菅政権は、朝鮮学校無償化を見送るな
北朝鮮の砲撃を口実に政府が民族差別・排外主義を煽ってはならない


 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による延坪島砲撃事件を受けて、菅政権は朝鮮高級学校を無償化する手続きの停止を表明した。首相は、自ら停止を指示したことを明言している。これは24日の記者会見で行われたもので、「制裁的な意味合いとして、見直す考えはあるか」と記者から問われた菅首相が、“私の方から指示を出した”と語っているのである。北朝鮮の砲撃に対して、日本の朝鮮学校に通う子どもたちから学ぶ権利を剥奪する制裁を加えることで対抗する――このような理不尽なことがあっていいのだろうか。
朝鮮学校無償化、当面対象外に 官房長官「手続き停止」(朝日新聞)
朝鮮学校無償化「私がプロセス停止指示」24日の菅首相(朝日新聞)
北朝鮮砲撃:朝鮮学校無償化停止指示 無償化申請、文科省「当面、審査せず」(毎日新聞)

 文部科学省はこれまで京都、愛知、広島の3府県の朝鮮学校から適用申請があり受理したにもかかわらず、審査を行わず放置する方針だ。朝鮮学校の無償化は既に事務手続きの段階に入っていた。これ自身が高校無償化が始まってから8ヶ月遅れであり大問題だ。さらにそれを無期限に停止しようというのである。全く許し難い。各地で朝鮮学校関係者の緊急声明・緊急記者会見が行われている。その中では砲撃事件後に登校中の生徒が暴言を受けるなどの被害があったことも明らかにされている。
朝鮮学校、無償化停止に「理不尽極まりない」(読売新聞)
北朝鮮砲撃:朝鮮学校無償化停止指示 無償化、早期適用を 広島朝鮮学園声明 /広島(毎日新聞)
砲撃と無償化「結びつけるな」 保護者らが声明(京都新聞)
授業料無償化求め緊急声明(STV 動画)
北朝鮮砲撃:朝鮮学校無償化停止指示 「無償化の即時適用を」 関係者が声明 /京都(毎日新聞)

 北朝鮮による砲撃が、どうして朝鮮学校無償化の手続きを停止する理由になるのか。政府はこれまで、朝鮮学校無償化について「政治、外交上の問題は配慮しない」との見解を示してきたではないか。高木文科相は、「教育的見地から政治判断をしないとこれまできたし、その考え方は変わっていない。その上で、やっぱり重大な判断が迫られる可能性があると思う」と述べた。政治判断をしないという考えは変わっていないが、重大な判断が迫られる?? 支離滅裂だ。砲撃を理由にすることがどうして政治判断ではないのか。
 しかも、砲撃は、北朝鮮に対する米韓日一体となった挑発的な軍事演習が引き起こしたものである。砲撃を理由に無償化を見送るということは、日本政府自らの責任を棚に上げ、一方的に北朝鮮を「非道」と決めつけ、朝鮮学校の生徒たちが、あの「非道な」北朝鮮の仲間であり、監視と制裁の対象であると、宣告するようなものである。それはまた朝鮮学校の生徒たちへの暴言・暴力行為にお墨付きを与えると言っても過言ではない。
対北朝鮮戦争挑発──危険な米韓共同軍事演習(11/28〜12/1)、日米共同軍事演習(12/3〜10)をやめよ!(リブ・イン・ピース☆9+25)

 菅首相は何をしたいのか。「指導力」があるところを見せて、支持率回復を狙っているのか。国内に蔓延する反中国・反北朝鮮・外国人差別の民族排外主義に迎合し煽ることによって、政権浮揚させようとするなど言語道断である。
 日本政府には、民族教育を保障する義務がある。その義務を果たすため、朝鮮学校無償化手続きを断固進めるべきだ。これを行わないのは民族差別そのものである。対外的に北朝鮮に対して軍事恫喝を加え国内的には朝鮮学校の生徒たちを差別する――このような敵視政策・民族排外主義の扇動が日本政府の手によって行われることを私たちは絶対に許すことができない。
 菅政権は、朝鮮学校の無償化手続き停止を撤回し、すみやかに無償化すべきである。

2010年11月28日
リブ・イン・ピース☆9+25