[1]はじめに〜バイデン大統領、自ら大虐殺戦争を永続化すると表明 (1)米・イスラエルが11月18日、同時に大虐殺戦争の永続化を宣言 11月18日、米国とイスラエルが大虐殺戦争をさらにエスカレートさせる声明を、同時に出しました。 まず、バイデン大統領がワシントンポストに寄稿し、「パレスチナ自治区ガザからイスラム組織ハマスを徹底的に排除すべきだ」、「戦争を単に止めるだけでなく、永遠に終わらせ、暴力の連鎖を絶つことが目標だ」と表明したのです。戦争を永遠に終わらせるために現在の大虐殺戦争を永続的に続ける!?恐ろしいことです。 実は、この寄稿は、選挙キャンペーンの元スタッフ数百人が公開書簡を発表し、停戦を支持するか、大量虐殺に加担するかをはっきりさせよと回答を求めたことに、バイデンが16日、「停戦の可能性はない」("no possibility" of a cease-fire)と記者団に語ったことを踏まえての表明でした。大統領自らが戦争と虐殺の当事者であることを明らかにしたのです。 ※米大統領、ハマス徹底排除を主張 永続的な中東和平目指すと寄稿(沖縄タイムズ) ※「『ガザ停戦の可能性はない』とバイデンが発言、500人以上の元スタッフが停戦を要求(commondreams) 同時に、イスラエルのガラント国防相は同日、「(ガザ)南部にいるテロリストも、すぐに思い知ることになるだろう」と述べ、ガザ北部から南部へ地上作戦を強化する方針を打ち出したのです。北部を片付けたから、残る南部の虐殺と破壊を開始するというのです。水・食料・電力・燃料を断つ長期にわたる兵糧攻めで、すでに飢餓が蔓延し始め、感染症が起こっています。飢餓の下で、南部への空爆や地上戦が本格化すれば、犠牲者は一気に増えます。 すでに国連でも、世界中の街頭でも、子どもや女性への大虐殺に非難の嵐が吹き荒れ、即時停戦の大合唱が起こる中で、あえて米・イスラエルが同時に、大虐殺の永続化を公言したのです。両国・両軍の共謀・共犯関係を自らが暴露したのです。即時停戦の行動をさらに強めなければなりません。 ※ガザ南部に地上作戦強化へ=ハマスと「全面戦争」―イスラエル ※イスラエル国防相、ガザ地上侵攻「第2段階に」 南部でも進める考え (2)米国の「人権」「人道」「仲介役」などの仮面は剥がされた 10月7日のパレスチナ抵抗勢力の攻撃以来、米政府や西側政府・メディアは、米国が「人権」や「人道」で動き、イスラエルに圧力を加えているかのような幻想を煽ってきました。「病院攻撃を批判」、「人道的休戦を要請」、「地上侵攻を遅らせるよう圧力を加えている」など。 また、メディアは、米政府にイスラエルとパレスチナとの間の「仲介役」を果たすよう主張したり、「過剰な実力行使にクギを刺している」とか、「イスラエルを抑え込んでいる」とか言ってきました。 しかし、米・イスラエルの今回の戦争永続化の同時表明は、これが全くのウソであることを自ら暴露したのです。メディアも、米政府の「人道」や「休戦」が口先だけであることを知りながら、大虐殺を懸念する世論を欺き、デマを垂れ流してきたのです。 ※米、イスラエルにガザ地上侵攻控えるよう助言=関係筋(ロイター) ※ガザ侵攻遅らせるよう米がイスラエルに圧力、人質解放優先-関係者(ブルームバーグ) ※米、綱渡りの仲介 ガザ・イスラエル双方を支援(日経新聞2023/10/19) ※バイデン米大統領、イスラエル訪問で「賭け」 過剰な実力行使にクギ(毎日新聞2023/10/17) 以下、日本のメディアでは全く取り上げない米国関与の根拠を挙げます。部分的関与というようなものではありません。全面関与、あるいは役割分担です。米政府や西側メディアが覆い隠してきた、大虐殺=民族浄化戦争への米国の全面関与の全体像を暴露したいと思います。 [2]大虐殺=民族浄化戦争は米国の共謀と役割分担で可能になっている 大虐殺をとめる最も効果的で即効的な手段は、2つあります。一つは、米国がイスラエルへの軍事・経済援助を中止すること、もう一つは、米国が拒否権を使わず、制裁を伴う国連安保理決議の採択に協力することです。バイデン政権は、この2つとも頑なに拒否してきました。今回の米・イスラエル戦争永続化宣言でもはや明らかなのですが、バイデン政権の決断一つで止められるのに、端から止める気がないのです。死傷者・行方不明者合わせて4万人を超える犠牲者が出ても、病院攻撃をやっても、米政府は口先だけの「懸念」を言うだけで、前記の安保理決議や援助停止は絶対やろうとしません。 (1)軍事・経済援助で共謀・役割分担〜援助を撤回させよう まず、大虐殺戦争への援助の犯罪性を取り上げます。