反占領・平和レポート NO.60
Anti-Occupation Pro-Peace Report No.60
イスラエルにおける右翼リクード連立政権の誕生と、国際的なBDS運動の拡大
In Israel the Right Coalition Government Comes, Around the World the BDS Movement Enlarges Against Israeli Apartheit.

 昨年末から今年はじめにかけてイスラエルが行ったガザ攻撃は、1400人を超えるパレスチナ人を虐殺、5000人以上の負傷者を出し、ガザの街をがれきの山と化しました。今回の攻撃は、過去に例を見ないほどの残虐性、非人間性をもっていました。その上に、厳しい経済・軍事封鎖によっていまだに復旧は進んでいません。さらに私たちが驚くのは、圧倒的多数のイスラエル国民がこれを支持したということです。虐殺後に行われた総選挙を通じて、イスラエルでは対パレスチナ強硬派の右翼リクード連立政権が発足しました。少なくともイスラエル国民は、カディマ政権が行ったガザ大虐殺に対して賛意を示しただけでなく、一層の強行策を掲げる右翼政権を支持したことを意味します。これはイスラエル国内で生まれた異常な「ファッショ化」といってもいいでしょう。
 一方、イスラエルの軍事行動の開始と共に全世界で巻き起こった大虐殺に反対する闘いは、世界の数多くの場所で「反イスラエル・アパルトヘイト」の闘いとして持続しています。闘いの背景には、ガザの置かれた惨状、静かな大虐殺=ガザ封じ込めと飢餓政策という恐るべき人道的犯罪が明らかとなってきたこと、ガザの現状が「天井のない監獄」であり、それをを終わらせるためには封鎖解除とパレスチナ占領体制の終焉こそが必要だということ、そのような認識が広範に広がってきたことがあります。かつての南ア・アパルトヘイトに対する取り組みのような「BDS運動」(Boycott、Divestment、Sanctions ボイコット、投資引き揚げ、制裁)の闘いが全世界で巻き起こっています。
 私たちはこのレポートであたらめて、イスラエルが行った侵略と虐殺を具体的に明らかにし、イスラエル国民がそれを支持した意味を問い、全世界で巻き起こってきているBDS運動を紹介したいと思います。日本でもイスラエルの虐殺やガザの惨状を伝える取り組みが、講演会やトークライブ、映画会、カンパ活動など多様な形で粘り強く行われており、私たちもその一翼を担っていきたいと考えます。

2009年4月20日
リブ・イン・ピース☆9+25


右派連立政権の誕生を望んだイスラエルの“ファッショ化”
カディマの思惑を超えた右翼リクード連立政権の成立
 イスラエル国会は3月31日深夜、賛成多数で右派政党リクードのネタニヤフ党首が主導する新連立政権を承認しました。リクードを軸に極右政党の「わが家イスラエル」や現在では対パレスチナ強攻策を主張する労働党など6党が参加し、国会定数120のうち74議席を確保しています。12月末からのガザ大虐殺を政治的焦点として闘われた総選挙を経て、侵略を主導したカディマは「善戦」し第一党を確保したものの、カディマよりもさらなる強硬策を主張するリクード連立政権が誕生するという事態が生まれたのです。
 パレスチナ側の死者は1434人に達し、うち市民の犠牲者は3分の2に登りました(パレスチナ人権センター)。負傷者も5300人に登っています(パレスチナ保健省)。ガザ侵略の目的の一つが2月10日の総選挙に勝利することでもあったことは間違いありません。カディマは、首相のスキャンダルで支持率が一時は2%にまで低下していたオルメルト政権を浮揚させ、総選挙に有利な状況を作り出し、外相であったリブニを首相へと担ぎ上げることを目指していました。実際ガザ侵攻でイスラエルのユダヤ人の9割がこの侵略を支持し、オルメルトへの支持率は跳ね上がりました。
 ところが好戦性と排外主義が高揚する中で、与党の思惑を超えて、より侵略的なリクードと極右政党が政権を握るという事態にいたったのです。つまり、今回の侵略と虐殺は手ぬるい、ガザにおけるハマスの政権転覆と殲滅にまで突き進むべきであった、という主張が支持されたのです。まさにイスラエルのファッショ化と言うほかありません。
※2009年2月10日のイスラエル総選挙結果
 右翼 計65 / カディマ28 / 労働党 + メレツ 16 / アラブ左翼 計11
 ・リクード : 27(←12) / 右翼の統一党として1973年創立。
 ・イスラエル我が家 : 15(←11) / リーバーマンが1999年に創立。
 ・シャス : 11(←12) / 1984年に創立。
 ・The National Union Party : 4(←?) / 1999年に創立。
 ・Jewish Home Party : 3(今回新参入) / 2008年に創立。
 ・United Torah Judaism : 5(←6) / 1992年に創立。Torahはユダヤ教の律法。
 ・カディマ : 28(←29) / 2005年11月、シャロンが創立。
 ・労働党 : 13(←19) / 1968年、3党の統合で創立。
 ・メレツ : 3(←5) / 1992年に創立。労働シオニスト社会民主主義。
 ・ハダシュ − 平和と平等のための民主戦線 : 4(←3) / 1977年に創立。
 ・Balad : 3(←0) / 1995年に創立。アラブ・ナショナリズムと民主社会主義。
 ・United Arab List - Ta'al : 4(←0) / 1996年に創立。
 他にマイナーな党が20ある。その中で最大の凋落は、Gil : 0(←7) / 社会福祉と老人ケア。
 出典 :「Global Research」(2月21日)Election Results : Towards Fascist Rule in Israel

