今こそ「恒久的停戦」=戦争終結を強く訴えよう
米・イスラエルは大虐殺=民族浄化戦争を直ちにやめよ

休戦協定はハマスと抵抗勢力の抵抗闘争の政治的勝利
 イスラエルとハマスは4日間の休戦協定に合意し、11月24日午後2時(日本時間)から休戦に入りました。今回の「一時休戦合意」は、単なる一時的な戦闘中断ではありません。カタールとエジプトが仲介し、停戦条件で双方が合意して交わした正式な休戦協定です(表参照)。イスラエルに押しつけ実現させたものです。イスラエルは軍事目標に「ハマスせん滅」を掲げ、「テロ組織」との交渉を拒否してきました。ところが、ハマスと抵抗勢力を正式の交渉相手として認めざるを得なかったのです。私たちはこの休戦合意を心から歓迎します。
 ガザ現地からは、爆音が止み、子どもたちの歓声があがり、人々が安堵の表情を浮かべている様子が伝えられています。人道物資を積んだトラックが搬入されています。イスラエル側の人質の解放と引き換えとなるパレスチナ人の拘束者の釈放も始まっています。ヨルダン川西岸では、釈放されたパレスチナの囚人を歓迎し、ハマスとガザ抵抗勢力を讃える声が響き渡っています。私たちもパレスチナ人民とともに喜びたいと思います。

 今回の休戦は、何よりもまず、イスラエルの大虐殺と民族浄化戦争に屈することなく闘い続けてきたハマスとパレスチナ抵抗勢力の抵抗闘争の勝利です。そして多大な犠牲を払って勝ち取ったパレスチナ人民全体の勝利です。ハマスと抵抗勢力は、今回の合意を「政治的勝利」だと論評しました。抵抗勢力とパレスチナ人民が一体となって、強大な米国とイスラエルを、一時的とはいえ、屈服させたのです。
 今回の合意は同時に、イスラエルの戦争犯罪を追及し即時停戦を要求してきた中国とグローバル・サウス諸国、全世界で高揚する国際的なパレスチナ連帯運動が米・イスラエルに押しつけた成果でもあります。

「一時的休戦」から「恒久的停戦」へ。大虐殺と人道的大惨事を止めよう
 しかしイスラエルのネタニヤフ首相は、停戦期間が終われば直ちに攻撃を再開し、大虐殺と民族浄化戦争を続けることを明言しています。そればかりか、休戦発効直後から、居住地に戻ろうとするガザ住民への銃撃、北部への物資搬入制限、捕虜の選定違反など、合意に反する挑発行為を繰り返してきました。ハマスとパレスチナ抵抗勢力の警告で、イスラエルは合意履行に立ち戻りましたが、予断を許しません。西岸地区では、刑務所周辺での催涙ガス発射、銃撃による殺害など暴虐をエスカレートさせています。

 今回の休戦は、あくまで一時的なものです。イスラエルの大虐殺と民族浄化戦争を阻止するためには、恒久的停戦へと進まなければなりません。米・イスラエルに休戦協定を厳格に実行させ、今こそ「恒久的停戦へと向かえ」の声を上げていくべき時です。それは国際的なパレスチナ連帯運動の喫緊の課題です。米・イスラエルに攻撃を再開させてはなりません。これ以上、戦争と大虐殺、飢餓や感染症を含む人道的大惨事を続けるべきではありません。私たちは、この休戦協定を、つかの間の息継ぎに終わらせるのではなく、恒久的な停戦=戦争終結につなげていくことを強く訴えます。

 すでに米国のANSWER連合、人民フォーラムなどの反戦団体は、今この時期に恒久的停戦とガザ包囲終結、米欧諸国の対イスラエル支援中止を要求する行動を強めるよう呼びかけています。私たちも、戦闘が休止しているこの時期にこそ、米・イスラエルの戦争犯罪を全面的に暴き出し、一時的休戦から恒久的停戦へと向かって、パレスチナ連帯行動を強めましょう。