現在進行中の大虐殺戦争は、イスラエルが戦争をやり、米国はこれを軍事的・経済的にバックアップするやり方です。 元々、イスラエルという国は、米国や西側諸国の軍事・経済援助が決定的な意味を持つ、対米従属国です。それなしには、パレスチナへの侵略を維持できない国なのです。だから、米国が決断すれば、即座に戦争継続能力にダメージを与えることができるのです。ところが、バイデン政権は、援助を減らすどころか、どんどん増やしているのです。 ブルームバーグの報道によれば、ペンタゴンの内部文書は、「イスラエルへの軍事援助を密かに増やし、アパッチ・ヘリに使われるレーザー誘導ミサイル、155ミリ砲弾、暗視装置、バンカーバスター爆弾、新型軍用車両など、イスラエルからの軍事物資要求に応えており、イスラエルにミサイルを供給するために、ドイツと韓国の在庫をかき集めた」と言います。 しかも、米軍の武器・弾薬支援は「ほぼ毎日のように届き続けている」。イスラエルのメディアも、テルアビブが約2,500トンの軍事装備を積んだ貨物船を受け取り、120機以上の飛行機と数隻の船が7,000トン以上の武器をイスラエルに運んだと報じました。米国は、イスラエル支援のために、12隻の軍艦と数百人の軍隊を配備したと言います。すなわち、途切れることのない武器・弾薬が大虐殺戦争を可能にしているのです。共謀・共犯以外の何物でもありません。バイデン政権が言う「人道的一時停止」や「休戦」は猿芝居だというのは、このことなのです。 ニューヨークを拠点とする人権団体、憲法上の権利センター(CCR)は11月13日、ジョー・バイデン米大統領と閣僚2人を、ガザ地区で起きているジェノサイドを「幇助・教唆した」として提訴したのも、そういう意味なのです。 ※米国防総省はイスラエルへの軍事援助をひそかに増額し、ドイツや韓国の備蓄品まであさっていた(2023/11/15) ※米国、ドイツ・韓国の在庫まで調べてイスラエル武器支援拡大(11/16中央日報日本語版) ※米国はイスラエルへの武器供与を密かに増やす(2023/11/15、cradle) 米国は、すでに毎年40億ドルもの軍事援助をしています。今回さらに追加軍事援助143億ドルを計画しています。これまでの3年分以上を一気に注ぎ込むというのです。米国務省高官がイスラエルへの武器供与に抗議して辞任したほどです。 ※バイデンがイスラエルへの軍事援助増額を要求。国務省内部で反発高まる中(ジェイク・ジョンソン 2023年10月20日) ※米国はイスラエルにガザでの戦争犯罪のための武器をこれ以上与えないよう要請 National Priorities Projectは「米国は外交チャンネルを使って即時停戦に取り組むべきだ」と述べ、「不当で違法な対応をさらに煽るような武器や軍事援助をこれ以上しないように」と呼びかけた。(ジェシカ・コーベット 2023年10月20日) 軍事費を支えているのは国際金融資本です。イスラエルは78億ドルの借金を国際金融資本から調達しました。10月の財政赤字は60億ドルにのぼり、1年前の7倍に膨れ上がりました。金融資本がこの赤字を補填したのです。 ※イスラエルは戦争が始まって以来、78億ドルの債務を調達した(2023年11月14日、PalestineChronicle) 逆に言えば、米国のイスラエルへの軍事援助・経済援助を中止・撤回させる国際的な包囲網を作り、実際に減額させるだけで意味を持ちます。軍事援助撤回は現にやっている空爆や地上戦への武器・弾薬補給に直接打撃を与えます。経済援助撤回は、戦時動員で膨らむ膨大な軍事費に打撃を与えます。 (2)国連で共謀、停戦決議を潰す〜米国に圧力を加え、制裁決議を採択させよう もう一つの米国の犯罪性は、国連の場で一貫してイスラエルの大虐殺戦争を支持し、全世界からの停戦要求に拒否権を使い続けていることです。10月16日にはロシアの停戦決議案を、18日には、ブラジルが提出した即時停戦決議案を潰しました。11月15日、中国が議長を勤めマルタが起草した人道的一時停戦決議が、今回の戦争で初めて採択されました。しかし、米政府はさすがに拒否権は使えないものの、これにも棄権したのです。 イスラエルの大虐殺を阻止するには、国連安保理で拘束力・強制力のある決議を採択し、それに従わない場合、イスラエルに制裁を課すという決議を押付ける必要があります。 ※国連安保理 戦闘休止求める決議採択 ガザ地区での軍事衝突後初 ※米大統領、停戦交渉条件化応じず 「人質の解放後に話し合うべき」 ※イスラエルとハマス、今は停戦の時期ではない=ホワイトハウス 「われわれは、今が停戦の時だとは思っていない。