イスラエル国民の「道徳的錯乱状態」
 すでに反占領・平和レポート NO.56 で指摘したように、アヴネリ氏は、「国中が鈍らされた感覚に感染させられています。人々は、もはや切断された赤ん坊の光景にショックを受けないし、破壊された家から離れることを軍が許さなかったために母親の死体と何日間もいっしょに放置された子どもたちにもショックを受けなくなっている」と指摘し、自国民の今回のような「道徳的錯乱状態」「鈍らされた感覚」を体験したことがない、と語っています。恐ろしい血まみれの殺戮現場を見ながら平然と「自衛権の行使だ」と記者会見で微笑むリブニの姿はまさしく、「道徳的錯乱状態」を表していました。
反占領・平和レポート NO.56 (2009/1/28)ガザの大虐殺を生み出したマッド・ボス作戦(リブ・イン・ピース☆9+25)

 「同じ人間と思わないことが、大量殺人を可能にする。」これは、イスラエル建国を批判するユダヤ人歴史家イラン・パペ氏の言葉です。「ハマスのロケット弾で死んだのが一年で数人なのに、ガザ攻撃では千人以上が死亡した。過剰攻撃ではないか」という質問に答えたものです。「子供がガザで400人死のうと、イスラエル人は『テロリストに育つパレスチナ人の子』程度に受け止める。」「パレスチナは現代のナチスであるかのように(イスラエル政府など)上から情報操作されている。若者らは軍が『新ナチス・ハマス』と戦っていると言うだろう」。「イスラエル社会や政治家は、安全を得るためにはパレスチナ人の駆逐と、(武力で)イスラエルは怖いと思わせることが必要と信じている。だから常に印象的で派手な攻撃が必要。次回攻撃は対象がどこであれ、一層破壊的なものになろう」等々。
 パレスチナ民族の殺戮と追放により人為的に創り出された建国そのものの異常さ、1967年以降の広大な占領地=植民地領土の獲得、今なお続く植民活動、レバノンやエジプト・ゴラン高原やイラン、イラク、シリアなど周辺国への絶えざる侵略や攻撃で国内引き締めを図る植民地帝国、戦争国家イスラエル。この古典的な占領地=植民地領土拡大と異常な民族差別主義、民族排外主義が一体のものとして進んでいるのです。

イスラエルによる残虐行為と戦争犯罪を改めて糾弾する
従来の侵略からも一線を越えた大虐殺と破壊
 私たちはあらためて、イスラエルが行った残虐行為を明らかにしておきたいと思います。今回イスラエルは間違いなく、ある一線を越えました。その残虐性、非人道性において、そして殺戮と破壊の規模において、かつてない被害がもたらされました。
 ガザ地区の周囲は全て巨大な壁で取り囲まれています。イスラエル艦船で海が封鎖されました。数ヶ所の検問所を封鎖し、エジプトとの国境トンネルを全て破壊すれば、出入り口すべてがふさがれます。150万人の住民は全員完全に閉じ込められました。文字通り袋のネズミです。そこへ容赦のない空爆が始まりました。一日130回、累計約3000回。住民は地中海に逃げるわけにはいきません。地中海に配備された艦船から一斉に艦砲射撃が浴びせられました。戦闘員も非戦闘員も区別なく、子どもや老人、女性などお構いなしに、毎日毎日、大虐殺と破壊が続いたのです。

