「対中戦争を準備する「安保3文書」撤回、43兆円軍事費、軍事費増税をやめよ」というテーマで、 リブ・イン・ピース☆9+25会員の吉田が報告をしました。その後、活発な質疑応答がおこなわれました。以下、報告の要旨について紹介します。 対中戦争を準備する「安保3文書」と憲法違反の「敵基地攻撃」に突き進む日本 まずは、岸田首相による施政方針演説「今は明治維新と敗戦に続く歴史の転換期だ」「われわれは再び歴史の分岐点に立っている」を念頭に置きたい。これは「米国国家安全保障戦略2022」で述べられている「米国と世界にとって決定的な10年のはじまり」と共通の認識に立っている。米国のこの文書では「中国は唯一の競争相手」と位置づけられている。 日本と米国、この両政府は同じ認識に立って共同歩調を取り、中国との戦争を開始しようとしている。このことについて私たちは危機感をもって当たらなければならない。 1 敗戦後78年、日本は再び対中国戦争を準備するのか? 昨年閣議決定された「安保3文書」に関して、メディアや野党は、軍拡、軍事費、敵基地攻撃能力に触れても、明らかに中国との戦争準備を述べていることに関しては触れない。 反中嫌中では全体が大政翼賛会的反応で、最重要の問題には無関心。まさに異常事態。 2 「安保3文書」とは?――2022年12月に閣議決定された3つの文書 【1】国家安全保障戦略NSS…軍事・外交などの最高方針(2013年まで存在しなかったが、この時初めて米国に倣って作られた) 【2】国家防衛戦略NDS…軍事計画の最高方針(「防衛計画の大綱」(2013)を名称変更) 【3】防衛力整備計画…当面5年間の軍事力整備計画(「中期防」(2018)を名称変更) これらの文書では、【1】アメリカに倣って中国を敵として認定、【2】2027年までに実際に中国と戦争できる体制を作り、【3】中国を攻撃できる兵器を調達する計画を立てる。 何人もの米軍関係者の発言では「2027年」がひとつの合言葉となっており、明らかに米軍は2027年前後に対中国戦争が起こる=起こそうと考えている。 3 日本の軍国主義の新段階? 日本は初めて他国を攻撃できる兵器の大量装備を開始した。 日本から北京に届く射程距離のミサイルを2026-27年に大量に配備しようとしている。 「敵基地攻撃能力」は先制攻撃兵器に他ならない。「相手の攻撃兆候をとらえて、攻撃前に反撃?する」ということだが、配備予定のトマホーク巡航ミサイルなどは、速度が遅く、反撃向きではない。まさに先制攻撃のための兵器である。 「専守防衛」をかなぐり捨て、憲法9条の条文に完全に違反している。 南西諸島の対中攻撃基地化と軍事要塞化が進められている。大分でも新たな大型弾薬庫の建設が着手された。九州・奄美大島から沖縄にかけての南西諸島が中国本土を攻撃する長距離ミサイルの基地にとなることに中国は脅威しか感じないだろう。 沖縄の人々はこれに危機感を感じ、軍拡増税反対、平和外交を要求している。デニー沖縄知事も当然のことながらミサイルの配備に反対を表明している。 対中戦争準備最優先の国家作りがなされている。軍事・軍事関連(空港、港湾、公共インフラ)予算の最優先。軍需産業へのテコ入れと武器輸出の推進。軍事技術につながる科学技術投資優先。「機密取り扱い資格」を創設。(身内に共産主義者などがいないことを証明しなければならない)軍事費急拡大は天井知らず。これまで年度を超えた予算は認められてこなかったのに、軍事費に関しては、今回新設された。 4 中国侵攻=「台湾有事」は米日のデマ 「台湾の人々が、独立の方向に突き進んで、中国がそれを押さえ込むために武力統一に持ち込む」というシナリオが描かれているが、台湾の人々は圧倒的に現状維持を支持し、緊張と戦争は望んでいない。昨秋の統一地方選挙で「独立派」の民進党は大敗北。その理由はバイデン政権と蔡英文が対中対決を煽って、戦争の危険を高めたと反発を買ったから。 中国は経済発展と貧困撲滅、共同富裕のために平和と安定を求めている。時間はかかっても平和的統一が基本戦略。西側が分裂(独立)を煽って介入する場合に限って、武力行使の権利を放棄しないと警告(20回党大会)。自分から武力統一を仕掛けることはない。 中国が台湾に攻めてくるから対抗するという「台湾有事」は米日のプロパガンダ。米国は戦争による軍需産業の儲けが巨大な、特殊な戦争国家。 「台湾有事は日本有事」という安倍元首相が始めた宣伝は悪質。台湾問題は中国の内政問題であり、台湾は中国の一部であると、以前から日本政府は認めている。 *米国の国際戦略研究所による戦争シミュレーション「CSIS机上演習(ウオーゲーム)」(2023.1) 2026年に中国が「台湾侵攻」開始することを想定して米軍・自衛隊が参戦した場合どうなるかを24のシナリオを使用。その結果は中国軍、台湾軍が壊滅状態。