イスラエルには自衛権があり、ハマス指導部を追い詰めるためにすべきことがまだ残っている」と述べた。 ※米国の拒否権はイスラエルとパレスチナの市民の血で汚れている(グローバル・タイムズ社説 2023年10月19日) (3)中東全域での米・イスラエル両軍の共謀と役割分担〜反米・反イスラエルの反戦闘争を @バイデンがイスラエルの戦時閣議に参加 10月18日にイスラエルを訪問した際、バイデン大統領が、何と戦時閣僚会議に参加しました。それ以前にもブリンケンが戦時閣僚会議に参加しています。異常なことです。 背景の一つには、現在のネタニヤフ政権が極度に不安定ということがあります。汚職だらけのこの政権が司法制度改悪の強行で、国民から猛反発を受けており、ネタニヤフとガラント国防相との対立も生じていました。バイデン政権は、ネタニヤフが「ハマス打倒後のガザ占領計画」抜きに地上戦に暴走したことに危機感を持っています。バイデン政権が直接関与しなければ、戦争遂行に支障をきたすと判断したのでしょう。もっと言えば、ネタニヤフ政権が崩壊する危険を察知しているのです。 ※あなたは一人ではない:バイデンがイスラエルの戦争閣僚会議でネタニヤフ首相に語る(2023/10/18) ※ブリンケンは決定を監督するためにイスラエルの戦時内閣会議に参加する(アルマヤディーン) いずれにしても、戦時閣議参加という事実は、両国の力関係と前述した米国の援助の重みからして、米国が主導しているということを意味します。空爆や地上戦などパレスチナへの直接的な戦闘行為はネタニヤフ政権が遂行するにしても、作戦計画段階から、作戦の進め方やテンポについては、米国との緊密な連携・協力の下で展開されているのです。さらには、レバノンやイラン、イラク、シリアなど中東全域でもイスラエル軍は米軍との一体的な運用の下で展開しているのです。メディアが言う「米国の仲介役」など、騙しか、笑い話でしかありません。 ※イスラエルによるガザ侵攻計画を練るワシントン 米政府高官がかつてない影響力を行使している(The Cradle 2023年10月20日) ※この元記事はバイデンの影響力がイスラエルの地上戦計画を異質なものに変える(ブルームバーグ) Aイスラエルのミサイル迎撃システムや地上侵攻でも共謀・協力 人質の捜索や自国民の退避準備を手伝うという名目で、米仏を中心とする西側諸国は、エリートとみられる特殊部隊をイスラエルに派遣しています。米国は迎撃ミサイルTHAADシステムを運用するために、仏独伊はユーロ対空ミサイルシステムのために専門家を派遣しています。米軍は外部からのイスラエル攻撃に防御を担当しており、イランを念頭に置いた弾道ミサイル、特に核兵器製造関連施設や重要軍事施設の防衛にTHAADを直ちに送り込んでいます。ヨーロッパのユーロミサイルはレバノン、イラン、シリアなど距離が近い国からのミサイルや航空機による攻撃に対する防護壁を作ってイスラエルを守っています。これ以外に米国は、何千人もの精鋭兵士を派遣したことを認めており、ヨーロッパ諸国は、自国民の避難と人質の捜索を見越して、テルアビブの大使館で「警備と軍事スタッフを強化した」ことを認めています。欧米が総力を挙げて大虐殺戦争を支えているのです。 ※もはや問題は、「欧米軍はパレスチナ人との戦闘に参加しているのか」ではなく、「彼らの作戦の規模と種類は何か」である B中東全域で米・イスラエル両軍は共謀・役割分担 海兵隊の3つ星将軍と他の数人の米軍司令官が、イスラエル軍の戦争司令部に陣取り、直接、地上侵攻の「助言」をしています。また、米軍は2隻の空母と打撃部隊を地中海に送り込み、レバノン・シリア・イラクなどに対する恫喝を行っています。そのことで、イスラエルはガザ地上侵攻に集中し、米国はレバノンやイラクやシリアでヒズボラなどへの対処をするという役割分担をしています。ガザ壊滅とハマス撲滅は米とイスラエル両軍の共通の目的なのです。 最近、イスラエル空軍司令官は11月17日、中東の敵対する国や組織に対する一連の攻撃計画を作成し、イエメンのフーシ派に対する航空作戦など、中東全域のあらゆる必要な地域や場所に対する数ヶ月に及ぶかもしれない作戦の準備が整っていると、表明した。米艦船はすでに紅海でイエメン・フーシ派からのミサイル、長距離ドローンの迎撃を行ってきました。イランに対して、フーシ派の船舶拿捕に対して中東配備の艦船、航空機の活動を強め威嚇を強めています。すでにイスラエルは米軍とともにレバノンやシリアに攻撃しています。