岸田政権は「安保3文書」を撤回せよ(上)
「中国仮想敵論」「中国脅威論」反対。中国との平和共存外交を
違憲の対中先制攻撃戦争準備反対。財政の軍事化=軍事費増税反対

  12月16日、岸田首相は「安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)」を閣議決定しました。本土では危機感がまだまだ鈍いのですが、最前線に立たされる沖縄と南西諸島の人々が中国との戦争に進む道だと危機感を強めています。私たち本土で生きて活動する者として、広くこの「安保3文書」の危険を人々に訴えていきたいと思います。「安保3文書」は、以下の3つの特徴を持っています。


[1]岸田「安保3文書」の3つの危険な特徴

(1) 第1に、中国を事実上の「仮想敵」と扱ったこと、つまり「国家の敵」と規定したことです。「安保3文書」の最大の問題点は、戦後初めて、日本の軍事・外交に関する最高文書に、中国を「仮想敵」「戦略敵」と明記したことです。「戦略敵」「国家の敵」とするということは、中国と戦争すること、その準備に全資源を投入することを意味します。それほど危険なことなのです。
 「仮想敵」「戦略敵」とは書いていない、というのは詭弁です。「安保3文書」の一つである「国家防衛戦略」には「5年度の2027年までに、我が国への侵攻が生起する場合には、わが国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除できる防衛力を強化する」「10年後までには・・・より早期かつ遠方で侵略を阻止・排除できるように」すると書かれています。中国を戦争相手と想定し、戦争準備の全面強化を図っていることは間違いありません。
 何よりもまず「中国が攻めてくる、戦争の準備が必要だ」ということが正しいのかどうかです。この問題を徹底して批判しなければなりません。ここが間違っていれば、政策も結論も全て変わってくるのですから。私たちは、この出発点そのものが間違っていることを主張します。決定した与党は当然ですが、メディアも野党も、当たり前のように反中・嫌中で一致しており、「安保3文書」の批判、追及の際に、この根本問題=中国と戦争する準備に入ることを全く取り扱っていません。
 今回の「安保3文書」問題を、軍事費の財源問題だけに矮小化することに反対です。中国に対する誤った態度を改めなければ、根底からの批判はできません。私たちは、政府・メディアの反中・嫌中宣伝が間違っていること、「中国脅威論」、米国が仕掛ける「新冷戦」策動を徹底して批判します。

(2) 第2は、軍事外交戦略の大転換です。中国を「仮想敵」とすることは、対中国戦争を認めること、そのための戦争準備を認めることを意味します。中国は人口14億人、経済力は今や日本のGDPの約3倍です。このような大国と戦争するために、これまで考えられなかったような超危険な戦後政策の大転換を、岸田政権は、何の国民的議論もせずに次々と決めました。
 とりわけ危険なのは、対中先制攻撃兵器の保有、つまり「敵基地攻撃能力」の解禁であり、中国を攻撃するための大量の長距離先制攻撃ミサイルの配備です。かつて安倍政権時代に強行された戦争法で破られましたが、ぎりぎりで維持されている「専守防衛」の完全な放棄であり、交戦権否定、武力不行使、武力による威嚇禁止を定めた日本国憲法第9条のあからさまな違反です。大軍拡反対を憲法改悪反対の闘いと結びつけて闘います。

(3) 第3に、軍事外交政策だけではなく、「安保」(軍事)の名の下に、財政、経済、科学技術、武器輸出、宇宙、電波から対外援助まで、あらゆる日本の政策を「安保」(軍事)最優先で推し進めることです。個々部分的には問題になったことはありましたが、軍事最優先が国家政策とされたことは、これまでなかったことです。正真正銘の「戦争国家」化への大転換です。その最大の焦点は、軍事費の2倍化であり、そのための「軍事費大増税」です。中国を「仮想敵」にし、対中戦争準備を推進するためには、財政も軍事化する、そのためには「国民が負担する」のは当然、医療・教育・社会保障切り捨ても当然視するということなのです。
 私たちは、中国を「仮想敵」とすることにも、対中先制攻撃戦争を準備することにも、国の政策全体を軍事最優先にし戦争国家化を進めることにも、財政を軍事化することにも、軍事費増税にも反対です。私たちは岸田政権が直ちに「安保3文書」を撤回し、対中国の戦争準備の大軍拡を中止し、平和と平和共存のための外交を行うよう要求します。