――12月27日から1月3日までの空爆だけで3000人もの死傷者が出た。無人機を大量動員した無差別空爆であり、多数の市民を殺戮した。
――1月4日の地上戦突入以降は凄惨を極めている。無抵抗、非武装の市民、白旗を掲げた市民への銃撃や、ブルドーザーや戦車での家屋の破壊、建物の屋上で遊んでいる子どもたちへの空爆も明らかになっている。
――ガザ北部アタトラでは住居に押し入り住民を無差別に拘束し、手を縛り目隠しをして屋外のくぼ地に放りこみ、食料や毛布も与えず女性やこどもを数日間野ざらしにした。
――ゼイトゥン地区ではイスラエル軍が住民約110人を1軒の建物に閉じこめ、外に出られないようにした上でこの家を砲撃し約30人を殺害した。
――公的な医療活動への狙い撃ち攻撃。アル・クッズ赤新月社病院など、病院へも攻撃を加え医療活動を不能にした。救急車の移動が阻止され、多数の負傷者が手当されないまま放置された。政治的発言を避けてきた赤十字国際委員会(ICRC)でさえ「中立、不偏」の立場を捨て、病院を攻撃し救急車の移動を阻止し負傷者の手当を妨害し続けたイスラエル軍を非難したほどだ。
――がれきの下には遺体が埋まっていたが、何日間も埋葬することが許されなかった。多くの遺体が腐乱し身元不明で共同埋葬された。
――1月17日には、1800人が避難する国連学校を爆撃した。
――生き残った人々の間にも、とりわけ子どもたちに深刻な戦争トラウマ、精神疾患の影響がでている。

 自治政府の公共施設、インフラ基盤、放送局、モスク、学校、病院、商業施設、市場、家屋、自動車、畑、工場など、あらゆるものが爆撃を受け、がれきの山となりました。簡単に日常生活に復帰できない悲惨な状況が現出しています。そしてさらに、大侵攻を終結させた後も封鎖を続け、復興を妨害しているのです。

イスラエルが犯した数々の戦争犯罪
 戦争犯罪はそれだけではありません。おびただしい数の「非人道兵器」の使用が暴露されています。今回の攻撃を特徴づけるものです。

――対人使用が禁じられている白リン弾。この白リン弾は皮膚に付着し、消すことのできない重大なやけどを負わせる。また多くの負傷者が白リンを吸い込み痙攣、呼吸困難、筋肉の硬直を示した。さらに白リン弾で食料や医薬品、毛布などの援助物資を保管する倉庫などが火事になった。
――周辺の酸素を奪い窒息状態を作り出す燃料気化爆弾。
――劣化ウランの含有が疑われる精密誘導弾GBU-39(バンカーバスター)。もし事実ならガザの狭い地域で放射能被害の危険がある。
――新型兵器DIME(高密度不活性金属爆薬)。DIMEは、タングステンの細かい粒子が仕込まれ、肉体組織が切断され骨さえ粉々にする恐るべき新型弾薬である。等々。

 全身の皮膚が赤黒くやけた負傷者や、手足や頭部がもぎ取られた赤ん坊の遺体が非人道性を物語っています。これら非人道兵器が何の躊躇もなくパレスチナ人民に対して使われたのです。ガザとその人民は新兵器の実験場にされたのです。これらは全てアメリカから供給されたものです。米国による3000トンの武器の追加補給さえ暴露されています。
 一般市民の殺りくや捕虜の虐待を禁じた「ジュネーブ条約違反」、非人道兵器の使用を禁じた「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)第3議定書」違反、軍事目標以外への無差別空爆を禁じた「ハーグ空戦に関する規制違反」等々、戦争に関する国際法がことごとく踏みにじられ、大量虐殺が行われたのです。何とイスラエル政府は、戦争犯罪を免れさせるために、作戦を遂行した軍幹部の名前を隠し、兵士・将校の海外旅行の自粛を通達しました。海外旅行中に戦争犯罪で捕らえられることを防止するためです。どこまでも卑劣です。