バイデンは、イスラエルの大虐殺戦争を使って、中東全域の軍事覇権を再確立しようとしているのです。米軍はシリア内部に不法に占領している基地、イラクの基地に対する地元抵抗勢力からの攻撃の激化に対して、反撃と兵力増強を強め軍事力の展開を維持しようとしています。これら米・イスラエルの中東全域への戦争拡大は、中東全体を危険な地獄へ陥れます。一刻も早く、ガザ大虐殺戦争を停戦に追い込まねばなりません。 ※イスラエル空軍総司令官が脅しをかける:イエメンを含む中東全域に対して行動する用意がある ※アクシオス:ガザ侵攻について「イスラエル」に助言する海兵隊3つ星将軍 アントニー・ブリンケン国務長官は日曜日、CBSの取材に応じ、占領軍の軍事的目標について、政権が意思疎通を図っていることを明らかにした(アル・マヤディーン 2023年10月23日) ※イスラエルの状況は、1973年の戦争時よりも悪化しているアルマヤディーン、2023年10月23日) この記事によれば、米政府がイスラエル政府高官にこう言ったという。「アメリカは我々に『レバノンは我々に任せろ』と言った。『我々はここにいる。あなたはガザに集中し、そこですべきことをしなさい。もしヒズボラがレバノンからあなた方と交戦を始めたら、われわれが彼らの面倒を見る』と」。 (4)民族浄化・民族絶滅政策でも共謀・役割分担〜強制移住計画を暴露し、阻止しよう @ガザ住民の強制移住・追放を許すな 前述したように、イスラエルはガザ南部への本格侵攻を始め、ガザ住民全体をガザから追い出そうと画策しています。殺しまくり、住めないようにすれば、逃げるだろうるというのです。米政府や西側政府・メディアも承知しています。そのために、彼らは、「ガザ住民を飢餓から救え」「人道的大惨事から救え」を大合唱し、「人道」を口実に、エジプト政府に圧力を加え、ラファ検問所を開かせ、まずは野営テントで住ませ、最終的にはシナイ半島に220万人全員を強制移住させようとしているのです。 米国は、少なくとも2007年以来、シナイ半島にパレスチナ人居住区を創設することに賛成し、エジプトやヨルダンに圧力を加えてきました。今回の戦争を使って、米国も支持してきたこの民族浄化政策を一気に実現させようとしているのです。どこまで残虐かつ狡猾なのでしょうか。およそ人間の考えることではありません。 この恐ろしい計画そのものと米国の関与については、本シリーズ(その6)を参照してください。 ※パレスチナ連帯シリーズ(その6)イスラエルはパレスチナ民族浄化政策をやめよ 「人道」を口実にしたシナイ半島への強制追放を許すな A米大統領選挙とバイデンの自己矛盾。米中東政策の破綻 来年11月の米大統領選挙まで1年を切り、選挙戦が始まりました。しかし、バイデン再選の勢いはなく、世論調査でも低迷しています。バイデン自身、力を持つユダヤロビーや金融資本やハイテク業界からの支持を得ようと、即座にイスラエル支持を打ち出しました。パレスチナ連帯感情が強まるアラブ・イスラム系や若者から猛反発を受け、再選に赤信号が出て、ジレンマに陥っています。米国内の政治状況が大きく変わっていることが読めなかったのでしょう。 米国内だけではありません。米国の中東政策が破綻し始めました。アラブ諸国を抱き込み、王政諸国をイスラエルと国交回復させる「アブラハム合意」が行き詰まり、中東全域で反米・反イスラエル運動が爆発しています。だから、アラブ・イスラム諸国の民衆が、大量虐殺戦争の共謀・共犯者になった米国に矛先を向け「アメリカに死を!」のスローガンを掲げているのです。 ※米国によるイスラエル支援が中東の不満に火をつける。多数の国々の抗議行動が再び『アメリカに死を!』を叫ぶ(阮佳h 2023-10-18) それでは、なぜ米国は、そこまでして政治・軍事・経済の全面にわたりイスラエルを支持・援助するのでしょうか?それは、単に大統領選挙だけではありません。歴史的・階級的基礎、物質的・経済的基礎があるのです。米をはじめ西側諸国がそもそもなぜイスラエルを中東のど真ん中にくさびを打つように建国させたのかという問いにも通じるものです。結論から言えば、それは石油資源の略奪もあるのですが、もっと大きな目的があります。それは、イスラエルが、米と西側諸国が中東諸国を分断支配し、民族解放運動を叩き潰し、植民地主義支配を永続化させる最大の支柱だからです。これについては、別のシリーズで詳しく述べたいと思います。 2023年11月21日 |
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