シリーズ 「新冷戦」に反対する ~中国バッシングに抗して
(No.8) 中国の「ゼロコロナ」政策に学ぶべき(上)
-河北省石家荘市でのコロナ感染に対する徹底した検疫政策-

 現在日本では、2021年の年明け以降、コロナ感染が危機的状況を呈しています。累計感染者は1月13日に30万人を超えました。感染者の加速度的急増に歩調を合わせるように、死者も急増しています。
 更に欧米では日本以上により深刻な状況に陥っています。イギリスでは、より感染力が強くなった変異種が猛威を振るっており、連日5万人前後の新規感染者が出続けており、3度目のロックダウンを余儀なくされています。ロンドンの市長は「もはや制御できません」とサジを投げだすまでになっています。米国ではさらに事態は深刻です。連日20万人近くの感染者、数千人の死者が報告されており、感染者・死者共に一向に減らないばかりか増える一方です。カリフォルニア州では、州政府が「病気やけがで重症になっても入るベッドはありません」との警告メールをある郡の全住民に発するとともに、救急車の隊員には、「病院に運んでも助からないと判断される患者は運ばないように」の命令を下しています。完全な医療破綻であり、命の保証が全くなくなっていのです。日本でも、医療現場の逼迫により、救急車の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難」事案が急増し、多くのコロナ感染者が放置に等しい「自宅療養」を強いられており、自宅での急死が1月に急増(累計約200人)するなど医療破綻が始まっていることは既に述べた通りです。
感染症法・特措法改悪による罰則導入反対--政府と自治体の責任で、徹底した感染対策を(リブ・イン・ピース☆9+25)

 このように先進資本主義国ではほとんどの国が危機的状況に陥っています。一方、中国、ベトナム、キューバ等の社会主義国では、コロナ感染は基本的に抑え込まれています。なぜでしょうか?最新の中国での防疫政策の実例を通して、その理由を明らかにしたいと思います。日本のメディアでは、1月23日の“武漢封鎖一周年“にあたって、「初期対応に遅れ」「自由を制限」「行動を監視」など発生当時の困難な側面ばかりが否定的に報道されました。「人命最優先」でコロナを徹底して制圧し、その上で経済・社会活動を再開させた中国政府の「ゼロコロナ」政策の成果については全く触れられていませんでした。私たちは、日本のそして全世界の感染を抑え込むためには、1日でも早く中国の防疫政策を大胆にマネし取り入れることが是非とも必要と考えています。またその方策以外に感染を抑え込むことはできないと考えています。

河北省 省都石家荘市の防疫-大量検査、徹底した隔離療養、大規模な消毒-
 中国でのコロナ感染も決してゼロではありません。年明け以降、その感染がもっともひどいと言われる河北省の省都石家荘市での感染の実態と中国中央政府・市政府が行っている防疫政策を紹介します。

(1)住民1025万人全員を網羅する大量のPCR検査
 石家荘市では、1月2日に1人目の感染が確認され、その後1月5日には20人に感染者が増えました。これにより緊急対応メカニズムが発動となりました。それを受け、市政府は直ちに市民全員へのPCR検査を行うことを決め、大量検査の実施にとりかかりました。中国全土からの応援もあり、わずか10時間で1日当たり100万検体の採取ができる巨大なテント式の検査場を建設しました。1月6日からのわずか3日間で、住民1000万人以上全員へのPCR検査をやり終え、それにより、無症状者含め全部で369人の陽性者を確認しました。更に、「偽陰性」等検査をすり抜ける陽性者を補足するため、1月12日から2日間で2回目の全住民へのPCR検査実施し、更に1月20日からはなんと3回目の全住民PCR検査に着手しています。東京都などでは、1日当たり1万件を超えるPCR検査が行われると、「検査数が大幅に増えた」と報道されますが、中国では石家荘市だけで、1日当たり500万人です。日本の数百倍に及びます。
河北省で新規国内症例20人を確認 緊急対応メカニズム発動(人民網)
河北省石家荘「火眼実験室」 一日100万人分のPCR検査可能(人民網)
河北省石家荘、全住民を対象とした2回目のPCR検査実施へ 2日で完了目指す(人民網)
石家荘市、全市民を対象とした第3回PCR検査をスタート 河北省(人民網)

(2)徹底した隔離療養
 上記検査で明らかになった陽性者はもちろんこと、たとえ検査で陰性であったとしてもその濃厚接触者(特に家族)に対し徹底した隔離療養が求められます。その隔離療養施設が不足するとして、中国の中央政府は、わずか5日で、5百人強が生活できる隔離療養施設を建設し、更に追加として3千人が生活できる隔離療養施設を建設中です。
日本の緊急事態対応は「超遅い」 新規感染“1日100人超”でロックダウンにみる中国のスピード感 日本における“罰則”の実効性は(ABEMA TIMES)
石家荘で新型コロナ濃厚接触者向けの集団隔離臨時施設が急ピッチで建設中(人民網)

(3)大規模な消毒
 市民全員のPCR検査と感染者の徹底した隔離療養は、これまでも中国では各市で数人の感染者が判明するたびに行われてきました。今回の石家荘市では、これらの対策に加え、新たに大規模な消毒の実施も行われています。先ほど述べたPCR検査で陽性が判明した感染者の9割が、石家荘市のある農村部に集中していました。そのため、市政府はこの村民全員2万人をある場所に一旦移動させたうえ、この村地域全体に大掛かりな消毒作業を遂行しています。
石家荘の農村部の村民2万人が集団隔離地に移送 新型コロナ感染拡大で(人民網)

(4)「モノから人へ」の感染の撲滅
 これだけ大規模で綿密な感染防止対策を行っても、中国では、感染をゼロに追い込むことはできていません。その原因の一つと考えられているのが、「モノから人」への感染です。いわゆるコールドチェーンと言われる主に海外から輸入される冷凍食品です。そのため、中国政府はそれら食品サンプル約130万件を調査し、47件からウイルスを検出したことを報告しています。この調査結果を受け、中国政府は、ウイルスが検出された食品輸出会社39社に対し輸入停止措置を取るとともに、従業員がコロナに感染した食品輸出会社124社にも同様の措置を取っています。人だけでなく、モノからの感染に対しても徹底した水際対策を行っているのです。
中国、コールドチェーン食品メーカー124社の輸入を一時停止(人民網)

 すでに中国ではウイルスの由来について、外国から来たのか、人からかモノからかまで遺伝子の調査でほとんど特定しています。石家荘市のウイルスは帰国者由来で、最近の大連の感染事例はロシアからの冷凍輸入物に付着したウイルス由来であるというようにです。「ゼロコロナを目指して徹底的に感染者を減らしたからこそ、そこまでの追跡が可能となっているのです。

2021年1月27日
リブ・イン・ピース☆9+25

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