[2]「安保3文書」は米国の対中戦争計画の一部――「自動参戦」の危険

(1) 「安保3文書」は日本の単独の軍事外交文書ではありません。バイデン政権が今年10月に出した「国家安全保障戦略」(NSS2022)の一部なのです。その最大の特徴がまさに、中国を「戦略敵」に据えたことです。言葉の上では「唯一の競争相手」としていますが、軍事用語でそれは戦争で打ち負かす相手、国の総力をかけて屈服させる相手、国家の敵なのです。NSS2022のもう一つの特徴は、「決定的な10年」と称して、今後10年にわたって軍事、外交、経済、技術など全面的に中国を締め上げ、封じ込め、中国に勝利することを計画しています。米国が盛んに煽っている「台湾有事」は、この最大のテコなのです。
 バイデンの中国敵視政策は、トランプのそれより格段に危険なものです。なぜなら、「アメリカファースト」=単独主義のトランプと違い、日本やヨーロッパを含む米国の同盟国全体で中国を締め上げ、封じ込めようとしているからです。地政学上、中国を包囲する位置にある日本は、米国の対中戦争、対中封じ込めの最前線、対中戦争の先兵に位置づけられているのです。

(2) 「安保3文書」は、中国を「我が国と国際社会の深刻な懸念事項」であり「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と戦後はじめて規定しました。米国の「国家安全保障戦略」(NSS2022)の丸写しです。これまでも日本政府は、日米安保=日米軍事同盟最優先の立場から、自らを米国の軍事外交政策に連動させ、米軍と自衛隊が共同演習・共同訓練で一体化してきましたが、今回のように、公式の戦略文書での実質的な「丸写し」は初めてのことです。元々「国家安全保障戦略」は安倍政権が米国の真似をして国家の軍事・外交政策の最高指針として導入しようとしたものです。しかし、日本の軍事外交の公式文書を、米軍事戦略に直接一致させ、その一部とすることは初めてです。自発的・主体的に米国の対中戦争計画に自らを組み込む、超危険な道を選ぶという宣言なのです。
 歴史上数限りない侵略戦争を行ってきたのは米国です。このような侵略国家アメリカの戦略に自ら進んで、自国の軍事外交政策を組み込む危険はいくら強調しても強調しすぎることはありません。国家政策として、米軍の侵略戦争に「自動参戦」メカニズムを組み込むようなものだからです。

(3) 日本政府が、なぜ、このような超危険な道を選択してまで、米国の戦争計画に一体化しようとしているのか。その背景には、中国の平和的な発展、台頭、米日両国の共通の恐怖があります。
 「安保3文書」「国家安全保障戦略」の中で自分たちは自由、民主主義、基本的人権、法の支配など「普遍的価値」を擁護し、自分たちが形成してきた既存の国際秩序を守るのだと自画自賛し、他方、中国を「力づくで一方的な現状変更」を試み、西側が築いた秩序を修正しようとする勢力と位置づけています。しかし、これは、中国の発展と台頭が、米日両国や西側諸国自らの新植民地主義的な途上国支配が突き崩されるという恐怖でしかありません。
 米国を盟主とした西欧諸国、日本などが結束した力で中国の台頭・発展を力づくで封じ込め、抑え込もうと試みているのです。中国が発展することは社会主義中国への信頼や共感を高めかねません(とりわけ新興国・途上国で)。これらの新興国・途上国が中国と共存・共栄の関係を強めれば、これら新興国・途上国に対する米国の脅しや命令が効かなくなってしまいます。新興国・途上国から膨大な富を吸い上げて発展してきた米国や西側諸国にとって、これまで経験したことのない危機です。米国や西側諸国が、口を開けば叫ぶ「国際秩序のルールの一方的変更」という決まり文句は、このことを指しているのです。世界中の新興国・途上国に命令し、言うことを聞かせてきた自分たちの特権的な地位を脅かすのではないかと危機感を持っているのです。だから米国を盟主とするブロックで中国を包囲し、弱体化させようとしているのです。しかし、このブロックに参加する国は今やG7を中心とする世界の一部にすぎません。BRICSをはじめ新興国・途上国の大半は米欧日の西側先進国の支配ではなく、公平で開かれた国際関係、多極化を求めています。

2022年12月29日
リブ・イン・ピース☆9+25

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