イスラエルの軍事作戦の行き詰まりと政治的危機
 ネタニヤフ政権は、予想以上の政治的危機に陥っています。ネタニヤフの支持率は急減し、閣内不一致が表面化しています。その上、空爆や地上侵攻で攻撃開始から50日近くたっても、人質を自力で発見・解放することも、ハマスをせん滅することも、ハマスからパレスチナ人の支持を引きはがすこともできなかったのです。軍事作戦の行き詰まりによって、ハマスの要求にイスラエルが応じざるをえなくなったのです。
 イスラエルがやったのは、大量虐殺だけです。「ハマス司令部」をでっち上げて負傷者や患者があふれている病院を攻撃しました。医療機関、学校、モスク、避難所などを集中攻撃し、15000人を超えるパレスチナの人々を虐殺しました。水、電気、燃料、食料、医薬品などの人道物資の搬入を遮断し、パレスチナの人々を飢餓に陥れてきました。空爆とミサイル攻撃、戦車の砲撃、無差別銃撃、飢餓戦争等ありとあらゆる手段を使ってせん滅作戦を遂行してきたのです。
 ネタニヤフ政権が国内極右閣僚の反対を押し切って今回の休戦合意に応じたのは、出口の見えない消耗戦の中、イスラエル兵の犠牲の増加への不安や人質解放を求めるイスラエル国内世論を無視することができなくなった結果です。25日には、テルアビブで人質全員の解放を求める10万人の大集会が行われ、ネタニヤフ政権は足元が揺らぎ始めています。

休戦に持ち込んだ中国主導のグローバルサウス諸国と国際反戦運動
 今回、米とイスラエルが一時的休戦に応じざるを得なかったことには、もう一つ大きな要因があります。それは、中国が主導するBRICS諸国、国連を舞台とした停戦を求める勧告や決議、そして国際的な反戦運動の高まりです。今回の休戦合意を直接仲介したのは、カタールと中東の大国エジプトです。米国はこれを追認せざるを得ませんでした。これには、停戦を求めるグローバルサウス(新興・途上諸国)の動きが深くかかわっています。
 15日、国連安全保障理事会はガザ地区での戦闘の「人道的休止」を求める決議(決議第2712号)を採択しました。イスラエルの攻撃が始まって以降、拘束力のある安保理決議が採択されたのは初めてです。議長国中国は、この決議採択に積極的役割を果たしました。米国は、決議を棄権しました。拒否権を発動できなかったのです。
 さらに21日には、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)が緊急の臨時首脳会議を開き、パレスチナ問題を集中議論しました。会議には、エジプト、サウジアラビア、イランなど新加盟国6か国も参加しました。この場で議長国の南アはイスラエルの行為を「明確な国際法違反」「戦争犯罪」「ジェノサイド」などと糾弾しました。中国は、市民への攻撃や移動強制、水や電気の遮断を止めるよう求め、即時停戦を主張しました。ロシアは、イスラエルを支援する米国を批判し、戦闘の休止を要求しました。西側メディアでは、「ハマスへの対応で足並みが乱れた」などと報じられていますが、拡大BRICSとしてイスラエルの戦争犯罪を糾弾し即時休戦を求めたことはかつてない意義を持っています。
 米国はイスラエルの軍事行動に直接軍事支援し、部隊を送り込んで軍事作戦に参加しています。日本と欧州諸国もイスラエル支持を表明するなど、西側先進諸国がイスラエルのパレスチナ侵略と虐殺をやりたい放題にさせていることに対して、グローバルサウスの国々が行動を起こし、米国の意図をはねのけ、休戦合意に持ち込んだことは、大きな歴史的な成果です。
 これらの動きを後押ししたのが、全世界で高揚するパレスチナ連帯行動、国際平和反戦運動です。米国やイギリス、イタリア、ドイツ、フランス、デンマークなど欧州諸国、エジプト、ヨルダン、レバノン、イラク、イエメン等アラブ・イスラム諸国、トルコ、インドネシア、ベネズエラ、キューバなど、グローバルサウスの国々。世界中の何百万もの人々が街頭で声を上げてきました。またボイコットや制裁を呼びかけるBDS運動でイスラエルを追い込もうとする動きも高まりました。

イスラエルは不当に収監するパレスチナ人を解放せよ
 今回の休戦合意には、西側諸国とメディアが無視する、もう一つの重要な意義があります。それは、イスラエルに不当に拘束されるパレスチナ政治囚の解放を一部ではあれ協定に盛り込み、それをイスラエルに実行させたことです。ハマスと抵抗勢力が一時休戦で目的としたのは、まさにこのパレスチナ人政治囚を解放することでした。
 日本のメディアも、もっぱらイスラエル人の人質解放に焦点をあて、このことばかり報じています。しかし今回の休戦合意によって、イスラエルが多数のパレスチナ人を不当に裁判もなしに監獄に収監しているという、イスラエルの暴虐の現実が暴き出されました。
 今回解放されるパレスチナ人の多くは子どもと女性です。今もイスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人は7200人以上います。そのうち約2000人は罪状もなく起訴もされない「行政拘束」で、いつ拘束が解かれるかも分からない人たちです。10月7日以降、西岸地区の3000人ものパレスチナ人がイスラエルによって逮捕されています。そこには子どもと未成年者が145人、女性95人、ジャーナリスト37人が含まれます。ハマスとパレスチナ抵抗勢力が今回焦点をあてた、この政治囚の解放こそ、民族自決権に基づくパレスチナ国家樹立にとって不可欠の、帰還権の承認と並ぶ戦略的要求なのです。

