対中国戦争のための改憲反対
7月の参院選での改憲勢力2/3を阻止しよう

「台湾有事」=対中国戦争のための9条改憲に反対しよう
 3分の2の議席確保を狙う7月の参議院選挙を前に、改憲勢力はウクライナ戦争を千載一遇の好機と見て憲法改悪の攻勢をかけています。岸田政権、自公与党、維新、国民民主などが一気に改憲気運を高めようと動き出しています。
 5月12日の衆院憲法審査会で、自民の新藤義孝委員は「国の防衛体制の充実は喫緊の課題」と9条改憲を議題にするよう求め、これに応じるように、維新の足立康史委員は19日の同審査会で、憲法9条に自衛隊を明記する維新改憲案を説明し、「何を差し置いても議論すべき項目の1つは9条だ」と述べました。新藤委員は、維新の案を「基本的に自民党が提案している内容と同じ」と歓迎しました。自民と維新が気脈を通じて議論を促進しようとしています。
 ウクライナ戦争だけではありません。中国軍の動きや朝鮮民主主義人民共和国のミサイル実験などの動きが事細かに報じられ、「軍備増強が必要」「憲法9条は現実に合わない」という雰囲気が作られています。日本への核兵器配備を意味する「核共有」までもが公然と議論されています。
 9条改憲は、5月の日米首脳会談で合意した「台湾有事」=対中国戦争準備と一体です。岸田政権が進める敵基地攻撃能力の獲得、南西諸島のミサイル要塞化、日米のみならず西側諸国連合軍との共同訓練強化、そしてGDP比2%=5・5兆円もの大軍拡など、これらはすべて対中国戦争のためです。政府が繰り返す「専守防衛」など全くのウソ。要するに9条改憲とは、これらの超軍拡にフリーハンドを与え、対中国戦争に全面的に加担するものです。米国が「6年以内」にも「台湾有事」を仕掛け、これに自衛隊が参戦し、日米両軍が一体となって中国を攻撃するために、憲法改悪が不可欠なのです。戦争を阻止し、アジアにおける平和と平和共存のために、9条改憲を阻止することが重要です。

いったん憲法に自衛隊を書いてしまえば、あとは法律改定で戦争する軍隊へ
 自民党は「自衛隊を憲法に書くだけ」「今の自衛隊を合憲にするだけ」などと言って9条改憲に突き進んでいます。しかし自民党が目指しているのは単なる自衛隊の合憲化ではありません。9条に「自衛隊を保持する」と書き込み、あとは「法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」とするのです。すなわち自衛隊を条文にひと言入れれば、あとは法律改定で何でもできるというのです。かつて自民党が戦争をする国は憲法上持つべきだとした「国防軍の設置」「開戦規定」「戦争目的」「軍事法廷の設置」「国家緊急権の発動」「人権制限」「徴兵制」など、「自民党憲法草案2012」をすべて法律によって実現しようというのです。すでに集団的自衛権を認める閣議決定が行われ(2014年)、戦争法が成立(2015年)しています。いったん憲法に書かれ合憲化されてしまえば、自衛隊は正真正銘の侵略的軍隊へ確実に暴走します。戦争をするための法律が次々と作られていくに違いありません。
 自然災害やコロナを口実にした「緊急事態条項」も同じです。「大地震その他の異常かつ大規模な災害」において「内閣は、法律で定めるところにより、政令を制定できる」とします。いったん緊急措置を合憲化してしまえば、あとは法律改定によって、「その他」の中に戦争やテロを含め、首相や内閣の独断で勝手に政令を作る権限を手に入れ、人権制限や国家緊急権の発動のフリーハンドを得るという訳です。
 現在の憲法審査会では、自民、公明、維新、国民民主の委員が、緊急時の議員の任期延長と国会開催問題にすり替えて論議を急がせようとしています。しかし、安倍政権以降、憲法53条に基づいて野党が臨時国会開催を要求しても、それに応じてこなかったのは与党です。新型コロナ・パンデミック以降、使途を国会審議で決めない「予備費」を膨大に盛り込んだ予算案を国会に提出してきたのは与党であり、その予算案に賛成したのが国民民主です。さんざん国会審議をないがしろにしておきながら、衆院議員の任期延長だけを問題にするのはご都合主義と言うほかありません。

