4月23日「#つなごう改憲反対 キックオフ集会」開催
改憲の動きを止めるために、それぞれのところから取り組みを開始しよう

 4月23日、大阪市内で「#つなごう改憲反対 キックオフ集会」をリブ・イン・ピース☆9+25、ピースニュース、子どもに「教育の権利」を!大阪教育研究会の共催で開催した。会場には60名近くが参加し、リモート参加も含めて約90人の集会となった。
 はじめに主催者のピースニュースのあいさつで、この集会の趣旨が語られた。ロシアによるウクライナ戦争の影響で9条を変えて軍隊を持つべき等の与党の声が高まっており、7月の参院選の結果によっては改憲の動きが加速化する危険性がある。改憲勢力が追求する憲法改悪は、9条だけではない。教育や医療を受ける権利、働く権利、言論の自由、思想・良心の自由、男女平等や差別の禁止などの内容が危機にさらされている。緊急事態条項の新設によって「公益」優先=人権制限の危険、メディア統制の危険がある。今必要なのは憲法の精神を活かした政治を行うことだ。さまざまなところから生活に密着した改憲反対の声をあげ、つながりをつくっていこうと呼びかけた。

私にとっての憲法――身近なところから憲法を考える
 集会のメインは、「私にとっての憲法 改憲されたらどうなるか」をテーマにしたパネルディスカッション。身近なところから憲法を考えるという趣旨だが、二人の弁護士、東日本大震災避難者の会代表、小学校の教員、平和運動の活動家という顔ぶれで、実はそれぞれ「その筋のプロ」のような人たちであり、本当に生活に根ざした提起になるのか不安だった。
 しかし始まってみるとそんな不安は吹き飛んだ。憲法に「差別されない権利」が明記されている。弁護士からは部落差別との関係で語られたのだが、「差別されない権利」こそ自分自身の問題、生活そのものだ。「知る権利」や「言論の自由」も特別なことではない。日常的に職場や地域の中で日々体験することだ。「避難する権利」は確かに聞き慣れない言葉だが、「隣が火事になって逃げるというのは当たり前」と言われれば頭にすっと入る。ところが原発事故の放射能から逃げたら自主避難、自分勝手と言われるのはおかしい。教員の話は、コロナ禍で子どもたちがどんな生活を強いられているのか、安心して教育を受ける権利が奪われている様が伝わってきた。戦争に巻き込まれず「平和のなかで生きる権利」の重要性も、ウクライナ戦争を見てみれば痛いほどよくわかる。
 一方原発事故から避難する権利、部落差別のネットへの書き込み、政権を批判する人への言論封殺や排除、教育現場での教職員への統制、そして沖縄基地の押しつけや在日外国人の差別など、目をつぶれば見ないですまされる問題とも言える。その点、パネラーの人たちは、それぞれの「私」がかかわっている問題を、「憲法は国家権力を縛るもの」「幸福追求権」「平和のうちに生存する権利」「個人の尊厳」などの憲法のキーワードを使いながら、それぞれの条項がいかに自分達の生活に密接に絡み、そして憲法を武器にして権利を守りことができるか、憲法に規定された権利を実現していかなければならないかをわかりやすく語ってくれたと思う。すべての問題が深いところで繋がっていることを強く感じた。

各パネラーの発言
○中井雅人弁護士は、ビデオメッセージでの参加だ。「全国部落調査」復刻出版差止等請求訴訟に関連して、部落差別図書の出版禁止やインターネット上での公開の禁止などを要求し、勝訴した。そこで強調されたのが、憲法第14条の「差別されない権利」だ。この裁判では「平等原則」を確認するにとどまらず、「国家および私人に対して差別に基づく行為、差別言動、差別助長の禁止」を求めた。「差別されない権利」は、あらゆる場面に通じる重要な概念だと思う。もう一つ「非教育的指導に従事させられていた元教員の訴訟」での和解の実現。小学校の教員が児童に反省文を書かせるという指導を行わされたことについて、憲法第26条の「教育を受ける権利」に関する教授の自由として闘われたのだ。最後に「憲法外におかれた外国人児童の教育を受ける権利」の紹介があった。

○谷次郎弁護士はまず「制限規範としての憲法」(立憲主義のもと権力をしばるもの)として、国家権力による人権侵害と闘うために憲法を武器にする意義を語った。自身がかかわった「表現の不自由展」仮処分事件、「日の丸・君が代」再任用訴訟、「戦争法」違憲訴訟、寿都町情報公開訴訟を例に出し、言論の自由、思想・良心の自由、平和的生存権、知る権利などの憲法上の権利を巡る争いを紹介した。強く印象に残ったのは、それら諸個人の権利をめぐる闘いが、同時にイラク派兵や核のゴミ処分問題、戦争責任や教育現場の日の丸君が代強制など国政の根幹にかかわる事案として争われ、その勝訴や事実認定が全国的な意義を持っていたことだ。谷弁護士は、「改憲されると 裁判で闘った権利が脅かされるとともに政府は自らの活動範囲を拡大する」と危機感をあらわにした。