米国による軍事援助の犯罪性とオバマの大虐殺黙認の責任
オバマによる大虐殺容認とイスラエル支持の表明
 オバマ政権は、ガザでの大虐殺と戦争犯罪に直接責任を負わねばなりません。イスラエルとの二重国籍を持つ大統領首席補佐官エマニュエルを筆頭に、シオニストを自認する副大統領バイデン、国務長官ヒラリーは言わずと知れた親イスラエル派です。オバマは、その選挙期間中から意外にも親イスラエルの発言をしていることで知られていました。大虐殺が行われているまっただ中には、一貫してノーコメントを貫くことでイスラエルの虐殺にゴーサインを出しました。イスラエルは1月20日のオバマ大統領就任式までに駆け込み攻撃をし、大量の市民を虐殺しました。そしてオバマは就任後は開口一番 「我々はイスラエルの安全に関与することをはっきりさせる。脅威に対するイスラエルの自衛権を支持する」と明確に言明したのです。
現在オバマ大統領は、パレスチナの国家主権を認めず隷属的状態にとどめる「2国家樹立」に言及し、欺瞞的な態度をとっています。パレスチナ人民を苦しめている軍事・経済封鎖の解除とイスラエル軍の完全全面撤退、占領の中止という具体的な方策を抜きにした「2国家樹立」などありえません。

今も続く米国からの軍事・兵器援助
 驚くべき事に、300ものコンテナに入った武器と軍需物資を積んだ船が、3月22日米国からイスラエルのアシュドッドに入港しました。アムネスティ・インターナショナルが追及し暴露しました。パレスチナ人民を殺戮するための兵器が、今も次々と米国から送り込まれているのです。
イスラエル/被占領パレスチナ地域 : オバマ大統領は武器の輸出停止を(アムネスティ・インターナショナル)

 イスラエルの侵略行動はほとんど全て、米政府とペンタゴンとの協力関係の上で行われています。焦点は軍事援助です。米国は公表されたものだけで年間30億ドルもの軍事援助を行っています。(2007年に従来の25%増となる、10年間で300億ドルの軍事援助協定が締結された。)イスラエルの軍事費の2割以上です。これが化け物のような巨大軍事・侵略国家を作り出しました。白リン弾、劣化ウラン弾、DIMEなど非人道兵器のほとんどもすべて米国からのものです。とりわけブッシュ政権の「悪の枢軸」「対テロ戦争」戦略とイラク・アフガニスタン侵略の下で、両者の一体化はエスカレートしました。
 軍事面だけではありません。イスラエルは、ハイテク産業や軍需産業を通じて米国のグローバル独占資本と結びつき、また対米依存の貿易構造を通じて、長年にわたって米国に支えられてきたのです。(輸出の約40%、輸入の約20%が対米)
 07年6月以降続くガザ封鎖に対しては、米国はエジプトに対して国境閉鎖を厳密にするよう圧力をかけ、パレスチナ人民の「兵糧攻め」=「静かな虐殺」作戦に直接加担してきたのです。米国が果たした犯罪的役割を、私たちは徹底して追及しなければなりません。

世界的な“BDS運動”の広がり
イスラエル・アパルトヘイトに対する闘い
 世界の数多くのところで「反イスラエル・アパルトヘイト」の闘いとして、持続した取り組みが行われるようになってきました。それもまた根本的に新しいことです。さらに、イスラエルを国際法違反・戦争犯罪で追及する闘いも広がっています。イスラエルによるパレスチナ占領支配が「イスラエル型アパルトヘイト体制」にほかならないということ、それが全世界的に多くの人々の共通認識として広がってきています。それは、かつての南ア・アパルトヘイトに対する全世界的な取り組みとして行われた「BDS運動」(Boycott、Divestment、Sanctions ボイコット、投資引き揚げ、制裁)の広がりに、端的にあらわれています。
 イスラエルは、オバマ政権の発足にあわせて1月17日で軍事行動をいったん収束させましたが、ゲットー化されたガザ地区の封鎖は続けられ、イスラエルに対する抗議行動も多くのところで継続されました。そして、2月から3月にかけて、新たな闘いとして「イスラエル・アパルトヘイト」に反対する「BDS運動」がグローバルな闘いとして広がってきたのです。
Global BDS Movement
※イスラエルに対するボイコット・投資引き揚げ・制裁のBDS運動は、パレスチナの知識人たちによって2003年10月に最初の呼びかけが行われたが、本格的に取り組まれるようになったのは、2005年の「イスラエル・アパルトヘイト週間(IAW)」からである。170以上のパレスチナ人市民組織が結集して「パレスチナBDSナショナル・コミッティー(BNC)」が組織され、2005年7月に声明を発して、アパルトヘイトのイスラエルに対するボイコット・投資引き揚げ・制裁を全世界に呼びかけた。この声明は、「パレスチナ市民社会はイスラエルが国際法に従うまでイスラエルに対するボイコット・投資引き揚げ・制裁を求める」と題し、次のことを要求している。イスラエル国内のアラブ・パレスチナ人市民の諸権利の完全な平等、あらゆるアラブの土地――ゴラン高原、東エルサレムを含めた西岸地区、ガザ地区を含む――の占領と植民地化の終結、ウォール(隔離壁)の解体、国連決議194で明記されたパレスチナ難民の帰還権と財産権の保護。そして、イスラエルが国際法を遵守してこれらの要求を受け入れるまで、イスラエルに対するBDS運動を行うよう全世界に呼びかけている。