国会で作られる「改憲翼賛体制」
 国会では、衆参両院の憲法審査会が毎週開かれ、改憲審議を加速させています。審査会の日程などを調整する自民・公明の幹事懇談会には、もともと入っていた維新に加え、昨秋以降は国民民主も参加し、4党で運営を主導しています。「改憲翼賛体制」とも呼ぶべきものが作られているのです。
 従来と変わったのは審議の回数だけではありません。内容においても、昨年以前は国民投票法など手続き論が中心でしたが、今年は雰囲気が一変し、前述のように9条や緊急事態条項の内容について、議論が推し進められています。その上、3月3日の衆院憲法審では、「現憲法のもとでオンライン国会開催は可能とする意見が大勢」とする報告書が、多数決でまとめられました。「全会一致」を原則とする憲法審査会で、憲法解釈が多数決で決定されたことは異常なこと。改憲勢力がこれを前例とし、今後の議論も数の力で推し進める危険が高まっています。

公正な投票を保障しない「国民投票法」改定の強行を許すな
 国民投票法の改定案が4月28日、衆議院憲法審で審議入りしました。内容は、投票の立会人になるための居住地の要件の緩和などで、自民や維新は、この改定をもって準備が整ったとして、改憲発議に向かう号砲にしようとしています。しかし、この改定には、CM規制その他の公平かつ公正な投票を確保するための措置が全く含まれていません。そもそも国民投票法改定議論は、資金力もメディアへの影響力も圧倒的に強い与党・改憲政党の宣伝をどう規制するかが最大の眼目の一つでした。加えて最短60日という短すぎる運動期間、最低投票率の規定がないこと、改憲反対運動を萎縮させる「公務員・教育者の地位利用による国民投票運動」の禁止など、多くの問題が2007年の成立時から指摘され、付帯決議も挙げられています。それらを改善しないまま改憲発議と国民投票に突き進もうとしているのです。
 自民・公明・維新・国民民主の4党は、参院選後の臨時国会で国民投票法改定を4党の賛成で可決し、改憲推進派の枠組みを固め、改憲発議に弾みを付けることを狙っています。国民投票法の改定強行を阻止しよう。

7月の参院選に向け、改憲反対の声を
 日本国憲法を守る闘いにとって、7月の参院選挙は正念場です。しかし、情勢は厳しい。参院選の公約で、与野党が右翼的主張を競い合う事態となっています。自民は改憲を参院選公約の重点事項に位置付けています。自民・維新は9条改憲を掲げ、国民民主を含めた3党が緊急事態条項を掲げています。国民民主は「自衛のための打撃力」の整備を明記しました。野党においても、立憲民主は「論憲」を掲げて改憲反対をあいまいにし、「総額ありきではなく、メリハリある防衛予算で防衛力の質的向上を図る」とし、軍拡を容認しています。共産党も、志位委員長が「急迫不正の主権侵害に際しては自衛隊を活用する」と発言し、9条改憲・軍拡支持の宣伝に迎合しています。ウクライナ戦争で米国やNATOの脅威を不問にしロシアを一方的に非難し、アジアでは「中国の脅威」を認めて日米安保と自衛隊を容認しながら、9条改憲に反対するとは説得力を持ちません。自衛隊は紛れもなく侵略的軍隊であり、日米安保は侵略的軍事同盟でり、日米安保と自衛隊こそが東アジアの脅威です。一部でも容認したり活用したりすることはできません。9条遵守を堂々と主張するためには、このことを明確にしなければならないと思います。
 ウクライナ戦争を利用した改憲宣伝は、世論にも大きな影響を与えています。5月3日朝日新聞掲載の世論調査では、憲法を「変える必要がある」56%、「変える必要はない」37%。憲法9条に自衛隊を明記する自民党の改憲案に賛成55%、反対34%。同じく自民党改憲案の「緊急事態条項」についても、「憲法を改正して対応するべきだ」が59%で「その必要はない」34%を上回ります。ただし、憲法9条そのものについては、「変えないほうがよい」59%(昨年は61%)が「変えるほうがよい」33%(同30%)を上回り、昨年からの変化も小さくなっています。世論は複雑であり、改憲案の問題点を具体的に説明することで、世論を変えることはまだまだ可能です。また、政治に最も優先的に取り組んでほしい課題について「憲法」との回答はわずか2%でした。新型コロナウイルスに物価高騰が加わり、生活をどのように守るかが大きな課題となる中、それを脇に置いて改憲を急ごうとする岸田政権の姿勢は、必ずや反発を招くに違いありません。
 参院選に向け、改憲反対の声を巻き起こし、3分の2獲得を阻止しよう。憲法改悪が日米一体となった対中国戦争準備、5・5兆円の大軍拡と密接不可分であることを暴き出そう。コロナ禍と物価高騰に直撃される生活を放置し、軍事費を倍増させ、憲法改悪に突き進むる岸田政権への批判を集中しよう。

2022年6月20日
リブ・イン・ピース☆9+25