○森松明希子さん(東日本大震災避難者の会代表ほか)は、「避難する権利」について戦争によってウクライナから避難する人々の現実とオーバーラップさせながら切実な思いを語った。彼女は福島原発事故によって二人の子どもを連れての母子避難を余儀なくされて11年になる。日本列島の地図を示しながら、放射能汚染の範囲を行政区画で区切るという、あまりにも理不尽な線引きを批判した。避難地域に指定されないと「自主避難」とされる。個人の責任に転嫁するための造語に過ぎない。森松さんは「自力避難」と言い換えて避難生活の苦労を表現し、福島原発事故を「東電による放射能バラマキ事件」と糾弾した。たとえば戦禍から逃れる権利は当然であり、憲法前文に「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れる」権利として明記されている。戦時中は逃げる権利すら奪われ、国策である戦争のために消火義務が課せられた。戦争と原発事故は同じく最大の人権侵害だと感じさせた。森松さん「被ばくからの自由」という言葉を使い、生命・健康に対する自己決定権、健康に対する権利、健康に生きる権利として闘っていることを訴えた。

○大阪市立小学校の教員は、私にとっての憲法は「自分たちを拘束するものであり、子どもの権利・自由を擁護するもの」と規定して話した。子どもの権利を念頭に置かれた条文として、第26条教育を受ける権利、第27条労働の権利と児童酷使の禁止、25条生存権、13条幸福追求権を挙げ、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」を紹介した。コロナ禍において学校休校を一方的に強制する国の介入や、入学式の中止が松井市長のツイッターで知らされたこと、オンライン授業の強制で格差が拡大が懸念されるなど教育現場を顧みず子どもを無視した形で進められていることに強い危機感を示した。憲法が「自分たちを拘束するもの」と規定したことについては会場からその意味について質問が出された。教員には子どもの人格形成を助けるという役割がある一方、権力者として子どもたちに接する立場にもある。“自分が憲法に縛られていることを絶えず自覚しなければならない”との戒めは多くの参加者の共感を呼んだようだ。
 追加の発言として、児童養護施設羽曳野学園を併設した長谷川小学校赴任体験を語り、劣悪な家庭環境にある子どもたちに、必要な支援と教育環境を整える重要性を訴えた。

○リブ・イン・ピース☆9+25の事務局からは、改憲反対の取り組みの中で特に学んだと思う点を二つ紹介した。一つ目は、憲法9条が、日本が侵略してひどい目に遭わせた国々に対しての、平和国家である証文であるということ。二つ目は、憲法は現実には、沖縄や在日の人たちには適用されていないことを意識し憲法の真の実現を目指さなければならないということ。憲法は9条だけでなく、前文、人権規定、文民統制、徴兵制禁止等全体として戦争を排除する構造になっており、それをもとにGDP1%枠、武器輸出三原則、大学での軍事研究の排除、非核三原則などがあるという。9条は自覚するしないにかかわらず社会の中で根付いてきたと感じた。9条は侵略した国々への約束であるから日本の都合で勝手に破ってはならないと改憲反対の意義で締めくくった。

「#つなごう改憲反対 みんなの行動」でつながりをひろげていこう
 前半のパネラーの発言が熱を帯び、予定時間を大幅に上回ってしまったため、後半の質疑応答や発言の時間が限られる中だったが、さまざまな立場からの発言があった。
 ロゴを作成した方から届いたメッセージが代読された。非正規の仕事をいくつも掛け持ちしている人で、平和の象徴の鳩がつなげられた手から飛び立とうとしている絵柄を紹介した。部落解放同盟のメンバーは、水平社宣言100周年の意義、憲法第25条に基づく住環境の改善や、第26条に基づく教科書無償化実現の取り組みなど部落解放運動が果たしてきた重要な役割を語った。医療従事者は、コロナ対策の現状がまさに放置状態で医療の権利、生きる権利が侵害されていること、大阪でのカジノ反対署名から反維新につなげていきたいとの発言。小学校教員は教科書の改悪が進む中、困難な中で憲法教育を進めていること、またウクライナ戦争で、戦争がゲームやアニメの世界ではなく、悲惨な実態として子どもたちに迫っており、戦争の原因や日本の過去の戦争と絡めても重要な課題であり、どのように子どもたちに教えるのか、日々教員は問われているとの発言があった。
 最後に主催者からのまとめで、非常に危険な情勢になってきていることが指摘された。第一にウクライナの戦争が一旦停戦協定寸前まで行ったがバイデン政権の介入によって反故にされ、ミサイルや戦車、戦闘機まで供与されて徹底抗戦を強いられ、被害が拡大し、戦争を長期化・泥沼化させるような動きが強まっている。第二に、衆参憲法審査会が毎週開かれ改憲の議論が加速し、同時に岸田政権がウクライナへの武器供与、ロシアへの制裁で深く戦争に関与しながら、敵基地攻撃能力の獲得、核共有論、軍事費GDP2%などが公然と語られるようになっている。しかしウクライナ戦争の教訓は、米・NATOの軍事力と軍事同盟こそが脅威となり戦争を引き起こしたということだ。今こそ戦力の不保持と戦争放棄を謳った9条の意義が高まっている。
 今回のキックオフ集会を皮切りに、職場や地域、グループでの取り組みを強めること、ホームページやブログ、SNSなどを通じた宣伝を強めることが提起され、それらの活動の紹介や交流を進めるため「#つなごう改憲反対 みんなの行動」のメーリングリストの立ち上げと参加が呼びかけられた。

2022年5月9日
リブ・イン・ピース☆9+25