在日米軍も壊滅。自衛隊は半分壊滅という結果。しかし、このシナリオでは住民の被害は計算に入れられていない。実際は住民にも多大な被害が出るのは必至。 琉球新報による取材では、その後自衛隊は米本土から応援が来るまで半年〜1年頑張るとのこと。自滅のための戦争突入なのか? 中国の「台湾侵攻」は起こらなくても、軍事衝突を起こすために米軍は挑発を続けている。中国に軍事的圧力をかけて軍事費と資源を使わせて疲弊させることが目的。 どうして米日はここまで異常に好戦的になったのか ウクライナ戦争を契機に、「グローバルサウス」(途上諸国)の中で米国離れが進んでいる。対ロ制裁に不参加、ドル決済に対する代替手段の追求など、米国がトップに立って世界経済を支配する体制が崩れてきている。 中国の経済力が10年以内に米国を追い越す可能性があり、今まで欧米先進国が投資や金融で収奪してきた方法が困難になってきている。 軍事力ではまだ米が優位、それを前に出して包囲しながら、何としても中国を追い落とし、弱体化させることを追求している。極めて危険な状態である。 5 中国との戦争を阻止することはできる 日中は戦争せずに平和共存できるはず。中国は平和友好条約を結んでいる唯一の国。 中国は、貧困撲滅、共同富裕、経済成長のために平和と安定を必要としている。 日本も同様。中国派最大の貿易相手国であり、重要な投資先である。ただし、小規模軍事衝突、偶発戦争の危険性は甘く見ることができない。反中宣伝に対して現実をリアルに取り上げ、具体的事実で反論しよう。 報告の最後に行動の紹介と提起がなされ、それを受けて様々な意見が出ました。 * 中国と台湾との相互交流が非常に進んでいる。貿易・観光など経済面だけでなく、結婚や骨髄バンクなどでの人的な結びつきが強まっている。 * 一方、日本の国民の意識は「台湾有事がありうる」が8割。もしも米国からのデマ情報や偶発的な状況で日本から中国に攻撃したら、政府からこの先制攻撃を正当化するデマが流されると、反中・嫌中意識がはびこるもとでは、これに対抗できるのだろうか。 * たしかに偶発戦争の危険性はあり、これに対する危機感が薄いように思う。しょっちゅう米軍の偵察機が中国の近くを飛び回り、挑発している。いつ衝突してもおかしくない。 * 戦争には「兵士」が必要になってくる。現政府は当面は自衛隊でやりくりするが、改憲前でも、何らかの形で「兵士」調達というのはあり得る? * 自衛隊員の人数を増やす計画はないようだが、“経済的徴兵”はあり得る。 *「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」は、、change.org でオンライン署名「#軍拡より生活 !~未来の子どもたちのために平和を!」を 1 月 13 日に開始し、さらに4月中に書籍『女たちは怒っている ~子どもたちの未来に平和を~ 』(仮称)を出す予定。 * 大分県では、2月16日から日出生台演習場で日米共同軍事演習が始まった。同一年度で2回もおこなわれるのは初めて。加えて、長射程ミサイル保管のための大型弾薬庫を陸上自衛隊大分分屯地に新設する策動が明らかに。これから大分では、この新設阻止運動が立憲野党、平和運動センター、労働組合、市民運動等で取り組まれていく。 * 今はウクライナだけが戦争しているが、支援している諸国が実際に加わったら、ロシアは核兵器を使うのでは? 人類滅亡の危機が迫っているという危機感を共有したい。 * アジアでは核戦争に対する危機感が低いので、それは強調したい。核戦争への危機意識は欧米ではより強い。だからこそ、武器援助や参戦に反対する運動が盛り上がっている。 *嫌中意識に対抗するには、たとえば、竹内亮さんが中国の普通の人の姿を取材したYouTube「和之夢(わのゆめ)」はとても興味深い。それを周りの人々に広めたい。 * 「気球」については中国が早い段階で「民間のものが間違って飛んで行った」と言ってるのに、わざわざ撃ち落とした。「スパイバルーン」と言われているが、米政府は「実害はなかった」と述べている。米軍自身が「グアム・ハワイの偵察をめざしたが風で飛んでいった」と言っている。そんな風任せのスパイ気球などありえない。それなのに、日本では自衛隊が自衛隊法の解釈を変えて、撃ち落とせるというようにした。米軍と一緒に戦争をするためには、これまでの法解釈を変えることになったのが恐ろしい。そんな社会になっている。 次回の連続講座第7回は 3月12日(日)午後2時からです。今回の第2部、“軍拡予算急増に反対、生活を犠牲にするな”がテーマです。よろしくご参加ください。 ※当日資料(PDFファイル) 2023年2月20日 |
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