西岸地区のファタハとガザ地区のハマスに二分されていたパレスチナで、5月4日、ファタハとハマスが統一政府を樹立することに合意したが、この新しい動きの背景には「3・15運動」と呼ばれるパレスチナの若者たちによる新たな運動の波があった。 チュニジア、エジプトをはじめとしてアラブ世界全域に波及した「アラブの春」は、イスラエルと米国に力ずくで押さえ付けられ閉塞状況にあったパレスチナの若者をも衝き動かした。まずは西岸とガザの分裂状態を終わらせるように指導者たちに強烈に迫る、そのような若者たちの運動がパレスチナ各地で自然発生的に生み出された。 複数の若者たちのグループが生まれ、2月以降パレスチナの団結を求めるデモが各地でおこなわれはじめ、3月15日の一斉抗議行動が合い言葉となっていった。その運動の連合体が形成され、3月15日の直前に声明が出された(後掲資料参照)。 若者たちの要求は主に2つのことに集約されていった。ひとつは、パレスチナの分裂を終わらせることである。もうひとつは、パレスチナ解放機構(PLO)の民族評議会(PNC)選挙を、パレスチナ難民も含め居住地に関わりなくすべてのパレスチナ人に平等に一人一票を保証する形で、民主的におこなうことである。声明では、自分たちの運動が従来の政治党派とは無関係のものであることが強調され、現在の政治指導者たちに対する強い不信感が表明されている。それと同時に、部分的な改良ではなく根本的な変革を求めることが強調されている。 (従来PLOは、最も主要な党派ファタハが主導権を握り、その指導部の選出はパレスチナ人民による民主的な選挙によるものではなかった。さらにパレスチナ難民は、自治政府の選挙をはじめとしてすべての選挙から排除されてきた。若者たちの要求は、そのようなパレスチナ内部の非民主主義的状況を正面から批判し、徹底した民主主義を求めるものである。) 3月15日の一斉行動では、要求が受け入れられるまで一歩も引かないという強固な意志が表明され、自治政府のあるラーマッラーの中心の広場を占拠したデモ隊は、ハンガーストライキを含む座り込みを開始した。それが4日間続いた3月19日に、アッバス議長とPLO中央委が、西岸とガザの分裂を終わらせる具体的方策をとると約束したのである。 2011年9月16日 【資料】<パレスチナ3・15運動> パレスチナの若者の諸グループによって計画された3・15大衆抗議行動は、大きな勢いを得つつあり、またメディア報道も拡大した。この運動を組織し動員している我々若者の諸グループは、次の諸点を明らかにすることが必要だと考える。 この抗議行動は、全人民の統一と和解の旗の下に組織されている。いずれにせよ、我々は次のことを強調する。パレスチナの分裂という困難な状況の解決は、パレスチナ人民が政治的諸組織の諸関係にかかわりなく合意した原則と価値観に基づかねばならない。その原則の第一は、政治的信条に基づいて人を投獄することの不当性である。したがって我々は、ガザ政府と西岸政府によって拘束されている全政治囚の釈放を要求する。 我々の変革要求は、パレスチナの分裂を終わらせることや現状の部分的改良を超えたものである。我々は、全世界のすべてのパレスチナ人を完全に民主的に代表する代表制度を強く主張する。したがって我々の運動は、次のことを明記し要求する。 全世界のすべてのパレスチナ人(ガザ地区、西岸、48年領土、難民キャンプ、離散パレスチナ人)に一人一票を保証することに基づく民主的なPNC(パレスチナ解放機構民族評議会)選挙。これは、PNCの機構の完全な総点検と新たな選挙手続きの確立を必要とする。 パレスチナの政治的諸党派、ガザのハマス政府、西岸のファヤド政府、および数多くの非政府諸組織は、自らの狭い関心に資するような形でこの運動に協力しようとしている。さらにこれらの諸組織は、自分たちがこの取り組みの背後にある主要な組織者であるという偽りの言明によって、自らを正当化しようと試みている。我々は、党派のメンバーでもNGOの職員でも、我々の社会を織りなす不可欠で不可分な構成部分として、それらの人々の参加を心から歓迎するが、しかし我々は、それら諸組織の指導者たちが我々の努力を別な方向に向けようとする試みは歓迎しない。 この3・15運動は人民による人民のためのものであり、いかなる政治党派からも独立し、既成組織の後援もない、我々はこのことを断言する。この運動は、我が人民のより良き未来を夢見る無党派の若者の諸グループによって組織されている。 我々は、あらゆるパレスチナ人に、特にパレスチナの若者に、3月15日には街頭へ出ることを呼びかける。我々はパレスチナの旗のみを携行する。そして、自由、統一、正義を唱和し歌う。3月15日は、我々が団結して立ち上がり、すべてのパレスチナ人にとっての民主的な代表制を要求する日となるだろう。そして、イスラエル・アパルトヘイトからの解放のための我々の闘争における確固たる一歩となるだろう。 パレスチナがいつの日かその子どもたちの精神のように自由になりますように (資料2)3月16日のプレスリリース 我々の最も主要な目標は、あらゆる形態のシオニスト的不正義と抑圧を終わらせることである。それには、占領とアパルトヘイト体制の終結、および真の正義を達成し全パレスチナ人の帰還を実現することが含まれる。この目標を達成するために、我々は次のことを要求する。1)パレスチナ解放機構民族評議会の選挙を、居住地にかかわりなく全パレスチナ人の参加を保証する形で、現行の選挙システムと意志決定メカニズムの変革を確実にする形でおこなうこと。 2)暴力と抑圧に導いた分裂の終結へ向けた具体的な段階的措置をとり、全パレスチナの自由を保障すること。独立人権委員会の管理と監査の下で全政治囚の釈放がおこなわれることを含む。 3)あらゆる形でのメディア誘導を終わらせること。特にテレビとウェブサイトでの。 4)我々はアル・マナーラ広場での座り込み継続を呼びかける。他の地域の若者に、自分たちの座り込みを継続しアル・マナーラに合流するよう呼びかける。まだ行動がはじまっていない地域に、行動を開始するよう呼びかける。我々はすべてのパレスチナ人に、あらゆる地域で座り込みをしている若者に連帯して立ち上がるよう呼びかける。 (以上) |
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