菅首相は今回の軍事衝突を戦争に拡大しないために全力を尽くすべき 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の砲撃を招いたのは、米韓の挑発的な軍事演習です。にもかかわらず米韓軍は11月28日から12月1日まで、大規模緊急軍事演習を強行しようとしています。これは、それでなくとも一触即発の状態にある朝鮮半島に発火剤を投げ込む行為であり、北朝鮮に対するきわめて危険な戦争挑発です。絶対に中止すべきです。 菅首相はこの危険な軍事演習に対し、「不測の事態」にそなえて閣僚の在京を指示しました。菅首相はどのような事態が生じる想定をしているのでしょうか。今起ころうとしている「不測の事態」とはまさに朝鮮半島での戦争であり、「朝鮮半島有事」です。菅首相は戦争の危機を回避するために、米軍に軍事演習の中止を申し入れるべきです。 ※<北朝鮮砲撃>米韓演習にあわせ全閣僚在京せよ 菅首相指示(毎日新聞) それどころか12月3日〜10日に予定されている日米共同軍事演習では、沖縄東方海域の演習に米韓軍事演習に参加した米空母ジョージ・ワシントンも参加するといわれています。黄海での米韓軍事演習に続く日米合同軍事演習は、北朝鮮を強く刺激せずにはおきません。菅首相は日米共同軍事演習を中止するよう自衛隊に指示すべきです。今回の軍事衝突を戦争に拡大しないためにあらゆる手を打つべきなのです。 ※「北の行動は言語道断」とオバマ大統領 米韓の軍事演習実施を確認(産経新聞) ※米国防総省、原子力空母G・ワシントン投入を中国に通告 米韓合同演習(産経新聞) 北朝鮮による砲撃の直接の原因は、米韓による挑発的軍事演習 23日午後の北朝鮮による延坪島(ヨンピョンド)への砲撃によって、韓国軍兵士2人、民間人2人が死亡しました。延坪島は、韓国軍600人が駐在する文字通り最前線の軍事基地の島ですが、民間人1660人も居住しています。2時間にわたって170発もの砲弾が撃たれ、内70〜80発が着弾し、その多くは軍事基地内で爆発しましたが、流れ弾の一部が民間人居住地区に落下し、大きな被害をもたらしました。一方、韓国軍も対抗し80発の砲弾を撃ち返しました。これによる北側の被害については、今のところ明らかにされていません。北朝鮮が韓国領土を砲撃し民間人の被害がでるのは1953年の朝鮮戦争休戦以来はじめての事態です。このことは、朝鮮半島をめぐる情勢が、極めて緊張した異常に危険な状態になっていることを意味しています。 これ以上の攻撃・軍事衝突をおこしてはなりません。絶対に軍事衝突を戦争に転化させてはなりません。 ※北朝鮮が砲撃、韓国軍の2兵士死亡 島民含む19人負傷(朝日新聞) 北朝鮮の砲撃は、韓国と米国が北朝鮮の警告を無視して強行した挑発的な軍事演習と密接不可分な関係にあります。韓国軍は22日から黄海で『護国』と名付けられた陸海空共同の軍事演習を実施し、砲撃を行っていました。北朝鮮と目の鼻の先にある延坪島周辺海域での軍事演習が北朝鮮への重大な脅威となることは明白です。マスコミは、この演習が毎年行われてきたことを理由として、今回の北朝鮮の対応を「常軌を逸したもの」と批判していますが、天安艦事件をはじめとする一連の事件が続発し、米韓が北の和平攻勢を無視し続ける一方で、金融をはじめとする制裁措置を強化している今日の状況の下で、7万人もの将兵が参加した今回の『護国』作戦は、これまでの演習と違った意味合いを持っていたのです。 ※全国で22日から護国訓練実施、米軍も参加(ワウコリアニュース) ※<北、延坪島 挑発>北朝鮮「南側の挑発に対応」(中央日報)
それだけではない、絶え間なく続く米韓軍事演習 北朝鮮を追い詰めたのは、「護国」米韓軍事演習だけではありません。「朝鮮半島有事」を想定した米韓軍事演習は今年10回が予定されています。7月に行われた米韓合同軍事演習「不屈の意志」は、米韓兵員8000人、初参加の沖縄・嘉手納から米最新鋭ステルス戦闘機4機など戦闘機200機、米原子力空母ジョージ・ワシントンやイージス艦20隻が動員された「過去最大級」規模の軍事演習でした。8月には韓国全土を巻き込む米韓大規模軍事演習「ウルチ・フリーダムガーディアン」が行われました。同演習は「朝鮮半島有事」を想定した指揮系統などの指揮所演習で、韓国軍が5万6000人、アメリカ軍は例年の3倍にあたる3万人が参加しました。9月には黄海で、米イージス駆逐艦ジョン・S・マケインのほか、韓国軍のP3C哨戒機や潜水艦などが参加し、対潜水艦戦闘訓練などを行いました。 ※米韓合同軍事演習、黄海で始まる 北朝鮮「愚弄だ」(朝日新聞) 北朝鮮はこのような脅威にさらされ続けているのです。北朝鮮はそれぞれについて、「重大な結果をまねく」などの強い警告を発してきました。従って今回の事態は、北朝鮮の和平諸提案を無視する一方で、封鎖による締め付けを強化し、軍事的威嚇を続けてきた米韓の北朝鮮孤立化政策によって準備され、韓国による今回の挑発的軍事演習『護国』によって最終的に惹起されたと言えるでしょう。 