 今年3月1〜8日に行われた第5回「イスラエル・アパルトヘイト週間」は、イスラエル軍のガザ侵攻と無差別大虐殺への抗議・糾弾とBDS運動の強化・拡大に焦点が当てられ、これまでの粘り強い地道な運動を基礎に、名実ともにグローバルなものとして全世界に広まりはじめました。さらに今年は、ブラジルで行われた「世界社会フォーラム2009」で、3月30日の「土地の日」と重ね合わせて「パレスチナ人の諸権利とBDS運動のためのグローバル・アクション・デー」が設定され、パレスチナの地においてさまざまな取り組みやデモが行われただけでなく、国際的にも多くのところでパレスチナ連帯の取り組みが行われました。
※「土地の日」は、1976年にイスラエル国内のパレスチナ人が土地収奪に抗議してゼネストを呼びかけた闘いの中で、武力弾圧によって6人のパレスチナ人青年が殺された日である。現在も進行している土地収奪、植民地化、アパルトヘイト、占領に対するパレスチナ人の抵抗を象徴する日のひとつである。

南ア港湾労働者によるイスラエル船ボイコットの衝撃 労働運動とBDS運動の結合
 2月4日、南アフリカ共和国のダーバン港で、「南ア輸送労働者組合連合SATAWU」の労働者たちがイスラエル船の積み荷降ろしを拒否する闘いを成功させました。「南ア労働組合会議COSATU」は、この闘いの勝利を全世界に知らせ、世界中の港湾でイスラエルの積み荷をボイコットする闘いを呼びかけました。そして、南アでのパレスチナ連帯と反イスラエル・アパルトヘイトのBDS運動が、単なるシンボリックなものではなく実質を伴ったものとして新しい段階に入ったと宣言しました。なぜなら、COSATUだけでなく、南ア・キリスト教会評議会、南ア・パレスチナ連帯委員会、ヤング・コミュニスト・リーグ、その他多くの草の根の組織やネットワークが、さまざまな形態でBDS運動にとりくむようになってきているからです。
 これに先立ち1月27日には、「オーストラリア海事労組・西オーストラリア支部」が、ガザ人民への支持とイスラエルの軍事攻撃糾弾を決議しました。その代議員会は、パレスチナのイスラエルBDS運動を支持し全面的に参加することを表明し、さらに「オーストラリア労働組合評議会ACTU」にBDS運動への支持を呼びかけました。また、あらゆるイスラエル船とイスラエル向けの船およびイスラエルからの品物をボイコットすることを、「オーストラリア海事労組・全国協議会」に求めました。オーストラリアではその後、さまざまな労組や大学キャンパスでの学生たちの取り組みが行われ、長期的なキャンペーンの戦略が議論され検討されています。また、多国籍企業ストラウス・グループのイスラエル人所有会社マックス・ブレナー・チョコレートは、イスラエル軍の中でも無慈悲な攻撃で悪名高いブリゲードを支援しているということで、特に運動のターゲットとなっています。
 アイルランドでも諸組織がBDS運動を始めています。アイルランド労働組合55労組60万人の代表者会議がイスラエル商品のボイコットを開始しました。1月31日の「アイリッシュ・タイムズ」に、「アイルランド人はパレスチナに正義を求める」の全面広告を掲載し、アイルランド政府と人民にイスラエル商品のボイコットとBDS運動への支持を呼びかけました。スペインでは、バスク地方の30以上の都市でパレスチナとバスクの闘いを結びつけるデモが行われ、BDS運動の呼びかけが行われました。ビルバオのデモには複数の労組が参加し、イスラエル・ボイコットが呼びかけられました。ほかに10の地方自治体でイスラエルとの結びつきを断つことが要求されています。カナダのケベックでは、「大学教職員労組パレスチナ連合」が組織されて、イスラエル・ボイコットの呼びかけが行われ、多くの大学教職員が支持を表明しています。公務員部門の20万人を組織する「カナダ公務員労組」のオンタリオ支部では、大学労働者代議員会がイスラエルのアカデミック・ボイコットを決議し、イスラエル・アパルトヘイトを教育キャンペーンすること、BDS運動を支持することを労組全体に求めました。
 2月14日に、デンマークでは「ボイコット・イスラエル・デー」が設定されました。そこでは、パレスチナ占領地で栽培されてイスラエルの輸出会社によって売られている果物・野菜をボイコットすることに焦点が当てられました。スェーデンのストックホルム市は、イスラエルの市街電車プロジェクトと関わっている会社との協約を終わらせました。ノルウェーの労組の間でもBDS運動の呼びかけが広がっています。6大労組と多くの組織がイスラエルへの国家投資を終わらせるキャンペーンを行い、商店労働者の最大労組が雇主にイスラエル商品の購入ストップを求めました。
 イタリア最大の「金属労働者組合FIOM」(36万人)は、ガザ封鎖・攻撃についてイスラエル高官たちを戦争犯罪裁判にかけることを要求し、イスラエルとイタリア間の、さらにイスラエルとEU間の協定や契約などを終わらせることも要求しました。トルコの「消費者連盟」は、イスラエルへの支持・協力を公言している会社で売られているイスラエル・米国・英国の商品の全国的ボイコットを呼びかけました。コカ・コーラ、ペプシ・コーラ、スターバックス、マクドナルド、バーガー・キングが、特にリストアップされています。モーリシャス(インド洋の島国)の「ソーシャル・ワーカーズ連盟」は、イスラエル商品のボイコットを呼びかけ、商店からイスラエル商品を撤去するよう要求しました。

