そもそも田保寿一さんがイラク帰還兵の取材を始めたきっかけは、「アルカイダ」と呼ばれるものの正体がわからないので、米軍の帰還兵たちが、その情報を持ってないかと思い連絡をとり始めたことだといいます。このいきさつがまた実に興味深いものです。帰還兵と連絡がとれると「米軍はテロリストとどのように戦ったか?」などと訊いてみたといいます。だが話がかみ合わない。皆が口々に「テロリスト」という言葉を使うのを嫌い、「テロリスト」はいなかった、「武装勢力」はいたけれど・・・などとちぐはぐなことを言いはじめたのです。これはどういうことでしょうか。 映画の第二章に以下のような場面があります。 田保「ファルージャとアルカーイダの関係を言う人がいますが?」 コケシュ「政策を支持させるためアメリカ市民を情報操作している、アルカーイダは、アメリカ人を怖がらせる亡霊のひとつだ」 リアム・マダン「ある人がテロリストと呼ぶ人は別の人にとって自由の戦士だ。戦争を正当化するため戦争の相手側の市民を人間的でないものと思わなければならない。・・・」 実に現場の米兵自身が、「テロリストはいない」「アルカイダは亡霊だ」「自由の戦士だ」と認識していたのです。 さらにこんな問答もあります。 田保「武装勢力とは誰のことだと思いますか?」 コケシュ「武装勢力とは、米軍の占領にうんざりしている人たちです、私は17歳で海兵隊に入った、もし自分が17歳でイラク人だったら、占領軍を自分の国から追い払うため武器を手に取らないかもしれないが、自分のとるべき立場はわかる、12歳から17歳で、男としてまともに育っていれば、自分の国が外国に占領されて、いい気持ちではいられない。」 ――「テロリスト」は戦争をするために米軍が作り上げた亡霊だった。では米軍が闘っている「対テロ戦争」、イラク戦争とはどんなものなのか。それがこの映画で語られている内容です。 ウィンターソルジャー公聴会3日目は「差別と戦争、敵を非人間化する」というテーマで証言が行われ、自分達以外の人間を「ハッジ」=軽蔑すべきものと呼び、人種差別と、非人間化が、戦争の最高司令官にはじまり、最下層の兵士まで浸透しているが無差別虐殺を可能にすると証言します。「戦争を正当化するために、相手国の市民を人間でないものと思わなければならない」と。 これは、単にイラクの前線で闘う米兵たちだけの問題ではないはずです。「アルカイダ」「テロリスト」「悪の枢軸」「イスラム原理主義組織タリバン」「イスラム原理主義組織ハマス」など、攻撃しようとする相手を自分たちと異質な者、いや人間ではないものと思わせるためにありとあらゆる手段が取られています。それは、米欧日などの政権の責任だけでなく、マス・メディアの責任でもあります。 2009年3月8日 反占領・平和レポート NO.59 ハマス=「テロ組織」の虚像を垂れ流すマス・メディアと西側諸国を批判する(リブ・イン・ピース☆9+25) 『対テロ戦争』への加担に反対し、イラク・インド洋からの自衛隊撤退を求めるシリーズ(その6)――[ビデオ紹介]「テロリスト」とは誰か、「テロとの闘い」と何か?ネオコンが作り上げた、壮大な虚構 国際テロネットワーク、アル・カイダは存在しない――(署名事務局) [番組紹介]アメリカ社会を揺るがす帰還兵問題と「隠れた徴兵制」(リブ・イン・ピース☆9+25) |