北朝鮮も軍事的対応を自制すべき 延坪島砲撃が、米韓の北朝鮮孤立化政策によって準備され、軍事演習『護国』によって惹起されたものであっても、私たちは今回の北朝鮮の行為を容認することはできません。延坪島砲撃が同島の韓国軍基地を狙ったものであったことは、砲弾の大半が韓国軍基地内に落下したことからも明らかです。この点は、わが国のマスコミも全く報道していませんので、特に強調しておきたいと思います。しかし流れ弾の一部が、民間人居住地区に落下し、大きな被害がでました。このことは、非難されなければなりません。そもそも砲撃というものに流れ弾は付きものであり、民間人が混住する地域への砲撃は、回避されなければなりません。今日も、イラクやアフガンで無差別爆撃を繰り返し、多数の民間人を殺傷し続けている米国には、今回の事件を非難する資格は毛頭ありませんが、北朝鮮の行為も容認できるものでは決してありません。 さらに今回の事件は、それでなくても戦争へと発展しかねない朝鮮半島情勢を一層悪化させ、対立の悪循環を加速する結果となりました。軍事的圧迫によって北朝鮮を屈服させようという思考が何ら問題解決に役立たないのと同様に、強力な軍事的対応によって米の譲歩を引き出すという思考もまた、問題解決に役立たないと私たちは確信しています。特に私たちが憂慮するのは、北朝鮮が、「今後は、北朝鮮が認める軍事境界線だけが存在する」と声明したことです。これは、南が主張するNNLと北が主張する軍事境界線を暗黙の了解のもとで相互に留意してきた現状を破棄することになりかねません。その場合、領土をめぐる南北の軍事的衝突が現実のものとなり、文字通り第2の朝鮮戦争へと進展する危険性が著しく増大するでしょう。私たちは、この点で北朝鮮が自制して行動することを強く望みます。 ※朝鮮人民軍最高司令部、南朝鮮の北側領海への砲射撃に軍事的処置(「朝鮮中央通信」) 危険な米韓軍事演習、日米軍事演習をやめよ 軍事演習に北朝鮮が反発して砲撃がなされたにもかかわらず、さらに追い打ちをかけるように軍事演習を強行することは戦争の危機を高めるものでしかありません。そもそも軍事演習というのは単なる練習ではなく、戦争の予行演習であり、また直接戦争に移行する危険を持った戦争挑発そのものです。11月28日から米韓が強行しようとしている軍事演習では、これまで北朝鮮と中国が断固として拒否してきた米原子力空母ジョージ・ワシントンの黄海進入が強行される危険があります。今回の訓練は空軍と海軍の作戦行動演習であり、米軍からはジョージワシントンだけでなく、巡洋艦「カウペンス」、駆逐艦「ステザム」「ラッセン」など4隻が投入される。韓国軍からは駆逐艦2隻などが参加します。 さらに日本海域全体で12月3日〜10日に行われる日米合同演習は、沖縄東方周辺海域での島しょ防衛などを想定し、自衛隊から隊員約3万4000人、艦艇約40隻、航空機約250機、米軍からは兵員約1万人、艦艇約20隻、航空機約150機が参加する大規模なものです。自衛隊の各基地や周辺海空域では、北朝鮮の弾道ミサイルを想定した訓練も行うことになっています。まさに北朝鮮と中国を挑発するものです。米政府は、この軍事演習が中国に対して圧力をかける意味を持っていることを明らかにし、中国は演習実施に強く反対しています。 ※中国、米韓合同演習に「反対」表明 砲撃事件受け(CNN) ※日米共同演習、「計画通り実施」=黄海派遣の空母も参加予定(時事通信) ※自衛隊:12月に日米共同統合演習実施 中国けん制も(毎日新聞) 北朝鮮に軍事的「報復」を加える以外に事態解決の道はないといった主張が、マスコミで公然と行われており、そのような文脈の中で、米原子力空母まで参加する米韓軍事演習が行われようとしています。北朝鮮に対する軍事力の行使を無責任に口にする人々は、そのことがどのような結果をもたらすか考えたことがあるのでしょうか。「限定的な攻撃によって、北の行動を抑止する」というこの主張の欺瞞性は、「限定的な攻撃によって北が屈服せず、より強力な軍事的対応を行った場合どうなるのか」という質問をすればたちどころに明らかになるでしょう。少なくともソウルは人的・物的に尽大な被害を受けるでしょう。それに対して、「限定的攻撃」を主張する人々は、どのような責任を取るのでしょうか。朝鮮半島の危機的状況を緩和し、安全と民族和解、非核化と恒久平和へと向かうためには、北朝鮮孤立化政策が放棄されなければなりません。また最近強まっている中国封じ込め政策も転換されなければなりません。対話と交渉を通して、休戦状態ではない終戦状態を朝鮮半島に作り出すことが、唯一の問題解決法です。その方向へ向かうためには、北朝鮮や中国を敵視した軍事演習を中止することこそが最も有効で確実なメッセージとなるでしょう。 2010年11月27日 |