学生たちのBDS運動が活発に行われている
 英国のいくつもの大学で、学生たちがイスラエルのガザへの軍事侵攻に抗議し、自分たちの大学にイスラエルとの関係を断つよう要求して、キャンパスを占拠し座り込む直接行動を行なっています。それは2月下旬には21のキャンパスに広がりました。マンチェスター大学では、1000人の学生が結集し、イスラエルをアパルトヘイト時代の南アと同等とみなして、イスラエルの会社のボイコットをはじめとするBDS運動を行政府と学生ユニオンに呼びかけました。スコットランドの学生たちは、「スコットランド・パレスチナ連帯委員会」を組織し、2月4〜5日には、ストラスクライド大学のグラスゴー校がイスラエルとの結びつきを断つことを求めて24時間の座り込みを行ないました。
 米国でも、ガザの虐殺に抗議する行動が、ねばり強く闘われています。ハンプシャー大学での「パレスチナの地に正義を求める学生たち」の闘いは、イスラエル軍への装備やサービスを提供している6つの会社(キャタピラー、ユナイテッド・テクノロジーズ、ジェネラル・エレクトリック、ITTコーポレーション、モトローラ、テレックス)からの投資引き揚げに成功しました。2年にわたる粘り強い闘いを経て、この2月7日に大学がこれら6つの会社から投資を引き揚げることを発表したのです。ハンプシャー大学は、かつて1970年代に、アパルトヘイトの南アから投資を引き揚げる最初の大学として投資引き揚げ運動の道ならしをしました。そして今回も先頭を切って投資引き揚げを決定したのです。ロチェスター大学の学生たちも、自分たちの大学と米国・イスラエルの軍国主義とのつながりを完全に断ってガザの学校に援助することを要求して座り込みを行いました。ニューヨーク大学でも、投資引き揚げ運動が開始されています。
 フランスでも多くの大学関係者・学究が、占領に加担しているイスラエル諸機構のアカデミック・ボイコットを表明し、広範なBDS運動を推進しています。また、イスラエル国家指導者たちの戦争犯罪裁判を求めています。

 「反イスラエル・アパルトヘイト」の闘いは、ますますグローバルに広がりつつあります。それをさらにいっそう拡大・発展させていくことが重要です。それと同時に、現在もなお続けられているガザ地区の封鎖解除を要求する国際的な闘いの継続が求められています。