イスラエルは軍事作戦の失敗と敗北を認め、恒久的停戦に応じよ
 イスラエルのギャラント国防相は23日、ハマスとの4日間の休戦が終了すれば軍事作戦を再開する、戦争はあと2か月は続くと述べ、あくまでハマスせん滅作戦を継続する方針を示しました。しかし、ハマスをせん滅することができないということは、これまでの戦闘で明らかです。ハマスの戦闘員(軍事部門)は4万人とされますが、ハマスは戦闘員だけでなく、ガザの政治や行政を担う職員も含めてハマスです。さらにその数倍とされるパレスチナ人のハマス支持者がいます。またハマスの指導者はガザにはいません。カタールやレバノンにいます。ハマスは軍事的組織であるだけでなく政治的組織であり、物理的にハマスを一掃することはできません。
 そして何よりも、イスラエルの正規軍が相手にするのは、ガザに張り巡らされた地下通路を使って縦横無尽に活動するゲリラ兵士です。ゲリラ戦で、一人残らずせん滅することはできません。圧倒的に優位な正規軍がゲリラ戦に勝利できないことは、ベトナム戦争の教訓が示しています。依然ハマス側には200人のイスラエル人の人質が残っていますが、イスラエルにはその所在地さえわからない状況です。ネタニヤフ政権がこのまま戦争を継続していけば、国際世論はますます大虐殺と人道危機を非難し、パレスチナへ共感・連帯する声が拡大するのは間違いありません。市民大虐殺を繰り返しても、いつまでたっても「ハマスせん滅」を実現できず、いたずらにイスラエル兵の死者が増えていくだけです。

 仮に、ネタニヤフが、もう一度米国の支援を受けて、戦争を再開しても、今回の休戦合意を実現させた力関係(パレスチナ抵抗勢力とパレスチナ人民の不屈の意志、中国主導のグローバルサウスの力、国際反戦運動など)は、より強力になって作用します。
 そもそも戦争の戦略目標達成の目途はなくなっています。最大の目標であるガザ住民のエジプトへの追い出しと民族浄化は敷居が高く、実現は困難です。ガザを人々が住めないようにして、再びイスラエルが直接占領しても、そこに住民が残れば、数年を経ずして抵抗戦力が復活し、強固な抵抗に直面することは明らかです。それはイスラエルにとって戦略的敗北です。軍事作戦をめぐってグヴィール国家安全保障相やモストリッチ財務相ら極右シオニストとの軋轢はますます深まり、はいあがることのできない泥沼にはまっていくことは避けられません。
 ネタニヤフ政権は、ハマスせん滅作戦の失敗と敗北を認め、休戦協定から恒久的な停戦に応じるべきです。

 休戦協定の内容

軍事行動の停止
1.双方からのすべての敵対行為の停止。
2.ガザ地区の全地域におけるイスラエル軍の全行動の停止。
3.ガザ地区におけるイスラエル軍の車両移動の停止。
4.ガザ地区南部におけるイスラエル軍の上空飛行を連続4日間停止する。
5.ガザ地区北部におけるイスラエル軍の上空飛行は、1日6時間に制限される。

人道物資の搬入
1.人道支援、救援物資、医療支援物資を積んだ数百台のトラックが、例外なくガザ地区の全地域に到着する。
2.ガザ地区への燃料輸送は許可される。

捕虜交換
1.50人の捕虜がガザ地区から解放される。
2.それと引き換えに、150人のパレスチナ人囚人がイスラエルの刑務所から釈放される。双方から解放される囚人には、女性と19歳以下の子ども。

パレスチナ人の移動の自由の保障。不当逮捕の禁止
1.いかなる個人も標的にしたり逮捕したりしない。
2.サラ・エル・ディン通りにおける(北から南への)人々の移動の自由を確保すること。すべてのパレスチナ人の移動の自由を確保。

2023年11月26日
リブ・イン・ピース☆9+25