、ネタニヤフは万一受け入れるとしても、曖昧さを利用して停戦を一時停戦に限定させ、戦争再開できるようにしようとしています。バイデンの最大の狙いは大統領選挙に向けて停戦提案で功績を残すこと、停戦ができなかったときに責任をハマスの拒否に押しつけて、自分はあくまで停戦を求めたポーズをとり続けるつもりです。米国は武器の供給をやめ、圧力を加えれば直ちにイスラエルに戦争をやめさせることができる地位にありながら、戦争をやめるよう要求するつもりはありません。

イスラエルは大虐殺をやめ、恒久停戦、ガザからの撤退を受け入れよ
 私達はまず、イスラエルが恒久停戦を受け入れることを求めます。恒久停戦、ガザからのイスラエル軍の撤退、民族自決権の承認こそが、戦争をやめ次の平和と安定を実現できる唯一の道です。イスラエルはまだ戦争の継続、ハマスの壊滅をあきらめていません。しかし、この道は長い間に渡って血みどろの戦争が続くことを意味します。そして他民族を抑圧する植民地国家、アパルトヘイト国家には抵抗闘争を消し去ることなどできず、いつか敗北するしかないのです。米国は停戦した上で、戦後のガザの支配を、ハマスと抵抗勢力を排除し、西岸の自治政府に引き受けさせ、イスラエルの支配を別の形で永続させようと考えています。しかし、パレスチナ人民が支持するハマスと抵抗勢力の関与なしにガザの戦後の復興はあり得ません。ハマスと西岸の抵抗勢力は結束する道を進んでおり、人民の力を背景に自らの力で民族解放と自決権の獲得まで闘い続けることを表明しています。パレスチナの民族解放闘争を壊滅させることはできません。 私達はこのパレスチナ人の民族解放闘争が勝利するまで支持・連帯します。

2024年6月13日
リブ・イン・ピース☆9+25